48 / 206
第5章 ヤーベ、地元のピンチに奮い立つ!
第42話 迷宮氾濫の後片付けをしよう
しおりを挟む<高速飛翔>の精霊魔法で空中を超高速で移動する俺。
「アバババババッ!」
「ヤーベ、待って待って!」
精霊たちが追い付いてくる。
ん? どうした?
「ヤーベ、早すぎ~」
やっと追いついて来た風の精霊ウィンティアが文句を言う。
「お兄様、魔力が凄すぎます~」
風の精霊シルフィアよ、お兄さんからお兄様にランクアップしているぞ。
「あらあら~イリーナちゃんが死んでいるわ~」
「アババババ~」
おうっ! 移動が速すぎてイリーナが耐えられなかったみたいだ。
土の精霊ベルヒアねーさん、イリーナは死んでません。死にかけているだけです。
「イリーナ! イリーナ! 大丈夫か?」
と言って右触手でイリーナを往復ビンタする。
「はぶぶっ!」
「おお、イリーナ目が覚めたか」
「何気にヒデーな、ヤーベの奴・・・」
炎の精霊フレイアが若干引いていた。
「じゃあ、イリーナも目が覚めたことだし、少し速度を落として飛んでいこう」
「ヤ~ベ~、お手柔らかに頼むにゃ」
へろへろになったイリーナがへろへろな返事をする。
「さあ出発だ」
俺たちは再びローガ達の救援に向かった。
さて、カソの村の近くに着いたのだが・・・
ズラリと並ぶローガ達狼牙族一党の土下座?というか、伏せてると言うか・・・、どした?
『ボス・・・! 今さら顔を合わす面目もございませんが・・・』
ローガが顔だけ上げて話し出す。
よく見れば、魔物は完全に殲滅されているな。
バラバラ、焼け焦げ、凍結破砕。ウン、四天王の三頭がやりまくったね、コレ。
その他引き裂かれている魔物も多い。その他狼牙達も十分に活躍したようだな。
これを見る限りローガとガルボはただ見てただけだな。
ヒヨコたちも居たし、戦力過剰だったか・・・って、なぜヒヨコたちも土下座、というか、翼が三つ指ついたどこかの女将みたいにひれ伏してるの?
『ボスがヒヨコたちに伝えたご指示・・・オークの肉確保のため、出来る限り良い状態で仕留めるようにとのことでしたが・・・』
ローガが話しながら落ち込む。
『申し訳ございません、ご指示を頂いたヒヨコがローガ殿達の戦闘開始までに間に合わず、ご指示を伝達することが出来ませんでした』
ヒヨコ隊長が説明する。
ああ、そういう事ね。
飛び立つヒヨコに伝えたな。
オークという魔物は結構ラノベの中でも豚肉のような感じでおいしいという設定が多かった。ならば食べてみたいと思うのも人(?)情というもの。
それにソレナリーニの町のオーク煮込みはうまかった。ならば焼いてステーキにしたりオーク肉で唐揚げを作ったりとおいしい料理も試したい。それにうまいならばギルドでの買取もいい値が付きそうだ。そう思って出来る限り肉がよい状態で仕留めてもらいたかったのだが・・・。
まあ、なんだ。大半が無残な状態だな。
ローガ達は気合入っていたし、ヒヨコが到着した時にはすでに殲滅完了!というわけか。
『ボスのご期待に添えず、このローガひと思いにこの腹掻っ捌いて・・・』
と言って急に立ち上がるローガ。
「アホかっ!」
そう言って触手でローガの頭をひっぱたく。
「グワッ!」
地面に突っ伏すローガ。
「まったくどこでそんなネタ覚えて来るかね。どんな時でもローガ達が死んだりしたら俺が悲しいでしょ! 俺を悲しませることがお前たちの責任の取り方か!?」
『は、ははーっ!』
土下座というか、伏せの状態がより厳しくなって土下寝みたいになってるぞ。
ボスのお心を汲めずただただ恥じるばかりでございます!』
「ローガ、お前固いって。だいだい今回の任務はカソの村を守るために敵を殲滅する事が目的だった。出来れば、の希望が伝わらなかったことで対応できなかったとしても、それがどうということはない」
何でもないと言った感じで伝えてみる。
ローガって、結構真面目過ぎるんだよね。もっと気楽にやってもらっていいのに。その辺はガルボを見習ってもらってもいいくらいだ。・・・ガルボはもう少し真面目でもいい。
『ボス・・・!』
涙を流して感動しているローガ。だから固いって。
ヒヨコ隊長たちもホッと胸をなでおろしている。
う~ん、今度から指令も気を付けないと、コイツら本当に真面目でいい奴だな。
それにしても、なかなかに凄惨だ。焦げ臭いし、ばらばらで血の匂いも酷いね。とりあえずこの魔物たちを<迷宮氾濫>対処完了の報告に使おう。二千くらいいれば、まあそれなりの形として報告出来るだろう。
そんなわけで俺様は得意の亜空間圧縮収納へ魔物を放り込んでいく。うん、四天王の三頭が倒した奴は厳しいが、普通の狼牙達が倒したオークは十分形が残ってはいる。
解体して肉だけもらおう。
さて、収納し終わったので、カソの村へ連絡に行こう。
「おーい、村長元気?」
「おおっ!精霊様ではないですか」
「いえ、違います」
「まあまあ、ところで、村に来られたと言うことはもしかして?」
「うん、<迷宮氾濫>の魔物は全て殲滅したから、もう大丈夫」
「おお! さすが精霊様でございます!」
「いえ、違います」
村長の精霊推し、なんとかならんもんかね・・・なんともならんか。
「これで村は救われました! 早速祝勝会の準備をせねば!」
いそいそと村の奥へ準備に向かおうとする村長。
結局宴会したいだけとか。まあいいか。
「村長すまないね。これからソレナリーニの町の代官に<迷宮氾濫>の魔物殲滅の報告をしに行かなくてはいけなくてね。祝勝会には参加できそうもない。村の人たちだけでゆっくりしてくれ」
「なんと、それは残念ですが、<迷宮氾濫>の魔物討伐完了報告となれば、急いでおられるでしょうな。お引止めしますまい。ぜひまたの機会にお寄りくださいませ」
「そうさせてもらうよ。それでは、また」
そう言ってローガにまたがり、ソレナリーニの町に出発した。
・・・・・・
「何ですと! もう<迷宮氾濫>の魔物をすべて討伐してきたというのですか・・・!」
ソレナリーニの町冒険者ギルド。そのギルドマスター室で待っていた代官のナイセーは俺の報告に驚いた。
「まあ、移動スピードが速いからね、俺」
通常ならカソの村まで歩いて一、二日。しかも総計一万もの魔物と戦闘して殲滅させてきて、今は夕方。ちなみに出発は昼過ぎだったからな。いかにスピーディに済ませて来たか、いい仕事が出来たと自負しよう。
「それで、ギルドマスターのゾリアは・・・?」
「あ」
「・・・その反応は?」
「どっかにおいて来たな」
っはっはと笑う俺。笑い事じゃないか。
「ただ、八千の魔物を仕留めるところは確認してもらった。実は一万の魔物の内、約二千がカソの村に直接向かったという報告が入ったのでな。カソの村を守るためにローガ達を先行でカソの村防衛に送ったんだ。俺が八千の魔物を仕留めて即ローガ達の救援に向かったから、その時にゾリアが遅れたんだろう」
「で、カソの村ももちろん無事なんですよね?」
代官のナイセーは確認してくる。
「もちろんだ。村に近づく前にローガ達が殲滅したよ。そっちは死体を回収してある。裏の倉庫に出すか? <迷宮氾濫>の魔物の証拠になるだろう」
「ぜひお願いします」
そうしてギルド裏の解体倉庫にやって来た。
「お願いします」
代官のナイセーの指示に従い、ゴブリンとオークの死体を出して行く。
バラバラ、焼け焦げ、凍結破砕した死体が大半で数が数えにくい。
「まあ、数のチェックと解体はギルドに任せるよ」
「・・・はい」
ギルド職員も数と状態に開いた口が塞がらないといった感じだったが、なんとか返事だけはした。
そこへギルドマスターのゾリアが帰って来た。
「おうヤーベ、置いて行くなんてヒデーじゃねぇか」
文句を言ってくるゾリア。
「いや、お前を待っていてカソの村救援が間に合わなかったら本末転倒だろうが」
「そりゃそうだが、出来ればそう言ってくれよ。少し追いかけたが全く追いつけないだろうなと思ったし、カソの村救援だろうと分かったから先にギルドに帰って待つかと思ったんだが・・・なんでお前の方が先なんだよ!」
「はっはっは、遅いぞゾリア」
「おまーふざけんなよ! 大体、また北門の外に狼牙達を並べて待たせてるだろ! きちんと並んでお座りしている狼牙達を衛兵たちがモフッてたろーが!」
「いや、また全員で町中を行進するのもどうかと思ってな。町の外に待機させたんだが」
「なんだか異常に人気になってたぞ、ちくしょうめ!」
「おっ、そうか、あまり人にびっくりされると狼牙達もヘコむからな。喜んで貰ってるなら何よりだが」
「衛兵たちが率先してモフ・・・コミュニケーションしてるから、門を通る商人や旅人にも狼牙が怖くないように見えてみんなに撫でられてたぞ」
「そうか~、いい人が多いんだな、この町は」
狼牙達が怯えられてなくて何よりだな。
「それで、このばらばらだったり、黒焦げだったり、粉々の氷みたいになってるのがカソの村を襲った<迷宮氾濫>の魔物か?」
「そうだよ」
「じゃあ、これで完璧に<迷宮氾濫>対処完了だな!」
「そうだな。そう考えていいだろう」
「守られたのですね・・・この町は」
「ああ、ヤーベのおかげでな」
ナイセーとゾリアは俺に笑顔を向けた。
うむ、良い事をした後は気持ちがいいな。
早速ローガ達やヒヨコ隊長のために屋台街で食い物を買い占めるとするか!
1
お気に入りに追加
303
あなたにおすすめの小説
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。
明石 清志郎
ファンタジー
昔とある世界で勇者として召喚され、神に近い存在になった男ジン。
新人研修の一環として同胞の先輩から、適当に世界を一つ選んでどんな方法でもいいから救えと言われ、自分の昔行った異世界とは別の世界を選び、勇者四人の選定も行った。
自分もそこで勇者として潜入し、能力を隠しつつ、勇者達にアドバイスなんかを行い後方支援を行い、勇者を育てながら魔王討伐の旅にでていた。
だがある日の事だ。
「お前うるさいし、全然使えないからクビで」
「前に出ないくせに、いちいちうぜぇ」
等と言われ、ショックと同時にムカつきを覚えた。
俺は何をミスった……上手くいってる思ったのは勘違いだったのか……
そんな想いを抱き決別を決意。
だったらこいつらは捨ててるわ。
旅に出て仲間を見つけることを決意。
魔王討伐?一瞬でできるわ。
欲しかった仲間との真の絆を掴む為にまだよく知らない異世界を旅することに。
勇者?そんな奴知らんな。
美女を仲間にして異世界を旅する話です。気が向いたら魔王も倒すし、勇者も報復します。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる