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第6章 ヤーベ、辺境伯のピンチを華麗に救う!
第45話 これからの事を検討しよう
しおりを挟むソレナリーニの町の<迷宮氾濫>を制圧した俺様達は代官であるナイセーの心遣いで代官邸に招待された。一日ゆっくりした後、朝起きて泉の畔にのんびり帰ろうか・・・そう考えていたのだが。
「ヤーベ、この後どうするのだ?」
イリーナが問いかけて来た。
どうも、ナイセーと奴隷制度の話をしてから、今まで以上に俺に対する距離が近い。
そして、今まで「ヤーベ殿」だったのが、「ヤーベ」と呼び捨てになった。
イリーナはいつも自分の事を呼び捨てにしろって言ってたけど、俺を呼び捨てにすることは無かったんだが。
・・・まあ、もっと俺のそばにいることをアピールしないと、俺が奴隷、しかも女性の奴隷などを購入した際にそちらに意識が行ってイリーナの事を忘れてしまうのではないか・・・と心配でもしているのだろうか。
ナイセーの話の中で、この国が一夫多妻制だと確認している。尤も、多夫一妻でも問題ないらしい。ようは、生活できるだけの財力があり、双方が了解すれば結婚という形を取る事は問題ないとのことだ。
何らかの理由で俺が奴隷の女性を買ったとしても、ぜひとも仲良くしてもらいたい・・・などというのは、俺からすると傲慢な考え方だろうな。
ラノベのお約束である「ハーレム」だが、少なくとも俺にはチート能力がないので、「チートで大活躍してハーレム」という所謂「チーレム」コースはありえない。
となると、俺がハーレムを形成しようとするならば、自力で奴隷を購入して増やす「通常ハーレム」コースを目指すしかない。
・・・別に目指す必要もないんだが。
奴隷制度はひとまず置いておくとして、「ハーレム」というものについて真面目に考えてみる。男の俺からすれば多くの美女を侍らせてウハウハできるというメリット山盛りなイメージだが、もちろんデメリットもある。経済的な事もそうだし、増えれば増えるほど相手とのコミュニケーションに気を使う事になるだろう。一人だけを相手にしている場合と違い、何気ない会話から、プレゼントとか、
ふれあいも夜の生活もある程度平等にこなさないと女性側からの不満が出ることは想像に難くない。
では女性側の視点からすればどうか?
メリットは・・・どうだろう? よほど相手の男が好きで、複数でも問題ないと決断すれば相手と結婚できる、生活を共にできる事になる。
デメリットは当然相手を独り占めできない事だろう。
ハーレムは男の夢、なんてよく聞く言葉だし、ラノベでは幸せなハーレム生活の物語が多い。だが、現実的に考えた時、本当にそうだろうか?
複数の女性を相手にするとき、全員を平等に相手にしないと、誰かが悲しんでしまうだろう。
夜の生活など、どれほど体力があればよいのか?
一人二時間として、五人も居れば十時間じゃないか。百人ハーレムとか言ってるヤツはアホじゃないのか。
尤も俺にはへそまで反り返ったピ・・・あ、もういいですか。
ただ、この異世界はハーレムというか、一夫多妻が必要な世界でもあると思われる。
非常に危険の多い世界だ。冒険者という仕事とか、魔物の存在とか、とにかく命の危険が多い。
そして、その危険を請け負うのは多くが男ということになるだろう。冒険者にしても、騎士にしても女性はもちろんいるだろう。だがその絶対数はそれほど多くないはずだ。そしてそれらの職業は死亡率もそれなりに高いだろう・・・。つまりこの世界は女性の方が多く生活している可能性が高い。となると、財力のある男性、甲斐性のある男が複数の女性と生活することにより、女性一人で生活しなければならない状況も少しは改善できるのかもしれない。
・・・やたら難しい事を考えてみたが、ハーレム自体悪い事じゃないような気もするが、俺には荷が重いってことだな、うん。
だがら、イリーナよ、安心していいと思うぞ。俺が女奴隷を買う事など、きっと・・・まず・・・どうだろう? チョットは覚悟しておいてもらった方がいいかな?
まあ、結論をすぐ出す必要はないな、うん。
ぎゅぎゅぎゅ!
ボーッと考えていたせいか、イリーナに返事をしなかった俺は右手をイリーナに握りつぶされている。痛覚無効のスライムボディだから大事ないけど、普通の人間の手だったら結構大変なことになっているレベルで握ってますよ?
「イリーナよ、形が変わってしまうからあまり強く握らないでくれると嬉しいのだが」
「・・・ヤーベ、これからどうする?」
掴んだ右手を話さないままイリーナが再度聞いてくる。
「これからとは?」
「ずっとこの町で住むのか? 泉の畔に戻るのか? それとも王都にでも出かけるのか?」
これからの行動についてどうするのか、ということね。
「そうだな、俺たちの今後だが、こんなことを考えている」
そう言って今後の方針を説明する。
①泉の畔に帰って家を建てる
②カソの村へ行って祝勝会
③ソレナリーニの町に移住
④城塞都市フェルベーンへ旅行
⑤いきなり王都を目指す
「ヤーベもいろいろ考えていたのだな・・・」
イリーナさん、なんか俺の事何にも考えてないイケイケドンドンなヤツだと思ってません? 一応これでも思慮深い男だと思ってますが。
「ちなみにずらっと出してみたが、カソの村はタイミング的にも無理があるだろう。行けば盛り上がってくれる気もするが、無理をさせるのも悪い。いきなり王都も無い。行く理由もない」
そう言ってイリーナから目を逸らして空中に視線を泳がせる。
できれば揉め事を起こさずスローライフを送りたいものだ。
・・・そういう事を言っている主人公がスローライフを送れた試しがないのがラノベのお約束だが。ま、俺はスライムだし、町でのんびり暮らすってのは今のところ難しいしな。
「それではこの町に移住するのか?」
イリーナの問いに首を振る。首がどこと言われると困るが。
「ナイセーやゾリアなら許可をくれると思うけどな。まだ俺が町でのんびり暮らすのは難しいよ」
「そうなのか・・・」
少しがっかりした表情で俯くイリーナ。イリーナは町でゆっくり暮らしたいのだろうか。
代官の家では久々に風呂に入っただろうからな。
俺もこの世界に来て初めて風呂に入った。
・・・めちゃくちゃ気持ちよかった。
なんか「お背中御流しいたします」的なメイドが風呂に来ようとしたが、頑として追い返した。エロに興味がないわけではないが、この姿を見られたらメイドさんの悲鳴だけじゃすまない。
「そんなわけで、泉の畔に戻って家でも建てるか、城塞都市フェルベーンへ魔物狩りなどで金を稼ぎながら出かけるか、どうしようか迷っているところなんだ」
「泉の畔に家を建てるのか・・・?」
イリーナが小首を傾げて聞いてくる。
「いい加減、イリーナがテント生活では心配だからな」
「・・・ヤーベ!」
急にイリーナが抱きついて来た。そんなに感動しなくても。
「ただ、どうやって家を建てればいいかは見通しが立っていないが」
俺の言葉に絶望の表情を浮かべるイリーナ。
だって仕方ないじゃないか。俺は家なんて建てられないし。
頼むならカソの村の村長に大工の派遣を依頼するくらいしか思いつかん。
費用なら今回の報酬で何とかなりそうだけど。
ただ、この町の情報も全部精査が終わったわけじゃない。
何か忘れてるような気もするが。
「ぴよぴよー!(ボス!大変です!)」
「どうした?」
「ピヨピピピピー!(北のスラム街で不穏な動きがありましたので監視しておりましたが、この町でテロ行為を行う計画を練っている連中を見つけました!)」
「ええっ!」
俺、全然スローライフ出来ないじゃん!
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