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第5章 ヤーベ、地元のピンチに奮い立つ!
第36話 迷宮氾濫(スタンピード)の対策を立てよう
しおりを挟む「よーし、お前達、きちんと並べ~」
「「「わふっ!」」」
俺は先頭を歩いていく。イリーナが俺に並んで歩いてる。
後ろを振りかえると先頭のローガにサリーナさんがべったりだ。ほぼ体が半分埋まっていながら歩いている姿はある意味不思議な光景だ。
ローガの後ろには四天王が四列に並んで歩く。その後ろにさらに狼牙達が続くので、四列行進だ。一糸乱れぬ行進に町の人々が驚いたり遠巻きに怯えたりしている。
さすがに狼牙がこんなに行進していると驚かれるか。というか、町中に一頭侵入しただけでも大騒ぎになる魔獣の狼牙が、こんな軍団で歩いている事なんてまずないよな。もしかしたら魔物に門を破られて攻められていると勘違いする奴らも出てくるかもしれない。
しかし、ローガたちのモフモフ具合が知れ渡れば、街の人たちも虜になること間違いなし!やはりモフモフは正義なのだ。そのうちソレナリーニの町のマスコットアイドルにならないか・・・、無理だな。数が多すぎるわ。こんな軍団が全頭マスコットになったら逆に大変な気がするな。
でも、ローガのファンは確実に増えて行きそうな気がする。すでに他の狼牙達に比べても二回り以上大きい。その上長めの毛がふっさふさなのだ。それこそサリーナさんが抱きつくとサリーナさんが半分くらい埋まってしまう位に。というか、サリーナさんずっと半分くらい埋まってますが大丈夫ですか?
「大変申し訳ないのですが、ローガさんたち狼牙族の皆さんはヤーベ様の使役獣ですのでギルドの建屋の中には入れませんので、隣の厩舎にて待機いただくようになります。本当に申し訳ございません」
ギルドに着いたのだが、サリーナさんが本当に申し訳ないと言った感じで伝えてくる。
さすがの俺様の冒険者ギルドの建物内にローガ達を六十一頭も連れ込むつもりはないが。
・・・まさかサリーナさんがギルド内でモフモフできなくて残念だからではないよね?
ローガ達を隣の厩舎で待つように指示し、俺とイリーナはサリーナさんを先頭にギルド内に入る。
冒険者ギルド内は前回来た時と同じく、喧騒に包まれていた。俺たちが入ってくると、多くの冒険者たちが俺とイリーナに視線を向けてくるが、俺たちはそれらを無視してサリーナさんの後ろについていく。サリーナさんはそのままギルドの奥にあるギルドマスターの部屋まで案内してくれた。
「失礼致します、ギルドマスター。無事ヤーベ殿の使役獣六十一頭にペンダントが行き渡りましたので報告いたします」
ノックして部屋に入るなり報告するサリーナ嬢。
「そうか、とりあえず入れ」
許可をもらったのでギルドマスターの前に座る。
「やっほー、お久!」
「お久じゃねーよ! どんだけ使役獣連れて来てるんだよ!」
ギルドマスターご立腹。まあ想像できたけどな。使役のペンダントって魔道具って言ってたし、ランデル君は仕事打ち切られそうになったって言ってたしな。つまり使役獣のペンダントは冒険者ギルドがお金を出して作らせているってことだよな。ならばランデル君への援護射撃だな。
「おいおい、大魔導士を舐めるなよ? まさか使役獣がこれだけで終わるとは思ってもいまい?」
ギルドマスターにニヤリと笑って言ってやる。ローブ被ってるから笑ってもわからんだろうけどさ。
「それこそおいおいだろうが! まだ増えるってのかよ!?」
「ペンダントはたっぷり用意して用意した方がいいぞ?」
「くそー、またギルドの予算見直しかよ・・・、頭痛ェ」
はっはっは、これでランデル君も食いっぱぐれ無くなるかな。
・・・ん? ギルドマスターの前、テーブルの上に食べ物がたくさんあるな。昼食中だったか。それにしても、どこかで見たような・・・。
「んっ? 田舎モンのお前さんにゃ初めて見る食べ物かもしれねーけどな。ワイルドボアのスラ・スタイルって料理と、アースバードの唐揚げって食べ物だ。今この町で大流行りなんだぜ。王都でも流行る事間違いなしって人気の食べ物さ」
どや顔で説明してくれちゃうギルドマスター・ゾリア。
恥ずかしー! ガチでスラ・スタイル流行っちゃったよー!
なぜあの時俺は調子に乗った! あの時の俺を殴りたい。
「これはヤーベ殿が考案した料理ではないか。カソの村の開村祭で振る舞った時の」
イリーナがあっさりと事実をバラす。
「ブフォッ!」
ギルドマスター・ゾリアは噴いた。
「おわっ!汚い!」
「ギルドマスター、大丈夫ですか?」
そう言って机の上を布巾で拭くサリーナさん。その後ギルドマスターにお茶を入れる。ついでに俺たちにもお茶を出してくれる。ええ娘や。
「お、お前が考えたのか!?」
「まあなんだ、そうなるかな・・・」
自分で考えたわけではないんだけど、前世というか、地球の時の話なんて出来ないしね。
「お前、多才なんだな・・・。この料理、今屋台でも大人気だぞ。ワイルドボアのスラ・スタイルが一番人気だが、ジャイアントバイパーのスラ・スタイルもうまい。
アースバードの唐揚げは屋台だけじゃなく、酒場のおつまみでも大人気でバカ売れしてるらしいぞ。この前屋台街に視察に来ていた代官のナイセーも大絶賛していた。そういや商人たちが広めていたが、カソの村でお前の料理の情報を仕入れてきてたんだな」
「ああ、開村祭で振る舞った時に料理の作り方とかいろいろ聞かれたからな・・・」
「まあ、そのおかげでこの町の屋台街も盛り上がってる。経済的にもいい影響が期待できるってナイセーも言っていたしな。その事は素直に感謝したいところだ。特に俺はこのアースバードの唐揚げにめちゃくちゃハマっていてな・・・、これホントにうまいよな」
そう言って唐揚げを頬張るゾリア。
「役に立つことが出来て何よりだよ」
「それで? 今日は使役獣の自慢にでも来たのか?」
「ああ、そう言えばこの町の北にある迷宮で<迷宮氾濫>寸前って情報が入ったんでね。ゾリアに相談に来たんだけど」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばし無言。
「・・・・・・早く言えーーーーーーーーーーーー!!!!」
あ、噴火した。
「ス、ス、<迷宮氾濫>だとぉ! 本気なのか! ホントなのか! 事実なのか!」
「いや、落ち着けよ。本気だし、本当だし、事実だけど」
「唐揚げの話してる場合じゃねーじゃねえか! サリーナ! そんな情報入っているか!?」
「いえ、まだギルドには何も・・・」
「どうしてそんな情報が手に入った!?」
ギルドマスターのゾリアが鋭い視線を俺に向けてくる。
俺の情報網に驚いているようだな。
「俺の部下には狼牙族の他にヒヨコたちもたくさんいてね。情報収集のためにいろんな町の近くへ出かけて行ってるんだよ。そのうちの位置羽が迷宮の情報を掴んできた。迷宮の鳴動が相当短期間で激しくなっているらしい」
「イヤ・・・、まずいぞ! 非常にまずい!」
「ギルドマスター、緊急発令を掛けますか?」
「いや、まだ情報が足りん。ヤーベが嘘を言っているとは思わんが、ギルドも情報が欲しい。職員を迷宮に大至急派遣してくれ。それから衛兵詰め所に行って、迷宮管理担当に現地管理の交代員を送るタイミングで情報を取る様に指示してくれ。<迷宮氾濫>なんてことになれば、どれだけの被害が出るかわからん」
「わかりました」
「それから、指示を出したら、お前が直接代官邸に赴いて代官のナイセーに取り次いでもらって事情を説明して来てくれ。出来ればすぐにでもこちらで打ち合わせを行いたいと申し入れてくれ。それから、情報は統制しろ。変に伝わるとパニックになりかねん」
「了解しました。それではすぐに対応します」
そう言ってサリーナさんは部屋を出て行く。さすが副ギルドマスター、仕事の出来る人だ。
「ヤーベ、お前にはもう少し詳しい話を聞かせてもらう、いいな?」
鋭い目を向けるギルドマスター・ゾリア。
俺の情報を精査して町を守る対策を大至急検討しようという事だろうな。
そりゃそうか、この町を守るのは何も衛兵という役人に雇われた者達だけではない。この町に根付く冒険者ギルドの冒険者たちもまた、当然この町に深く愛着があるだろう。
「ああ。町に被害が出ないための対策を相談に来たのだからな」
さあ、<迷宮氾濫>の対策を練る事にしようか。
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