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第8章 ヤーベ、王都ではっちゃける PARTⅠ
第99話 王都での再会を祝して朝ごはんを食べよう
しおりを挟む俺の右腕をロックしたままずんずんと進んで行くフィレオンティーナ。
「どこかで朝ごはんでも食べられるといいですわねぇ」
きょろきょろと周りを見回しながらフィレオンティーナ。
『ボス、序列第十位センチネルであります。僭越ながら、朝ごはんに丁度良い店がございます』
「おお、見事なりセンチネルよ! 早速案内を頼む!」
「どうしたのです? 旦那様」
「フィレオンティーナ。俺はまだ旦那様ではないよ」
「あら、わたくしを迎えて頂けるお気持ちがあるだけで感激ですわ」
俺の苦笑に満面の笑みで答えるフィレオンティーナ。
本気で嬉しそうだよ・・・、マイッタネ。
「ウチのヒヨコちゃんがおススメのお店を見つけて来たみたい。そこへ行ってみようか?」
「お任せ致しますわ!」
ウキウキと組んだ腕を放さず歩いて行くフィレオンティーナ。
「ヒヨコのオススメって・・・」
馬車をゆっくり進めながらパティが頭を捻っていた。
『ボス、ここです』
裏通りに入って少し。喫茶店のようなお店の前に到着した。
「喫茶<水晶の庭>・・・いいじゃないか」
俺のカンがビンビンと伝えてきている。この店はウマイ!
俺の胃袋が早くメシをと急かしてくる。
こんな店は往々にして当たりなんだよな。
「しかしこんな朝早くからやってるんだね・・・」
そう言って扉を押し開ける。
チリンチリン。
扉についているベルが可愛く鳴った。
「いらっしゃませ! おはようございます!」
元気のよい声が聞こえてくる。
エプロンを付けた可愛い少女が出迎えてくれた。
「んっ?」
出迎えてくれたすごい美少女。だが、頭についているのは・・・でっかい耳?
キラキラと輝くようなシルバーブロンドの髪から、にょっきりと大きな耳がコンニチハ。
「あっ、珍しいですか? 私、狐人族なんです。だから狐の耳と尻尾があるんですよ?」
くるんとその場で回ると、スカートの下からもふもふした尻尾が見えていた。
「あら、とってもかわいいのですわね!」
フィレオンティーナは驚くより尻尾を見て可愛いと笑みを浮かべている。
王都に到着してから、亜人を全く見ていないわけじゃなかったが、こういう風に直接話すのは初めてかな。
「ステキなお嬢さんのお名前を聞いてもいいかな?」
「私、リューナって言います。よろしくお願いしますね!」
元気に挨拶してくるリューナ。可憐だ。
「こんなステキなお嬢さんのお店に来れたことを感謝しなくてはね。朝ごはんを軽く食べたいんだが、何かオススメはあるかな?」
「もちろんです! どうぞこちらの席へ。今メニューお持ちしますね!」
そう言ってテーブルに案内してくれる。
俺にフィレオンティーナ、<五つ星>の6人で大所帯だが、大きめのテーブルに案内してもらえたので全員が座ることが出来た。
「こちらメニューです。朝は3つのセットがありますよ! 飲み物も下のメニューから付けられますよ」
笑顔の銀髪狐っ娘さんが説明してくれる。
セットのメニューは、焼き立てパンとサラダと飲み物、スープ系の物とサラダと飲み物、卵料理とサラダと飲み物のようだ。セットとは別に追加として単品で焼き立てパンやスープ、卵料理も注文できる様だ。
みんなの希望を聞いて注文する。追加単品もたくさん注文する。
「再び会えた奇跡に乾杯だ。ここは俺の奢りだ。たくさん食べてくれ」
「おおっ! ヤーベ殿太っ腹だな」
「いいのか?」
「ヤーベさん、悪いですよ」
口々に遠慮の言葉が出るが、俺は手をすっとあげて制した。
「せっかく王都で再会できたんだ。パーッと行こうよ」
そんなわけで、たくさん料理を出してもらった。
「おいしー!」
「このパンすごく柔らかいな!」
「このスープも絶品だよ」
<五つ星>のみんなが喜んで食べている。
フィレオンティーナも上品に卵料理をナイフとフォークで食べている。
「んんっ・・・、このオムレツ、火加減が絶妙ですわ!」
オムレツを絶賛するフィレオンティーナ。
その食事の所作を見ていると、イリーナやルシーナちゃんよりよっぽど貴族の令嬢っぽいんだけど。
「それで、ヤーベ様。奥方様は増やされるんですの?」
「ブフッ!」
フィレオンティーナの問いかけに食後の紅茶を吹いてしまう俺。
「いや・・・今の所増える予定はないけど」
「う~ん、そうでしょうか? 何か心に引っかかっているものがありますよね?」
とても鋭い。さすが占いでゴハンを食べて来ただけはある。
「まあ、今は王都での人助けに忙しいから。フィレオンティーナはどうするの?」
「もちろんヤーベ様のお傍にずっとおりますわ。お手伝いさせてくださいまし」
ものすごい満面の笑顔で申し出てくれるフィレオンティーナ。
ありがたい申し出ではあるが、宿泊をコルーナ辺境伯邸に依頼してもいいものかどうか。
「<五つ星>のみんなはどうするんだ?」
「俺たちはタルバーンの街に帰るよ。フィレオンティーナ様に依頼完了のサインを貰ったら、王都の冒険者ギルドで完了確認をしてもらってから戻るさ」
「そうか、気を付けてな。俺も王都での用が終わったら戻るから、その途中でタルバーンにも寄るけどな」
「戻るってヤーベ殿はどこに住んでいるんだ?」
「カソの村って辺境だよ。近くの町はソレナリーニと言ってね。コルーナ辺境伯の領地だよ」
「おいおい、ずいぶんと遠くから王都に来たんだな。また何で?」
リゲルの何気ない質問に俺は馬鹿正直に答える。
「いや、王様に呼ばれてさ」
「「「えええっ!?」」」
心底驚いたと言った表情の<五つ星>のメンバー。
「とんでもないとは思っていたが・・・」
「本当にとんでもない奴だったな」
「ヤーベ様は王様に・・・」
「パティ!? ちょっとパティ!? 現実に帰って来なさい!」
放心状態の連中をさておき、フィレオンティーナの顔を見る。
「フィレオンティーナ。本当に俺について来るのか? 俺はただ旅しているだけで何も展望が無い男だぞ?」
その覚悟を問う。
「ヤーベ様は何もお気になさらずに。わたくしが貴方のそばにずっといるだけの事ですわ。すでに自宅は売り払って来ましたので、戻る場所もありませんし」
覚悟ハンパねぇ!!
「・・・そうか。まあ、好きにしてみるといい。きっとすぐに俺のことなど飽きてしまうと思うしな。それに、王都滞在中はかなり忙しいぞ。あまり時間を作ってやれないと思うし」
いろいろ言い訳じみたことも言ってみる。
「お気になさらずに。わたくしがただ旦那様について行くだけのことですわ」
輝くような笑顔で、何の迷いもなくそう宣言される。
ヤバイ・・・ちょっと惚れそう。
ふとイリーナやルシーナちゃん、なぜかカッシーナの顔まで浮かんで来たので、俺は両手でほっぺをパンパンして気合を入れなおした。
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