上 下
109 / 206
第8章 ヤーベ、王都ではっちゃける PARTⅠ

第99話 王都での再会を祝して朝ごはんを食べよう

しおりを挟む

俺の右腕をロックしたままずんずんと進んで行くフィレオンティーナ。

「どこかで朝ごはんでも食べられるといいですわねぇ」

きょろきょろと周りを見回しながらフィレオンティーナ。

『ボス、序列第十位センチネルであります。僭越ながら、朝ごはんに丁度良い店がございます』

「おお、見事なりセンチネルよ! 早速案内を頼む!」

「どうしたのです? 旦那様」

「フィレオンティーナ。俺はまだ旦那様ではないよ」

「あら、わたくしを迎えて頂けるお気持ちがあるだけで感激ですわ」

俺の苦笑に満面の笑みで答えるフィレオンティーナ。
本気で嬉しそうだよ・・・、マイッタネ。

「ウチのヒヨコちゃんがおススメのお店を見つけて来たみたい。そこへ行ってみようか?」

「お任せ致しますわ!」

ウキウキと組んだ腕を放さず歩いて行くフィレオンティーナ。

「ヒヨコのオススメって・・・」

馬車をゆっくり進めながらパティが頭を捻っていた。

 

 

『ボス、ここです』

裏通りに入って少し。喫茶店のようなお店の前に到着した。

「喫茶<水晶の庭クリスタルガーデン>・・・いいじゃないか」

俺のカンがビンビンと伝えてきている。この店はウマイ!
俺の胃袋が早くメシをと急かしてくる。
こんな店は往々にして当たりなんだよな。

「しかしこんな朝早くからやってるんだね・・・」

そう言って扉を押し開ける。
 

チリンチリン。
 

扉についているベルが可愛く鳴った。

「いらっしゃませ! おはようございます!」

元気のよい声が聞こえてくる。
エプロンを付けた可愛い少女が出迎えてくれた。

「んっ?」

出迎えてくれたすごい美少女。だが、頭についているのは・・・でっかい耳?
キラキラと輝くようなシルバーブロンドの髪から、にょっきりと大きな耳がコンニチハ。

「あっ、珍しいですか? 私、狐人族なんです。だから狐の耳と尻尾があるんですよ?」

くるんとその場で回ると、スカートの下からもふもふした尻尾が見えていた。

「あら、とってもかわいいのですわね!」

フィレオンティーナは驚くより尻尾を見て可愛いと笑みを浮かべている。
王都に到着してから、亜人を全く見ていないわけじゃなかったが、こういう風に直接話すのは初めてかな。

「ステキなお嬢さんのお名前を聞いてもいいかな?」

「私、リューナって言います。よろしくお願いしますね!」

元気に挨拶してくるリューナ。可憐だ。

「こんなステキなお嬢さんのお店に来れたことを感謝しなくてはね。朝ごはんを軽く食べたいんだが、何かオススメはあるかな?」

「もちろんです! どうぞこちらの席へ。今メニューお持ちしますね!」

そう言ってテーブルに案内してくれる。

俺にフィレオンティーナ、<五つ星ファイブスター>の6人で大所帯だが、大きめのテーブルに案内してもらえたので全員が座ることが出来た。

「こちらメニューです。朝は3つのセットがありますよ! 飲み物も下のメニューから付けられますよ」

笑顔の銀髪狐っ娘さんが説明してくれる。

セットのメニューは、焼き立てパンとサラダと飲み物、スープ系の物とサラダと飲み物、卵料理とサラダと飲み物のようだ。セットとは別に追加として単品で焼き立てパンやスープ、卵料理も注文できる様だ。

みんなの希望を聞いて注文する。追加単品もたくさん注文する。

「再び会えた奇跡に乾杯だ。ここは俺の奢りだ。たくさん食べてくれ」

「おおっ! ヤーベ殿太っ腹だな」

「いいのか?」

「ヤーベさん、悪いですよ」

口々に遠慮の言葉が出るが、俺は手をすっとあげて制した。

「せっかく王都で再会できたんだ。パーッと行こうよ」

そんなわけで、たくさん料理を出してもらった。

 

 

「おいしー!」

「このパンすごく柔らかいな!」

「このスープも絶品だよ」

五つ星ファイブスター>のみんなが喜んで食べている。

フィレオンティーナも上品に卵料理をナイフとフォークで食べている。

「んんっ・・・、このオムレツ、火加減が絶妙ですわ!」

オムレツを絶賛するフィレオンティーナ。
その食事の所作を見ていると、イリーナやルシーナちゃんよりよっぽど貴族の令嬢っぽいんだけど。

「それで、ヤーベ様。奥方様は増やされるんですの?」

「ブフッ!」

フィレオンティーナの問いかけに食後の紅茶を吹いてしまう俺。

「いや・・・今の所増える予定はないけど」

「う~ん、そうでしょうか? 何か心に引っかかっているものがありますよね?」

とても鋭い。さすが占いでゴハンを食べて来ただけはある。

「まあ、今は王都での人助けに忙しいから。フィレオンティーナはどうするの?」

「もちろんヤーベ様のお傍にずっとおりますわ。お手伝いさせてくださいまし」

ものすごい満面の笑顔で申し出てくれるフィレオンティーナ。
ありがたい申し出ではあるが、宿泊をコルーナ辺境伯邸に依頼してもいいものかどうか。

「<五つ星ファイブスター>のみんなはどうするんだ?」

「俺たちはタルバーンの街に帰るよ。フィレオンティーナ様に依頼完了のサインを貰ったら、王都の冒険者ギルドで完了確認をしてもらってから戻るさ」

「そうか、気を付けてな。俺も王都での用が終わったら戻るから、その途中でタルバーンにも寄るけどな」

「戻るってヤーベ殿はどこに住んでいるんだ?」

「カソの村って辺境だよ。近くの町はソレナリーニと言ってね。コルーナ辺境伯の領地だよ」

「おいおい、ずいぶんと遠くから王都に来たんだな。また何で?」

リゲルの何気ない質問に俺は馬鹿正直に答える。

「いや、王様に呼ばれてさ」

「「「えええっ!?」」」

心底驚いたと言った表情の<五つ星ファイブスター>のメンバー。

「とんでもないとは思っていたが・・・」

「本当にとんでもない奴だったな」

「ヤーベ様は王様に・・・」

「パティ!? ちょっとパティ!? 現実に帰って来なさい!」

放心状態の連中をさておき、フィレオンティーナの顔を見る。

「フィレオンティーナ。本当に俺について来るのか? 俺はただ旅しているだけで何も展望が無い男だぞ?」

 
その覚悟を問う。
 

「ヤーベ様は何もお気になさらずに。わたくしが貴方のそばにずっといるだけの事ですわ。すでに自宅は売り払って来ましたので、戻る場所もありませんし」
 

覚悟ハンパねぇ!!
 

「・・・そうか。まあ、好きにしてみるといい。きっとすぐに俺のことなど飽きてしまうと思うしな。それに、王都滞在中はかなり忙しいぞ。あまり時間を作ってやれないと思うし」

いろいろ言い訳じみたことも言ってみる。

「お気になさらずに。わたくしがただ旦那様について行くだけのことですわ」

輝くような笑顔で、何の迷いもなくそう宣言される。


ヤバイ・・・ちょっと惚れそう。


ふとイリーナやルシーナちゃん、なぜかカッシーナの顔まで浮かんで来たので、俺は両手でほっぺをパンパンして気合を入れなおした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ちょっとエッチな執事の体調管理

mm
ファンタジー
私は小川優。大学生になり上京して来て1ヶ月。今はバイトをしながら一人暮らしをしている。 住んでいるのはそこらへんのマンション。 変わりばえない生活に飽き飽きしている今日この頃である。 「はぁ…疲れた」 連勤のバイトを終え、独り言を呟きながらいつものようにマンションへ向かった。 (エレベーターのあるマンションに引っ越したい) そう思いながらやっとの思いで階段を上りきり、自分の部屋の方へ目を向けると、そこには見知らぬ男がいた。 「優様、おかえりなさいませ。本日付けで雇われた、優様の執事でございます。」 「はい?どちら様で…?」 「私、優様の執事の佐川と申します。この度はお嬢様体験プランご当選おめでとうございます」 (あぁ…!) 今の今まで忘れていたが、2ヶ月ほど前に「お嬢様体験プラン」というのに応募していた。それは無料で自分だけの執事がつき、身の回りの世話をしてくれるという画期的なプランだった。執事を雇用する会社はまだ新米の執事に実際にお嬢様をつけ、3ヶ月無料でご奉仕しながら執事業を学ばせるのが目的のようだった。 「え、私当たったの?この私が?」 「さようでございます。本日から3ヶ月間よろしくお願い致します。」 尿・便表現あり アダルトな表現あり

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界の住人が皆チート過ぎてチートがチートになってない件について

月末よしみん
ファンタジー
異世界転生してチートスキルをゲットてチート無双にハーレムいちゃいちゃの冒険がはじまる! ……と思ったらそこはすべての人間・魔物がチートなチート飽和異世界だった。 チートスキル【無限転生】で死にまくりながら女神様に新たなチートスキルをどんどんさずかり、チートな奴らをぶっとばせ ! ……る気が全然しない、主人公どん引きな異世界冒険譚( ̄O ̄;) 「やっぱりチートってよくないよね?」

元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。

明石 清志郎
ファンタジー
昔とある世界で勇者として召喚され、神に近い存在になった男ジン。 新人研修の一環として同胞の先輩から、適当に世界を一つ選んでどんな方法でもいいから救えと言われ、自分の昔行った異世界とは別の世界を選び、勇者四人の選定も行った。 自分もそこで勇者として潜入し、能力を隠しつつ、勇者達にアドバイスなんかを行い後方支援を行い、勇者を育てながら魔王討伐の旅にでていた。 だがある日の事だ。 「お前うるさいし、全然使えないからクビで」 「前に出ないくせに、いちいちうぜぇ」 等と言われ、ショックと同時にムカつきを覚えた。 俺は何をミスった……上手くいってる思ったのは勘違いだったのか…… そんな想いを抱き決別を決意。 だったらこいつらは捨ててるわ。 旅に出て仲間を見つけることを決意。 魔王討伐?一瞬でできるわ。 欲しかった仲間との真の絆を掴む為にまだよく知らない異世界を旅することに。 勇者?そんな奴知らんな。 美女を仲間にして異世界を旅する話です。気が向いたら魔王も倒すし、勇者も報復します。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...