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第4章 ヤーベ、異世界で初めての街ではっちゃける!
第25話 冒険者ギルドで説明しよう
しおりを挟むは~、トラブル回避のために隠れて来たのに、
『衛兵さん、さっきはどーも』
「え、衛兵さん、さっきはどーも」
衛兵さんは、さっき町の門で俺たちを相手してくれた一人だった。
「なんだ、またお嬢ちゃんか。今度はどうした?」
『多分さっきの三人の仲間が襲い掛かって来たんです。決闘だーって』
「多分さっきの三人の仲間が襲い掛かって来たんです。決闘だーって」
「決闘!? 町のこんな大通りでか?」
「ええ、そう言ってました。いきなり攻撃されましたし。とんでもない奴です!コイツは」
ぷりぷりとお怒り気味でイリーナが答える。
ヒヨコ隊長が男が捨てた財布を嘴で拾ってくる。お財布を加えたままイリーナの肩に戻って来た。
『ボス、戦利品です』
『ご苦労。リュックの蓋の隙間から放り込んでくれ』
『了解!』
羽を器用に使ってリュックの蓋を上げて財布を押し込む。
ヒヨコ隊長、君は本当にいい仕事をするね。
「ふー、ギルドマスター。申し訳ないが、この倒れている男連れて行きますよ? 往来で揉め事を起こしたのですから、調書を取らせて頂きます。こちらのお嬢さんは被害者のようですから、調書は後回しでもいいですけどね」
「うむ、それでかわまぬ」
ギルドマスターと呼ばれた男は仰々しく答える。
長く伸ばした白い髭にこれまた長く伸ばした白い髪。そして背中には二刀を背負っている。クロスして背負っているところを見ると、双剣使いか?
「それでは、先にギルドで話を聞こう。ついて来てくれ」
ギルドマスターに言われ、その後ろをついていく。
そして冒険者ギルドの大扉を開けて中に入った。
「はああ~」
つい声を漏らしてしまう。
いや~、冒険者ギルドだよ! あの冒険者ギルド!
何と言っても異世界転生とくれば、生きて行くために冒険者ギルドで登録、冒険者としての活動で名を上げて行く。
ラノベを読みまくりながら妄想したあの世界が今! 目の前に!
これが興奮せずにいられようか!いやいられぬ!
「ヤーベ殿、どうしたのだ?」
リュックの中で興奮してわさわさ動いてしまったのでイリーナから声を掛けられてしまった。少し落ち着かねば。
中は結構な人数がいる。どいつもこいつも冒険者チックだぜ!
というか、冒険者なんだろうけどね。
あ、あれが依頼書を張り付ける依頼ボードかな?
見たい!見たいぜ~。
「何をしている?このカウンターに座ってくれ」
言われるままカウンターの手前にある椅子に座る。
受付嬢に隣にズレる様伝え、ギルドマスターが対面に座った。
「冒険者カードを提示してくれ」
言われるまま胸元から冒険者カードを提示するイリーナ。
「フム・・・、イリーナ。Fランク冒険者か・・・」
カードを返しながら、ギルドマスターが問いかける。
「それで、なぜあのような騒ぎになった?」
そこで、町の門の前で三人に襲われたところから、先ほどの決闘騒ぎまで順を追って説明する。
「なるほど・・・あの連中には厳しい措置が必要だな。それにしても君一人でよくあの五人を退けられたな。特に三人を相手にしたのもそうだが、<鬼殺し>のリーダ―である斧使いは戦闘力だけならCランクにも届こうかと言った実力だったが」
『まあ、なんとかなった』
「まあ、なんとかなった」
「どうなんとか何ったのだ?」
おいおい、突っ込んで来るな・・・。
『それより、魔物を狩って来たんだが、買取をお願いしたいのだが?』
「それより、魔物を狩って来たんだが、買取をお願いしたいのだが?」
「ん? ああ、どこに持ってきているんだ?」
『収納から出すぞ』
そう言って亜空間収納から魔物を次々取り出す。
カウンター前にはフォレストウルフ、ホーンラビット、キラーグリスリー、ジャイアントバイパー・・・すぐに小高い山のように積みあがった。
「お、おいおいおい! 収納魔法の持ち主なのか!? それにしてもどれだけの魔物を・・・というか、Cランクモンスターのキラーグリスリーやジャイアントバイパーまであるじゃないか!」
『解体費用は差っ引いてくれ。いくらくらいになりそうだ。ちなみにまだ魔物あるぞ』
「解体費用は報酬から差し引いてくれ。いくらくらいになりそうだ。ちなみにまだ魔物あるぞ」
「な、なに? まだあるのか? どれほどの収納量だ・・・、というか、これ全てお前が倒したのか!?」
「え、ああ、倒した?かな」
「なぜに疑問形!?」
『全部を自分で倒したわけではなく、大半は師匠のお使いで換金に来ていると言え!』
「あ、ああ、全部が全部自分で倒したわけではないんだ。大半は師匠が倒した魔物を換金するためのお使いみたいなものだ」
「し、師匠だと?」
「そうだ!我が師匠はとても素晴らしいのだ! ヤーベ殿の素晴らしさは一言では語れぬな」
「ヤーベ?」
『コラーーーーーー!! 何で名前言う!』
「あ」
「あ、ってなんだよ、あ、って。どうもオメーおかしいなぁ」
ギルドマスターがイリーナを怪しみ始めた。困ったね、どうしたもんかな・・・
と思ったら、ギルドマスターに魔力が集まる。ぐるぐるエネルギーがギルドマスターの目に宿るように感じたんだ。やっぱぐるぐるエネルギーって魔力だったんだな。相手が使うのを見るとよくわかるよ。
「ぐわわっ! 目がぁ!目がぁぁぁぁぁ!」
急に両目を抑えてどこぞの大佐の様に苦しみだすギルドマスター。どうした?
俺は眩しくないぞ?
「ど、どうしたのだ?」
「ぐうう・・・、なんだかとんでもねーな、ちくしょう」
と思ったら、再度ギルドマスターに魔力が集まる。ぐるぐるエネルギーがギルドマスターの目に先ほどよりも強く凝縮される。
そして、ギルドマスターがまるで産まれ立ての小鹿の如く小刻みに震え始める。
「?」
イリーナも怪訝な顔をする。ギルドマスターどうしたんだろ?
「お前・・・一体・・・」
そう言うと、さらにぐるぐるエネルギーが強くなり再度ギルドマスターの右目に宿る。
「ブフォッ!」
ギルドマスターが鼻血を吹く。
そして何かしら液体が滴るような音が微かに聞こえた気がした。
「ご、ごごご、53万だと・・・」
ん?ギルドマスター、何を言っているのだろう?
「どうかしたのか? ギルドマスター殿」
イリーナが不審に思ったのか問いかけるがギルドマスターはそれに答えず、
「師匠と言ったな・・・?本当に師匠がいるのか? 自分の力を隠しておきたいがための嘘ではないのか?」
プルプルしながらそれでも倒れまいと踏ん張っているように見えるギルドマスターが問い詰めて来た。
「とんでもない!本当に師匠のヤーベ殿は実在している! 理由あって町にはなかなか来られない方だが、本当にすごい人なんだ!」
なぜかイリーナが憤懣やるかたないと言った感じで捲くし立てる。
「・・・ならば連れてこい! 今すぐだ! 師匠とやらを連れてくれば信用してやる! できなかったときはお前の秘密を喋ってもらうぞ!」
・・・なるほど、イリーナの不自然な戦闘力や収納魔法やらを問い詰めたいというわけだ。どうせ師匠の存在は自分の力を隠す隠れ蓑だとでも思ってるんだろうけどな。まあ、隠れ蓑はイリーナの方なわけだが。
「むううっ! そこまで師匠のヤーベ殿を愚弄するか! いいだろう! 師匠を何としても連れて来よう。連れて来たら師匠に謝ってもらうからな!」
なぜ俺に謝ってもらう必要があるのか全く理解できないが。
『師匠を連れて来るまでに魔物の査定をしておいてもらってくれ』
「あ、師匠を連れて来るまでに魔物の査定を完了しておいてくれ。満足する値を付けてもらえないと師匠は今後この町に魔物の買い取りを出さないかもしれないぞ!」
そう啖呵を切ってギルドを出て行くイリーナ。買取にクギを指すとはなかなかやるね。それにしても、師匠って・・・どーしよう?
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