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第8章 ヤーベ、王都ではっちゃける PARTⅠ

第109話 王都治安維持のための一手を打とう

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騎士団の訓練場は割れんばかりの歓声に包まれた。

件の英雄との模擬戦。

9名も騎士団の若手ホープがあしらわれ、10人目に迎え撃った団長のグラシア・スペルシオは見事に英雄の剣を弾き飛ばし、その模擬戦に勝利したのだ。

「さすがは我らが団長だ!」
「見事です!」
「惚れ直しましたよ、団長!」
「オレのケツはアンタのもんだ!」

・・・一部危険な発言もあったような気がしたが、団長の威厳と騎士団のメンツを保ったのだ。団長を称える騎士団の連中を見ると、団結力に一役買えた気がしてまんざらでもない。

「ヤーベ、大丈夫か?」

皆のところへ戻ればイリーナが声を掛けてくる。

「ああ、もちろん大丈夫だよ。騎士団長はさすがに強かったね」

「旦那様は魔法を使わなかったのですか? ガルアードを倒した時のようにすごい魔法・・・」

俺はダッシュでフィレオンティーナの口をふさぐ。
なぜに俺の事でこんなに負けず嫌い?

「いいから! 騎士団との模擬戦だから! ね、魔法危ないし、言わなくていいから」

ボソボソと話しながら喜ぶ騎士団に水を差さない様に訓練場の端による。

それにしても、さっきの【剣技】は気になる。
その前の連撃百裂斬は手数の多い技、と言った感じで、多少チュウニビョウの香ばしい香りがしないでもない技だった。多少魔力を纏わせている感じがある当たり、身体強化、それも速度重視の技のようだった。

だが、その後に放った【剣技:龍の顎】は身体強化とは違った形で魔力を纏っていた。

(もしかして・・・あれは【スキル】か?)

実際のところ、俺自身今まで魔獣との戦闘経験はそれなりにあるが、対人間は盗賊などとの戦闘が少しあるだけで腕の立つ人間との戦闘経験は少ない。もしかしたらレベルの高い人間は【スキル】という形で技をいろいろと持っているのかもしれない。

・・・尤もノーチートの俺にはスキルなんてひとっつもないけどねー!

オノレカミメガ!

ん?<亜空間圧縮収納>はスキルか?・・・いや、あれは俺の根性だ。ぐるぐるエネルギーの行く先に新しく開いた扉だ。うん。

それにしても、スキルについて学ばねばならない。
だが、あまり団長に無理を言うのも申し訳ない。
そう言えば、かなりのランクだった男がいたじゃないか。
ソレナリーニの町冒険者ギルド・ギルドマスターのゾリアだ。
元Aランク冒険者ならば、剣技のスキルもありそうだ。

(よし、やはり土産の一つも持っていって、代わりにスキルを使った模擬戦を頼むとするか)

カソの村近くに帰ったら、ゾリアの元を訪れて修行を依頼しよう。

訓練が再開されたところで、グラシア団長を呼んで情報交換をする。

「妹さんのクレリア隊長が追い落とされそうになってるのはどこまで掴んでる?」

「うむ、プレジャー公爵家三男のサンドリック・フォン・プレジャーが糸を引いている事まではわかっているのだが・・・」

「かなり執拗な対応をしているようですよ。対策として昼飯前にもお話しました配置図を見ながら暴漢事件の発生場所を確認して、連中との繋がりを早めに抑えないと、王都の治安を不安視する国民が出て来てしまいそうです」

「悔しいね。俺たちが王都の町に出張って行くわけにもいかなくてね」

「雇われの暴漢が出る場所が分かれば、騎士団の帰宅途中だったり、屋外トレーニングだったりとか、いろいろな理由でチンピラの捕縛が出来ますかね?」

「そうだね・・・、出来る限り協力しようか。ただ、全面的に出ると王都警備隊だけで対応できないと言う指摘を受けかねないから、たまたま・・・・ってことで片付けられる程度での協力になるけどね」

「では、出来る限り詳細にチンピラの発生場所を連絡します。ヒヨコが手紙を持ってきたら中身確認してください」

「ヒヨコが手紙を運んで来てくれるのかい?」

「そうです、俺の使役獣みたいなもんです。クレリア殿はなかなかに真面目な頑張り屋さんのようなので、応援してあげたいんですよ。サンドリックのような質の悪いヤツが隊長になったら王都の治安はお先真っ暗ですしね」

「応援してくれるのはありがたいけど、クレリアを嫁にするのは勘弁してもらえないかな? 君、ちょっと奥さん多すぎると思うしね」

ジト目を向けて来るグラシア団長。
男のジト目はノーセンキューですぜ、ダンナ。

「否定できませんけどね! クレリアさんを口説こうとか思ってませんから大丈夫ですよ!」

「うん、よろしく頼むよ」

グラシア団長の爽やかな笑顔にちょっと引きつりながらも協力を要請した。







「フェンベルク卿、出来た分だけでも来る前に鍛冶師に発注した「刺又さすまた」を受け取りに行きましょうよ」

王都を後にして馬車でコルーナ辺境伯邸に帰る途中、俺はフェンベルク卿に提案する。

「刺又・・・すごいウェポンだよ。ウチの衛兵たちにも常備させようと思っててね。でもヤーベ殿はものすごい数を発注していたね?」

「王都警備隊隊長のクレリア・スペルシオにもアイデアを伝えたんですけどね。多分予算の都合とか鍛冶師への圧力とかで手配がうまくいかないかなって思ってます。そのため、こちらで大量に作って明日にはある程度の数を引き渡してやりたくて。何といっても刃を鍛える必要もなく、鉄の棒を曲げてくっつけるだけで出来ますからね。出来上がりも早いんですよ」

「うん、それでいて相手を捕縛するのに特化した武器だしな。非殺傷武器なのもすごい便利だ」

「早速受け取りに行きましょう」

屋敷に帰る前に依頼した鍛冶師の店に寄ることにした。
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