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第4章 ヤーベ、異世界で初めての街ではっちゃける!

第29話 買い物に行こう

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「ヤーベ殿、どこに買い物にいくのだ?」

冒険者ギルドから出て来た俺たちは大通りを歩きながらどこへ向かうか考えていた。

「冒険者登録も済ませたしな。身分証があれば基本的にどこでも買い物が出来るよな」

チャラりと首?にかけた冒険者タグを見る。Fランク冒険者の証。

「ヤーベ殿に合うもっと良い素材のローブでも見に行こうか?」

イリーナが俺のローブを気にしてくれた。でもこの色、大魔道っぽくて気に入っちゃったんだよな。イリーナが選んでくれたものだし。大体、キャサリンの店にはしばらく行きたくないかな。

「ローブはいいよ。イリーナに選んでもらったこのローブを気に入っているから」

「うっ・・・こんなに素直にヤーベ殿が私を褒めてくれるなんて・・・この後、私を褒めて褒めてトロトロにされて・・・くっ、抱くがいい!」

「いや、なんで俺がイリーナを褒めて褒めてトロトロにしないといけないわけ?」

意味不明な会話を続けながら、大通りを歩いて行く。



「んっ? ヤーベ殿、また屋台街に向かっているのか?」

ふっふっふ、バレてしまったのならば仕方がない。
時間も昼過ぎくらい。昼飯を狙った客がひと段落したころだろう。
屋台が空き始めてくる今がチャンス!

「そうだ。ヒヨコ隊長の部下やローガ達にお土産を買っていかねばならないのだから。金は十分に用意できた。ならば、うまいものを買い占める以外にすることはない!」

「か、か、買い占める!?」

「そうだ! 狼牙やヒヨコたちキャツらの胃袋を舐めてはいかん。あればあるだけ食べる奴らだ。それに、ソレナリーニの町は多少離れているからな。出来るだけまとめて買っていこう。俺の亜空間圧縮収納なら、食べ物は傷まないから」

『ボス!部下たちの事まで考えて頂き、感激です!』

ヒヨコ隊長もイリーナの肩で喜びのダンスを踊っている。

そういうわけで早速片っ端から屋台街の食べ物を買い漁ろう。
もちろんヒヨコ隊長の部下やローガたちのお土産のためだ。
決して俺があれもこれも食べたいから買い占めるわけではない。ないったらない。

「おーいオヤジ!また来たよ~」

さっき食べておいしかったフォレストリザードの肉を串焼きにしている店に再びやって来た。

「よう、さっきのローブのダンナか。どうした?フォレストリザードの串焼きが忘れられなくてまた来てくれたのか?」

笑いながら気さくに声を掛けれくれるオヤジ。いいなー、こういう雰囲気。結構長い間泉の畔で独りぼっちだったし、ローガやヒヨコ隊長のような部下が出来ても、気さくなコミュニケーションってのは、正直なかなか無かったからな。ちょっと感激だ。

「そうそう、フォレストリザードの串焼きうますぎて。全部ちょーだい!」

「・・・えっ?全部?」

「そう、全部! タレも塩もぜ~んぶ!」

両手を広げてオーバーにアピールする俺。

「ダンナ、たくさん買ってくれるのは嬉しいが、どうやって持って帰るんだ? 百本くらいあるぜ?」

早速焼きながらも、持ち帰りの心配をしてくれるオヤジ。いい人だね。

「安心しろ、俺は収納スキルの使い手なのだ。いくらでも持ち帰り可能だ!」

皮手袋の手のひらでブイサインを作って大丈夫アピール。じゃんじゃん焼いてくれ。

「おお、豪気なダンナだね~」

隣の屋台の親父が羨ましそうに声を掛けて来た。オークの煮込みを作ってる屋台だったかな? 大鍋をぐるぐるとかき回しながらこっちを見ている。

「なんだ、売れてないのか?」

「今日は気温が高めで、あったかい煮込みはイマイチ人気がでねーのよ。味は最高なんだぜ! 試してみてくれよ」

そう言って小ぶりな器に少し取り分けてくれる。
早速一口頂いてみよう。

「うまいっ!」

一口食べてすぐ感動。何といってもトロトロに煮込まれたオーク肉がうまい! 濃い目の味だが、豚の角煮みたいでうまいねーコレ。

残りをイリーナに渡すとイリーナも食べて気に入ったみたいだ。

「全部貰おう」

躊躇なく伝える。

「ええっ? 全部かい!?」

びっくりして声が裏返っている親父に丁寧に説明してやろう。

「そうだ、全部貰おう。鍋ごと。小分けで食べたいし、小鉢皿も全部貰おう。イリーナ、金貨出してくれ」

「うむっ! ここに預かっているぞ」

「えええっ!?」

親父が唖然としている。

「ちょうどよいではないか。鍋も小鉢皿も新しいのに買い替えると思えば」

「わ、わかったわかった。もうみんなダンナに売っちまうよ」

「商談成立だな」

そう言ってオーク煮込みがたっぷり入った大鍋や小鉢皿を亜空間圧縮収納に保管して行く。

「マ、マジで消えた・・・」

オーク煮込み屋の屋台は完全に空っぽになった。

「ローブのダンナ、こっちも焼けたぜ」

「おおっ!早速貰おう」

そう言ってフォレストリザードの串焼きを収納して行く。
イリーナ、お金払っておいてくれ。

「ローブのダンナ! ホーンラビットの串焼きはどうだい!」

「いやいや、ジャイアントバイパーの塩焼きもどうだ!」

「ダンナ~、こっちはオークのモツを焼いたモツ焼きそばだよ!」

「モツ焼きそば! 全部貰おう。後そっちのホーンラビット、ジャイアントパイパーもあるだけ焼いてくれ。全部買い取ろう」

「うおーダンナ!御大臣だな!」

「はっはっは! うまい食べ物には糸目を付けんぞ!」

俺様は御大臣様の高笑いを地で行くようにのけぞりながら笑った。

「ヤーベ殿、あそこのサンドイッチもおいしそうだぞ!」

「お、お嬢さんお目が高い! ロックバードの炭焼きをパンで挟んだものさ。ロックバードの肉を香ばしく焼いて、キャベキャベの刻みとトマトマのスライスをパンに挟んだ最高の逸品だぜ!」

なんとうまそうな! キャベキャベとトマトマってキャベツとトマトだよね?

「一つ頂こう」

「いやいやダンナ、ダンナには一つサービスだ。味を見てくれよ」

そう言って一つ俺に渡してくる。
早速ガブリ。うまいっ!
ロックバード?すごいジューシーじゃないか! キャベキャベとトマトマもいい味出してる!

「全部貰おう」

「まいどっ!」

もう一つロックバードの肉をはさんだパンを貰ってイリーナに渡す。はむはむと咀嚼するイリーナ。・・・ちょっと可愛い。

その後も他の屋台からダンナダンナと声を掛けられまくり、サービスだ味見だといろいろ貰うたびに全部買いまくった。大満足ナリ。





・・・・・・





少し時間のたった冒険者ギルド

「サリーナ、すまないが屋台街で昼飯を買ってきてくれないか?」

ギルドマスターのゾリアは書類整理で仕事が押してしまったため、昼休憩を取り損ねていた。

「遅い昼食ですね、ギルドマスター」

お茶を俺の前に置きながら心配してくれる副ギルドマスターのサリーナ。
やっぱり彼女を副ギルドマスターにしてよかった。
さっきは頭の痛い事ばかりだったからな。あ、油断したら頭だけでなく胃まで痛くなってきた。

「ご希望はございますか?」

「何でもいいよ、適当に見繕ってきてくれ。とりあえず腹に溜まるものがいいかな」

「わかりました」

そう言ってギルドを出て行くサリーナ。





・・・結構時間がたつのにサリーナが帰って来ない・・・。

ど、どうしたんだ?何かあったのか?

と、思ったらやっとサリーナが帰って来た。

・・・しかも手ぶらで。

「ど、どうしたんだ? サリーナ、何も持っていないが・・・」

サリーナに限って上司に嫌がらせなんてないと思うんだが・・・

「屋台街に出向いたのですが、全ての屋台で売り切れでした」

「はあっ!?」

確かに昼のピーク時間は過ぎている。だが、全部の屋台が売り切れってありえないだろ・・・。

「一体何があったんだ?」

「はい、何でもローブの御大臣が従者の女性騎士を伴って、全ての屋台で料理を全て買い占めたそうです。屋台街の端の方の店はローブの御大臣がみんな買い占めて行くので、態々材料を急に増やして儲けようとしていた屋台主もいたとか」

「・・・あのヤローかぁ!!」

俺は拳をテーブルに打ち付けた。

「軽く調査してきましたが、どうも金貨二百枚程度は購入しているかと」

それは魔物の素材買い取りで得た報酬のほとんどを使ってるじゃねーか。

「それで、屋台街の店主たちからは伝説の人物として『屋台街の奇跡』『根こそぎのローブ』『ザ・御大臣』『爆買い大魔王』などと謎めいた呼び名が飛び交っております」

あ、頭痛ェ・・・。悪いことしてるわけじゃないのにハラ立ちすぎんだろ、アイツ。

とりあえず、今日は昼飯を諦めなきゃいけねぇって事だけは確実なようだ・・・。

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