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第8章 ヤーベ、王都ではっちゃける PARTⅠ
第102話 教会の襲撃者を撃退しよう
しおりを挟むさて、クレリアとエリンシアとの会話を終えて警備隊詰所から帰ろうとしたのだが、緊急の念話が入る。
『ボス、緊急事態です!』
ヒヨコ十将軍序列第三位クロムウェルからの緊急念話が入る。
『どうした?』
『南地区にありますシスターアンリの教会に暴漢が6名現れました。敵より威嚇を受けております。ハンマーなどの武器を持参して来ているため、こちらへの破壊行為を実行する可能性が高いです。破壊行為が始まりましたらこちらも実力行使に移ります』
『わかった。こちらもすぐ向かう。少なくとも1人は逃がすな』
『了解しました』
「どうしたんだ?」
クレリアが立ち上がったままぼーっとしている俺に話しかけてくる。
「クレリア、南地区の教会でシスターアンリを狙う連中が土地の地上げも狙って殴り込んで来たみたいだ。結構な捕り物になるね。手柄立てる?」
如何にも何でもないような感じで捕縛の推奨を伝えてみる。
「ええっ!? 大変じゃない! 南区の教会って、ちょっと距離があるわよ! 急いで出るわ!」
クレリアが立ち上がり出立しようとするが、それを俺が止める。
「クレリアは馬で行くのか?」
「そうよ、馬が1頭しかいないけれど」
申し訳なさそうに伝えてくるクレリア。
「じゃあ先に教会に向かってくれ。俺はエリンシアを連れて向かう」
「えっ!? 私もですか?」
「捕まえたチンピラの確認は2人がかりの方がいいでしょ?」
そう言ってウインクする俺。
「俺が連れて行ってやるよ。部下に捕縛して移送する準備をして教会に向かわせてくれ」
クレリアとエリンシアに伝えると、俺たちは詰め所を出た。
「では、先に行く!」
そう言って馬に飛び乗って掛けていくクレリア。
「では俺たちも行こうか、エリンシア」
「は、はいっ・・・、ところでどのように?」
「ローガ」
『ははっ!』
すぐに俺の前に飛んで来てくれて、伏せてくれる。
「も、もしかして、この巨大な狼牙に乗って行くのですか・・・?」
「そうだよ、急ぐから早く乗ってね」
といいながら、エリンシアを小脇に抱える。
「ひょえっ!?」
「ローガ、緊急事態発生のため急ぐぞ。建物の屋根を行け。最短だ」
『はっ!』
ローガは鋭く跳躍すると、建物の屋根に飛び乗った。
「さあ行け!」
『はっ!』
「ひええっ!」
俺はエリンシアを横抱きにして抑えている。
エリンシアが絶叫しているが気にしないことにしよう。
ローガは建物から建物へ屋根を伝って飛ぶように移動して行った。
「うわわわわ――――!!」
その日、空には女性の叫び声が木霊したと言う。
「なんですか、あなたたちは!」
シスターアンリの怒気をはらんだ声が響く。
「あーん、お前が教会の権利書を手放さねーからこーなるんじゃねえか」
「まったくだ、テメーのせいでこの教会を壊さなくちゃいけねーんだからよ」
「さっさと教会を手放してりゃこんなことにはならなかったのによぉ」
口々にチンピラたちが勝手な事を言う。
「よくもそんな酷い事を!」
シスターアンリの後ろから子供たちがやってくる。
「帰れ帰れ!」
「悪い奴らはやっつけてやる!」
囃し立てる子供たちの声にチンピラがキレだしてしまう。
「ざけてんじゃねーよ! やれ!」
「おうっ!」
ついにチンピラが大きなハンマーを振り上げて教会の門や壁を壊し始める。
「やめてください!」
シスターアンリの悲痛な叫び声もチンピラたちが破壊行為をやめる様子は無かった。
『対象の破壊行為を確認。これより実力行使による脅威排除に移行します』
ヒヨコ十将軍序列第三位クロムウェルは自分のボスであるヤーベに念話で報告した。
『ピヨ―――――!!(集合!)』
『ピヨ!(イチ!)』
『ピヨヨ!(ニ!)』
『ピヨヨヨ(サン!)』
『ピヨヨヨヨ(ヨン!)』
『ピヨピピピ!(5匹揃って!)』
『『『『ピヨピヨピー!!(ピヨレンジャー!!)』』』』
シスターアンリの前に5匹のヒヨコがずらりと並んで、羽を広げてポーズをとっている。
「え・・・ヒヨコちゃん?」
「なんだーこのヒヨコは踏みつぶせ!」
「ぶっ殺せ!」
「焼き鳥にしてやらぁ!」
『ピヨヨ!(ファイア!)』
『ピヨヨ!(ファイア!)』
『ピヨヨ!(ファイア!)』
『ピヨヨ!(ファイア!)』
『ピヨヨ!(ファイア!)』
小さな火がヒヨコから同時に発せられ中央に集まる。
『ピヨヨ!ピヨヨヨヨ!!(合体魔法!メガファイア!!)』
ゴウッ!!
集まった小さな火が集合し、巨大な火の玉になる。
「げえっ!」
「うそ!」
巨大火球はチンピラ6人を包み込み、炎上する。
「あちいっ!」
「ぐわっ!」
チンピラたちは炎に包まれて転げまわる。
「てめえら・・・ぶっ殺してやる!」
いち早く火を消したリーダーっぽい男が立ち上がって襲い掛かって来ようとした。
だが、その足が止まる。
なぜなら、教会の屋根から、ふわりと大きな狼が目の前に降りて来たのだから。
「何をぶっ殺すって・・・?」
大きな狼はもちろんローガである。
なぜかエリンシアをお姫様抱っこするように抱えながら俺は剣呑な雰囲気を出して行く。
俺はエリンシアをローガの上に残したまま、地面に降りる。
「なんなんだオメーはよ! いきなり空から降って来やがって!」
「空から降ってくるのは何でも盗む怪盗か、ヒロインを助けるヒーローと相場が決まっている」
俺は堂々と言い切る。俺の個人的主観だが。
「いや、ヤーベ殿、立場上怪盗は困るわけで・・・」
「ではヒロインを助けるヒーローの方で」
エリンシアの立場を考えてヒーローの方で行こう。
「ヤーベ様!」
「アンリちゃん無事か?」
「はいっ! 子供たちも無事です!」
「よかった。じゃあ後はこのゴミどもを片付けるだけでいいか」
「誰がゴミだこらぁ!」
チンピラたちが粋がるが、俺は殺気を含めて魔力を開放する。
「「「「「「うおっ!」」」」」」
「テメーらがオソノさんに寄って集って暴力を振るいやがったクソどもだな?」
「だったらどうした! 手前も同じ目にしてやんよ!」
チンピラ6人が同時に襲い掛かってくる。
「<電撃牢獄>!!」
「「「「「「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」」」」」」
風の精霊シルフィアに力を借りた電撃の上位魔法。
一瞬電撃が落ちるだけでなく、数秒間牢獄の鉄格子の様に電撃が相手を束縛する強力な呪文のため、6人が全員電撃の直撃を受けて、煙を噴いて倒れていく。
「ヤーベ殿! 無事か!」
馬で駆け付けたクレリアが見た光景は、プスプスと黒い煙を上げながら倒れている6人のチンピラであった。
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