上 下
51 / 206
第6章 ヤーベ、辺境伯のピンチを華麗に救う!

第45話 これからの事を検討しよう

しおりを挟む


ソレナリーニの町の<迷宮氾濫スタンピード>を制圧した俺様達は代官であるナイセーの心遣いで代官邸に招待された。一日ゆっくりした後、朝起きて泉の畔にのんびり帰ろうか・・・そう考えていたのだが。

「ヤーベ、この後どうするのだ?」

イリーナが問いかけて来た。

どうも、ナイセーと奴隷制度の話をしてから、今まで以上に俺に対する距離が近い。

そして、今まで「ヤーベ殿」だったのが、「ヤーベ」と呼び捨てになった。

イリーナはいつも自分の事を呼び捨てにしろって言ってたけど、俺を呼び捨てにすることは無かったんだが。

・・・まあ、もっと俺のそばにいることをアピールしないと、俺が奴隷、しかも女性の奴隷などを購入した際にそちらに意識が行ってイリーナの事を忘れてしまうのではないか・・・と心配でもしているのだろうか。

ナイセーの話の中で、この国が一夫多妻制だと確認している。尤も、多夫一妻でも問題ないらしい。ようは、生活できるだけの財力があり、双方が了解すれば結婚という形を取る事は問題ないとのことだ。

何らかの理由で俺が奴隷の女性を買ったとしても、ぜひとも仲良くしてもらいたい・・・などというのは、俺からすると傲慢な考え方だろうな。

ラノベのお約束である「ハーレム」だが、少なくとも俺にはチート能力がないので、「チートで大活躍してハーレム」という所謂「チーレム」コースはありえない。

となると、俺がハーレムを形成しようとするならば、自力で奴隷を購入して増やす「通常ハーレム」コースを目指すしかない。

・・・別に目指す必要もないんだが。



奴隷制度はひとまず置いておくとして、「ハーレム」というものについて真面目に考えてみる。男の俺からすれば多くの美女を侍らせてウハウハできるというメリット山盛りなイメージだが、もちろんデメリットもある。経済的な事もそうだし、増えれば増えるほど相手とのコミュニケーションに気を使う事になるだろう。一人だけを相手にしている場合と違い、何気ない会話から、プレゼントとか、
ふれあいも夜の生活もある程度平等にこなさないと女性側からの不満が出ることは想像に難くない。

では女性側の視点からすればどうか?

メリットは・・・どうだろう? よほど相手の男が好きで、複数でも問題ないと決断すれば相手と結婚できる、生活を共にできる事になる。

デメリットは当然相手を独り占めできない事だろう。



ハーレムは男の夢、なんてよく聞く言葉だし、ラノベでは幸せなハーレム生活の物語が多い。だが、現実的に考えた時、本当にそうだろうか?

複数の女性を相手にするとき、全員を平等に相手にしないと、誰かが悲しんでしまうだろう。

夜の生活など、どれほど体力があればよいのか?

一人二時間として、五人も居れば十時間じゃないか。百人ハーレムとか言ってるヤツはアホじゃないのか。

尤も俺にはへそまで反り返ったピ・・・あ、もういいですか。



ただ、この異世界はハーレムというか、一夫多妻が必要な世界でもあると思われる。

非常に危険の多い世界だ。冒険者という仕事とか、魔物の存在とか、とにかく命の危険が多い。

そして、その危険を請け負うのは多くが男ということになるだろう。冒険者にしても、騎士にしても女性はもちろんいるだろう。だがその絶対数はそれほど多くないはずだ。そしてそれらの職業は死亡率もそれなりに高いだろう・・・。つまりこの世界は女性の方が多く生活している可能性が高い。となると、財力のある男性、甲斐性のある男が複数の女性と生活することにより、女性一人で生活しなければならない状況も少しは改善できるのかもしれない。



・・・やたら難しい事を考えてみたが、ハーレム自体悪い事じゃないような気もするが、俺には荷が重いってことだな、うん。

だがら、イリーナよ、安心していいと思うぞ。俺が女奴隷を買う事など、きっと・・・まず・・・どうだろう? チョットは覚悟しておいてもらった方がいいかな?

まあ、結論をすぐ出す必要はないな、うん。



ぎゅぎゅぎゅ!



ボーッと考えていたせいか、イリーナに返事をしなかった俺は右手をイリーナに握りつぶされている。痛覚無効のスライムボディだから大事ないけど、普通の人間の手だったら結構大変なことになっているレベルで握ってますよ?

「イリーナよ、形が変わってしまうからあまり強く握らないでくれると嬉しいのだが」

「・・・ヤーベ、これからどうする?」

掴んだ右手を話さないままイリーナが再度聞いてくる。

「これからとは?」

「ずっとこの町で住むのか? 泉の畔に戻るのか? それとも王都にでも出かけるのか?」

これからの行動についてどうするのか、ということね。

「そうだな、俺たちの今後だが、こんなことを考えている」

そう言って今後の方針を説明する。


①泉の畔に帰って家を建てる
②カソの村へ行って祝勝会
③ソレナリーニの町に移住
④城塞都市フェルベーンへ旅行
⑤いきなり王都を目指す


「ヤーベもいろいろ考えていたのだな・・・」

イリーナさん、なんか俺の事何にも考えてないイケイケドンドンなヤツだと思ってません? 一応これでも思慮深い男だと思ってますが。

「ちなみにずらっと出してみたが、カソの村はタイミング的にも無理があるだろう。行けば盛り上がってくれる気もするが、無理をさせるのも悪い。いきなり王都も無い。行く理由もない」

そう言ってイリーナから目を逸らして空中に視線を泳がせる。
できれば揉め事を起こさずスローライフを送りたいものだ。

・・・そういう事を言っている主人公がスローライフを送れた試しがないのがラノベのお約束だが。ま、俺はスライムだし、町でのんびり暮らすってのは今のところ難しいしな。

「それではこの町に移住するのか?」

イリーナの問いに首を振る。首がどこと言われると困るが。

「ナイセーやゾリアなら許可をくれると思うけどな。まだ俺が町でのんびり暮らすのは難しいよ」

「そうなのか・・・」

少しがっかりした表情で俯くイリーナ。イリーナは町でゆっくり暮らしたいのだろうか。
代官の家では久々に風呂に入っただろうからな。
俺もこの世界に来て初めて風呂に入った。

・・・めちゃくちゃ気持ちよかった。

なんか「お背中御流しいたします」的なメイドが風呂に来ようとしたが、頑として追い返した。エロに興味がないわけではないが、この姿を見られたらメイドさんの悲鳴だけじゃすまない。

「そんなわけで、泉の畔に戻って家でも建てるか、城塞都市フェルベーンへ魔物狩りなどで金を稼ぎながら出かけるか、どうしようか迷っているところなんだ」

「泉の畔に家を建てるのか・・・?」

イリーナが小首を傾げて聞いてくる。

「いい加減、イリーナがテント生活では心配だからな」

「・・・ヤーベ!」

急にイリーナが抱きついて来た。そんなに感動しなくても。

「ただ、どうやって家を建てればいいかは見通しが立っていないが」

俺の言葉に絶望の表情を浮かべるイリーナ。
だって仕方ないじゃないか。俺は家なんて建てられないし。
頼むならカソの村の村長に大工の派遣を依頼するくらいしか思いつかん。
費用なら今回の報酬で何とかなりそうだけど。

ただ、この町の情報も全部精査が終わったわけじゃない。
何か忘れてるような気もするが。

「ぴよぴよー!(ボス!大変です!)」

「どうした?」

「ピヨピピピピー!(北のスラム街で不穏な動きがありましたので監視しておりましたが、この町でテロ行為を行う計画を練っている連中を見つけました!)」

「ええっ!」

俺、全然スローライフ出来ないじゃん!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

処理中です...