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第8章 ヤーベ、王都ではっちゃける PARTⅠ

第88話 リーナを完全復活させてあげよう

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「旦那様、お帰りなさいませ。長旅お疲れ様でございました」

「うむ、夕飯と湯あみの用意を頼む。予定より2名程増えているから、食事の調整を頼む」

「畏まりました」

ザ・執事!といった感じの人がフェンベルク卿を迎え入れる。
俺たちはフローラさんやルシーナちゃんの後ろからコルーナ辺境伯家の王都別宅へと案内される。

「別宅とは思えない豪華さだな」

「そりゃまあ、王都だしな。辺境伯家として恥ずかしくないだけの物を用意しないとな。本当に貴族とは面倒なものだよ」

フェンベルク卿は深い溜息を吐く。

「はは、まあ今は長旅の疲れをゆっくり癒して頂ければと思います。夕食の前に湯あみの用意を致します。まずはお部屋へご案内しますので、荷解きなどご準備ください」

ザ、執事さんが丁寧に説明してくれる。

「ご丁寧に痛み入ります」

「おいおい、固いなヤーベ殿。ヤーベ殿は我がコルーナ辺境伯家の賓客なのだ。もっと気楽にしてくれ。ゆっくりしてもらわねば困るぞ?」

そう言って豪快に笑うフェンベルク卿。

「おお、こちらがヤーベ様なのですね、お噂はかねがね。それでは早速お部屋にご案内しますね・・・、増えたのはそちらの少女と騎士様ですか? 部屋割りはどのようにいたしましょうか?」

「リ、リーナはご主人様のお世話がありますので、ご主人様のお部屋の隅っこをお借りできればいいでしゅ」

「あー、赤い鎧を着ているゲルドンは一人部屋でお願いできますか? リーナは俺と一緒にいてもいいけど、寝る時はイリーナとサリーナと一緒に寝るんだぞ」

「ふえっ!? 私は床でもいいので、お傍に置いてくだしゃい!」

なんだか必死になってアピールしてくるリーナ。

だからイリーナよ、そんな目に涙を一杯溜めて、口に咥えたハンカチを引っ張ってアピールしてもダメだから。だいたいお前、マイホームで寝た時は俺のベッドに潜り込んで来たくせに。

「まあ、その話は後にして、とりあえず部屋で荷ほどきして、湯あみをさせてもらおう。もちろんコルーナ辺境伯家の皆さんの後でだが」

「ああ、お気になさらず。お客様専用の湯床がありますので、ご準備出来次第すぐご案内しますよ」

「おお、さすがコルーナ辺境伯、お客専用のお風呂があるとは」

「恐縮です」

「それでは部屋に行くとしますか」

俺たちは客間に案内頂いて一息入れることにした。





「さて・・・」

イリーナとルシーナは割り振られた部屋で荷解きを行っている。
ゲルドンは一人部屋だ。
そして俺の部屋にはリーナがついて来ていた。

「ご主人様、何かお手伝いすることはありましぇんか?」

早速奴隷としてお仕事をしようとやる気に燃えているようだ。
あまり気張らなくてもいいのに。
でも、まあ最初は無理だろうな。自分の怪我の状態からすると、何かあればすぐ捨てられてしまうと思い込んでいるだろうしな。

「先に少し試したいことがあるんだ。このベッドに仰向けに寝てくれるか? 悪いけど、着ている服を脱いでね」

ちょっと背徳感があるが、心を無にしてそう伝える。

「ふええっ!? いきなりっ!? わかりました・・・や、優しくしてくだしゃい・・・」

顔を真っ赤にして服を脱ぎ、ベッドの上に仰向けになるリーナ。右手で胸を隠しているが、左手はなんとか添えられているといった感じだ。これまでのリーナの動きを見ていても、怪我をしている左手は肩より上には上がっていない。

「さてさて、もし痛かったら言ってくれ。理論上は痛くなくイケるはずなんだが」

「ふええ~、だ、大丈夫でしゅ! ご主人様と一つになるためにはどんな痛みも耐えてみせましゅ!」

「じゃ、イクよ?」

「ははは、はいっ!」

俺は触手を二本出して行く。

「ごごご、ご主人しゃま!? そ、それは一体・・・!?」

「まあまあ、俺に任せておいて」

リーナの大きく傷になっている左の顔に触手を当てていく。
城塞都市フェルベーンで血液をスライム透析して人助けをした時に分かった事だが、スライム細胞を相手に同化させていき、細胞内側から同化を進めていくと対象者に痛みが伝わらないのだ。痛みも感覚の一つ、電気信号に過ぎない。ならば、発生させなければよいのだ。後はぐるぐるエネルギーと万能スライム細胞への指示によるコントロールで、うまくいくはず。

大きく損傷した左顔にスライム触手を同化させていく。
傷として残った部分、変質した部分を同化させ、リーナの細胞情報から元の組織体の情報を取る。得られたデータを元にスライム細胞を変質させていく。

そして、えぐれて失われた部分をスライム細胞で補填するとともに、傷で変質した細胞も同化吸収した上で正しい情報を元に組織を作り上げる。

すると、あら不思議。傷が綺麗に消えて、元通りになりました。
損傷して失われた頬肉や眼球、耳の部分も再生することができた。

「ふええっ!? 左顔がぽかぽかしたと思ったら・・・ご主人しゃまの顔がはっきり見えましゅ! 左目が無かった時にはちょっとしか見えなかったのに」

左目が失われて視野が狭くなり、右目に負担がかかっていたのだろうか。
左目が戻り、両目で物を捕らえることが出来る様になったため、よく見える様になったのだろう。

次に左肩にも触手を伸ばし、細胞を同化させていく。
こちらもえぐられた筋肉の補填にスライム細胞を注入する。

胴体や下半身には傷がなさそうだから、これで治療は完了かな?

改めて傷が治ったリーナを見る・・・
やべぇ! リーナめっちゃ可愛い!
なんだか目覚めちゃイケナイ性癖に目覚めそう!

「ふええっ!? ふええっ!? ふええっ!?」

両手で顔をペタペタと触って自分の左顔に傷が無いのを確認して、なぜか左手が思い通りに動いている事に驚愕して。

「ふぇぇぇぇぇん! ごじゅじんざばー!!」

大号泣した。全力で。

「お、おいおい」

ベッドから跳ね起き、俺に全力で抱きついて号泣するリーナ。

「どうしたヤーベ、何があった・・・んんっ!?」

イリーナが部屋の扉を開けて飛び込んでくる。サリーナも一緒にいるようだ。
そして俺は、大号泣しているリーナに抱きつかれている。
・・・リーナはそう言えば、全裸でしたね。

「キィィー!」

目に涙を一杯溜めて、口に咥えたハンカチを引っ張って奇声を上げるイリーナ。
この女狐!とか言い出したらどうしようか。

「ヤーベ様、一体どうなされたのですか・・・」

この騒ぎにルシーナちゃんも来てしまったようだ。
そして、メデューサの視線を受けて石化したように固まった。

「ヤ、ヤ、ヤーベ様がロリ〇ンに!!」

「誰がじゃ!」

ルシーナちゃんの酷い濡れ衣を全力否定する。

「えっ?」

キーって叫んでたイリーナが驚いた声を出す。

「ええっ!?」

サリーナも驚愕の声を上げる。

ルシーナちゃんも気が付いた。

「「「えええ―――――!!!」」」

三人ともに衝撃が走り、絶叫した。

「「「リーナちゃんの傷が治ってる―――――!!!」」」

ああ、やっとそこで驚いてくれるのね。
その事への驚きでリーナがすっぽんぽんな状態なのをスルーしてくれませんかね~
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