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第7章 ヤーベ、王都に向かって出立する!
第65話 タルバリ伯爵に挨拶しよう
しおりを挟む「おかえり、ヤーベ。無事で何よりだよ」
イリーナがわざわざ馬車から降りて俺を出迎えてくれる。
馬車の後ろからローガと四天王も歩いてくる。
『ボス、道中に出る雑魚の露払いなど我々にお任せください』
ローガがそう言えば、
『そうですとも』
『ボスがわざわざ出て行く必要などありませんぞ』
『我々にお任せ下さい!』
『でがんしょ』
狼牙族四天王もそれぞれ俺に任せろとアピールしてくる。
全くもって頼もしい奴らだ。
というか、後ろに行軍してたんだよね、こいつら。
もしかしたら、「お前ら行けっ!」の一言で終わったかもしれん。
「さあ、ヤーベ出発しよう」
「あいよ。ローガ達もさあ行くぞ!」
「「「「「わふっ!」」」」」
「それにしても、ヤーベ殿は強いのだな。まさかキラーアントの群れを寄せ付けることなく殲滅するとは、とんでもない実力だな」
「いやいや、それほどでも」
「ヤーベ様!とっても素敵でした!」
「あらあら、ルシーナの旦那様はとっても強いのね~」
「ぬうっ!その話はまだ認めておらんぞ!」
「貴方、いい加減になさいませ」
コルーナ辺境伯家の会話にツッコミを入れるのも何なので、イリーナとサリーナを見る。
イリーナは俺の手をギュッと握ったままだし、サリーナは馬車の窓から外を見ている。
とにもかくにも、タルバーンへ出発してくれ。早く休みたい。
そう願ったせいか、その後は無事にタルバーンへ到着した。
さすが貴族の馬車だ。町の門を潜る際は貴族専用の大きな扉をフェンベルク卿の挨拶だけで通った。何やら短剣をチラ見させていたので、アレがもしかしたら貴族の証明か、コルーナ辺境伯家の紋章なのかもしれない。
「ヤーベ殿、ホテルは予約してあるが、宿泊前にここの領主であるタルバリ伯爵の屋敷へ挨拶に行く予定だ。今日の夕食に晩餐会を予定してもらっているのだ」
「あ、そうなんだ」
「タルバリ伯爵は元冒険者でな、だいぶ厳ついガタイをしているが、根は良い奴だ。ソレナリーニの町冒険者ギルドのギルドマスターであるゾリアと同じパーティを組んで冒険をしていたと聞いたことがある」
「そんな人が伯爵なんだな」
俺はその情報をヒヨコからすでに得ているが、そうなんだ~感を出しておいた。
「ヤーベ殿とは気が合うと思うぞ」
ローブを着込んだ素顔が見えない怪しい男と気が合う人って、伯爵も怪しい人かな?
タルバーンの町は、さすがに城塞都市フェルベーンほどの規模は無かった。
だが、製鉄に特化した業種も見られ、熱い雰囲気の感じる街並みだ。
後で散策したい。
よく考えたら、俺は武器全くもってない。
やっぱカッコイイ武器欲しいよな~。
ドラゴン殺せる剣とか(笑)
ただ、俺自身戦闘スキルが全くない。地球時代でも全く格闘技経験がない。高校の授業で剣道と柔道を半年くらいやったくらいだ。
だから、剣でも槍でも買ったはいいが、全く使えない可能性大だ。
見栄え以外の何物でもない。
でもな~、異世界来て冒険者ギルドで登録して、武器買ってませんって、有りなのか?
尤も、鎧とか防具はもっとダメだけどね!何せスライムですから!
煉瓦畳の通りを馬車で進んで行く。
煉瓦造りの建物が結構目に付くな。オシャレ感が高い。
「この町は製鉄技術が進んでいてな。アクセサリーなども多く取り扱っているぞ」
フェンベルク卿の情報はありがたいが、アクセサリーオススメされても、ルシーナちゃんにプレゼントしたら絶対後で文句言ってきそうだし。
「アクセサリーですって! ぜひヤーベ様と一緒に見に行ってみたいです!」
両手を胸の前で組んで目をキラキラさせるルシーナちゃん。
何故にそんなフラグをぶっ立ててくださいますかね?
ぎゅぎゅぎゅ!
「ほわわっ!」
イリーナさん! オレの手のカタチが変わっています! 事案発生してますよ!?
「ヤーベ・・・私も行く」
ジトっと横目で俺を見るイリーナ。
誰も連れて行かないなんて言ってないじゃないですか(汗)
「あ、ヤーベさん。ボクも街に行ってみたいな! 錬金術師としてアクセサリーはぜひ見ておきたいしね!」
元気なボクっ娘サリーナが手を上げてアピールする。
完全にみんなで出かけるフラグがぶっ立ちました。
俺は馬車の窓から見える煉瓦造りの建物を見ながら遠い目をした。
「おお!コルーナ辺境伯。よくお越しになられた、だいぶご無沙汰しておりますな」
「タルバリ伯爵もご健勝で何より」
ガッチリと握手をする2人。
ガイルナイト・フォン・タルバリ伯爵。かなり筋骨隆々。ハゲ。
これでモヒカンなら間違いなく世紀末でヒャッハーする人だ。
後、とても暑苦しい。
ただ、冒険者時代の武勇伝はなかなかの物らしい。
ソレナリーニの町ギルドマスターのゾリアとパーティを組んで、お互いAランクまで上り詰めた実績の持ち主だということだ。当人の戦闘力も推して知るべし、だな。
「ちょうどウマイ鹿が取れたんですよ。今日の晩餐に用意しておりますよ」
「それは楽しみですな」
タルバリ伯爵コルーナ辺境伯が気の置けない会話をしていると、奥の部屋から女性が出て来た。
「コルーナ辺境伯様、ご家族の皆様、ご来客の皆様、ようこそタルバリ家へお越しくださいました」
そう言って優雅にお辞儀をする女性。かなりの美女だ。誰だろう? 顔が似てないから娘じゃないだろう。養女?
「妻のシスティーナだ」
「つ、妻!?」
「ヤーベ殿?」
俺が妻という紹介に驚き過ぎて声に出てしまったので、その場の全員が俺を見る。
「いや、こんな筋肉ダルマにこんな美人が奥さんだなんて!?」
「ヤ、ヤ、ヤ、ヤーベ!それはあまりにも失礼だぞ!?」
「ヤーベ様、表現というものがあります・・・」
「・・・」
イリーナ、ルシーナに怒られた。ルシーナも表現がと言っている事はそう思ってるんだろう。サリーナに至っては目が点になっている。
ちなみにフェンベルク卿は爆笑している。奥様は後ろで苦笑だ。
「はっはっは!そうだろうそうだろう。ストレートにそう言うやつは少ないけどな。誰でもそう思っているだろうよ。俺には過ぎた女房だよ」
「まあ、貴方ったら。私は貴方の妻になれて本当に良かったと思っているのよ?」
急にラブラブ感が辺りを包む。この感覚羨ましい。
「こちらも紹介しておこう。妻と娘、それに我が家に賓客として招いているヤーベ殿だ。その連れのイリーナ嬢とサリーナ嬢だ」
「ほうっ! あの王都から訪問要請が出ている・・・?」
「そうだ、一応私も一緒に行く予定にしているがね」
「なるほど」
そう言って俺に鋭い目を向けてくるタルバリ伯爵。俺は人畜無害ですぞ。
その思いが通じたのかはわからないが、にっこりとした表情になると、
「さあ、お腹も空いたろう、食堂へ案内しよう」
そう言って歩き出すタルバリ伯爵の後ろをみんなでついて行った。
「いや、確かにうまい鹿だったな。見事なものだ」
フェンベルク卿がナプキンで口を拭きながら食事を終える。
タルバリ伯爵が自慢するだけあって見事な鹿料理だった。
食後のお茶をメイドさんたちが注いで回る。
ひと心地ついた時だった。
「たたた、大変です旦那様! フィレオンティーナ様が攫われました!」
何か伝言を聞いたのか、執事さんが飛び込んできた。
「な、何だと!?」
「何ですって!?」
タルバリ伯爵と奥さんのシスティーナさんがガタリと椅子から立ち上がる。
フィレオンティーナ様って・・・誰?
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