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第5章 ヤーベ、地元のピンチに奮い立つ!

第42話 迷宮氾濫の後片付けをしよう

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高速飛翔フライハイ>の精霊魔法で空中を超高速で移動する俺。

「アバババババッ!」

「ヤーベ、待って待って!」

精霊たちが追い付いてくる。
ん? どうした?

「ヤーベ、早すぎ~」

やっと追いついて来た風の精霊ウィンティアが文句を言う。

「お兄様、魔力が凄すぎます~」

風の精霊シルフィアよ、お兄さんからお兄様にランクアップしているぞ。

「あらあら~イリーナちゃんが死んでいるわ~」

「アババババ~」

おうっ! 移動が速すぎてイリーナが耐えられなかったみたいだ。
土の精霊ベルヒアねーさん、イリーナは死んでません。死にかけているだけです。

「イリーナ! イリーナ! 大丈夫か?」

と言って右触手でイリーナを往復ビンタする。

「はぶぶっ!」

「おお、イリーナ目が覚めたか」

「何気にヒデーな、ヤーベの奴・・・」

炎の精霊フレイアが若干引いていた。

「じゃあ、イリーナも目が覚めたことだし、少し速度を落として飛んでいこう」

「ヤ~ベ~、お手柔らかに頼むにゃ」

へろへろになったイリーナがへろへろな返事をする。

「さあ出発だ」

俺たちは再びローガ達の救援に向かった。





さて、カソの村の近くに着いたのだが・・・
ズラリと並ぶローガ達狼牙族一党の土下座?というか、伏せてると言うか・・・、どした?

『ボス・・・! 今さら顔を合わす面目もございませんが・・・』

ローガが顔だけ上げて話し出す。
よく見れば、魔物は完全に殲滅されているな。
バラバラ、焼け焦げ、凍結破砕。ウン、四天王の三頭がやりまくったね、コレ。
その他引き裂かれている魔物も多い。その他狼牙達も十分に活躍したようだな。
これを見る限りローガとガルボはただ見てただけだな。

ヒヨコたちも居たし、戦力過剰だったか・・・って、なぜヒヨコたちも土下座、というか、翼が三つ指ついたどこかの女将みたいにひれ伏してるの?

『ボスがヒヨコたちに伝えたご指示・・・オークの肉確保のため、出来る限り良い状態で仕留めるようにとのことでしたが・・・』

ローガが話しながら落ち込む。

『申し訳ございません、ご指示を頂いたヒヨコがローガ殿達の戦闘開始までに間に合わず、ご指示を伝達することが出来ませんでした』

ヒヨコ隊長が説明する。
ああ、そういう事ね。
飛び立つヒヨコに伝えたな。

オークという魔物は結構ラノベの中でも豚肉のような感じでおいしいという設定が多かった。ならば食べてみたいと思うのも人(?)情というもの。

それにソレナリーニの町のオーク煮込みはうまかった。ならば焼いてステーキにしたりオーク肉で唐揚げを作ったりとおいしい料理も試したい。それにうまいならばギルドでの買取もいい値が付きそうだ。そう思って出来る限り肉がよい状態で仕留めてもらいたかったのだが・・・。

まあ、なんだ。大半が無残な状態だな。
ローガ達は気合入っていたし、ヒヨコが到着した時にはすでに殲滅完了!というわけか。

『ボスのご期待に添えず、このローガひと思いにこの腹掻っ捌いて・・・』

と言って急に立ち上がるローガ。

「アホかっ!」

そう言って触手でローガの頭をひっぱたく。

「グワッ!」

地面に突っ伏すローガ。

「まったくどこでそんなネタ覚えて来るかね。どんな時でもローガ達が死んだりしたら俺が悲しいでしょ! 俺を悲しませることがお前たちの責任の取り方か!?」

『は、ははーっ!』

土下座というか、伏せの状態がより厳しくなって土下寝みたいになってるぞ。

ボスのお心を汲めずただただ恥じるばかりでございます!』

「ローガ、お前固いって。だいだい今回の任務はカソの村を守るために敵を殲滅する事が目的だった。出来れば、の希望が伝わらなかったことで対応できなかったとしても、それがどうということはない」

何でもないと言った感じで伝えてみる。

ローガって、結構真面目過ぎるんだよね。もっと気楽にやってもらっていいのに。その辺はガルボを見習ってもらってもいいくらいだ。・・・ガルボはもう少し真面目でもいい。

『ボス・・・!』

涙を流して感動しているローガ。だから固いって。
ヒヨコ隊長たちもホッと胸をなでおろしている。
う~ん、今度から指令も気を付けないと、コイツら本当に真面目でいい奴だな。

それにしても、なかなかに凄惨だ。焦げ臭いし、ばらばらで血の匂いも酷いね。とりあえずこの魔物たちを<迷宮氾濫スタンピード>対処完了の報告に使おう。二千くらいいれば、まあそれなりの形として報告出来るだろう。

そんなわけで俺様は得意の亜空間圧縮収納へ魔物を放り込んでいく。うん、四天王の三頭が倒した奴は厳しいが、普通の狼牙達が倒したオークは十分形が残ってはいる。

解体して肉だけもらおう。





さて、収納し終わったので、カソの村へ連絡に行こう。

「おーい、村長元気?」

「おおっ!精霊様ではないですか」

「いえ、違います」

「まあまあ、ところで、村に来られたと言うことはもしかして?」

「うん、<迷宮氾濫スタンピード>の魔物は全て殲滅したから、もう大丈夫」

「おお! さすが精霊様でございます!」

「いえ、違います」

村長の精霊推し、なんとかならんもんかね・・・なんともならんか。 

「これで村は救われました! 早速祝勝会の準備をせねば!」

いそいそと村の奥へ準備に向かおうとする村長。
結局宴会したいだけとか。まあいいか。

「村長すまないね。これからソレナリーニの町の代官に<迷宮氾濫スタンピード>の魔物殲滅の報告をしに行かなくてはいけなくてね。祝勝会には参加できそうもない。村の人たちだけでゆっくりしてくれ」

「なんと、それは残念ですが、<迷宮氾濫スタンピード>の魔物討伐完了報告となれば、急いでおられるでしょうな。お引止めしますまい。ぜひまたの機会にお寄りくださいませ」

「そうさせてもらうよ。それでは、また」

そう言ってローガにまたがり、ソレナリーニの町に出発した。





・・・・・・





「何ですと! もう<迷宮氾濫スタンピード>の魔物をすべて討伐してきたというのですか・・・!」

ソレナリーニの町冒険者ギルド。そのギルドマスター室で待っていた代官のナイセーは俺の報告に驚いた。

「まあ、移動スピードが速いからね、俺」

通常ならカソの村まで歩いて一、二日。しかも総計一万もの魔物と戦闘して殲滅させてきて、今は夕方。ちなみに出発は昼過ぎだったからな。いかにスピーディに済ませて来たか、いい仕事が出来たと自負しよう。

「それで、ギルドマスターのゾリアは・・・?」

「あ」

「・・・その反応は?」

「どっかにおいて来たな」

っはっはと笑う俺。笑い事じゃないか。

「ただ、八千の魔物を仕留めるところは確認してもらった。実は一万の魔物の内、約二千がカソの村に直接向かったという報告が入ったのでな。カソの村を守るためにローガ達を先行でカソの村防衛に送ったんだ。俺が八千の魔物を仕留めて即ローガ達の救援に向かったから、その時にゾリアが遅れたんだろう」

「で、カソの村ももちろん無事なんですよね?」

代官のナイセーは確認してくる。

「もちろんだ。村に近づく前にローガ達が殲滅したよ。そっちは死体を回収してある。裏の倉庫に出すか? <迷宮氾濫スタンピード>の魔物の証拠になるだろう」

「ぜひお願いします」

そうしてギルド裏の解体倉庫にやって来た。

「お願いします」

代官のナイセーの指示に従い、ゴブリンとオークの死体を出して行く。
バラバラ、焼け焦げ、凍結破砕した死体が大半で数が数えにくい。

「まあ、数のチェックと解体はギルドに任せるよ」

「・・・はい」

ギルド職員も数と状態に開いた口が塞がらないといった感じだったが、なんとか返事だけはした。

そこへギルドマスターのゾリアが帰って来た。

「おうヤーベ、置いて行くなんてヒデーじゃねぇか」

文句を言ってくるゾリア。

「いや、お前を待っていてカソの村救援が間に合わなかったら本末転倒だろうが」

「そりゃそうだが、出来ればそう言ってくれよ。少し追いかけたが全く追いつけないだろうなと思ったし、カソの村救援だろうと分かったから先にギルドに帰って待つかと思ったんだが・・・なんでお前の方が先なんだよ!」

「はっはっは、遅いぞゾリア」

「おまーふざけんなよ! 大体、また北門の外に狼牙達を並べて待たせてるだろ! きちんと並んでお座りしている狼牙達を衛兵たちがモフッてたろーが!」

「いや、また全員で町中を行進するのもどうかと思ってな。町の外に待機させたんだが」

「なんだか異常に人気になってたぞ、ちくしょうめ!」

「おっ、そうか、あまり人にびっくりされると狼牙達もヘコむからな。喜んで貰ってるなら何よりだが」

「衛兵たちが率先してモフ・・・コミュニケーションしてるから、門を通る商人や旅人にも狼牙が怖くないように見えてみんなに撫でられてたぞ」

「そうか~、いい人が多いんだな、この町は」

狼牙達が怯えられてなくて何よりだな。

「それで、このばらばらだったり、黒焦げだったり、粉々の氷みたいになってるのがカソの村を襲った<迷宮氾濫スタンピード>の魔物か?」

「そうだよ」

「じゃあ、これで完璧に<迷宮氾濫スタンピード>対処完了だな!」

「そうだな。そう考えていいだろう」

「守られたのですね・・・この町は」

「ああ、ヤーベのおかげでな」

ナイセーとゾリアは俺に笑顔を向けた。
うむ、良い事をした後は気持ちがいいな。
早速ローガ達やヒヨコ隊長のために屋台街で食い物を買い占めるとするか!
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