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第2章 ヤーベ、異世界を歩き始める!
第10話 子供たちと話してみよう
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今日も今日とて泉の畔で水を吸い込む俺。
でも泉を枯渇させないように水の量には気を付けないとね。
ガサガサッ
ふいに茂みから何かが出てくるような気配がしたので慌ててそちらに向き直る。
そして出てきた存在に目が飛び出るほどに驚く・・・スライムだから目ん玉ないけども。
茂みから姿を現したのは子供だった。男の子と女の子、どうやら兄妹のようだ。
(異世界初、人間遭遇キタ―――――!! こわい騎士とかじゃなくてありがトゥゥゥゥ!!)
あまりの嬉しさに不思議な踊りをくねくねと踊る俺。
・・・ちょっと女騎士とか、優しそうな、いかにもヒロインです的な美少女と出会いたかったとか、そんなことも思ったり思わなかったり・・・思ってましたけど、なにか?
でも、ぶっちゃけ脳筋冒険者とかに「魔物コロセ!」的に追い掛け回されるよりはずっとましだな。異世界初の人間エンカウントでコロセと追い掛け回されたら人間不信になる自信がある。
なにせ、地球時代だってぼっちでコミュニケーション能力に大きく疑問符のついた俺だ。
異世界初の人間には優しくしてもらいたい。ヒロインよりも、求めるは庇護! ラヴよりはカインドネス! 誰か俺を養って!
・・・いや、お初にお目にかかる幼い兄妹の愛玩魔物になる気はないが。
「にーちゃん、魔物が出てくるかもしれないから、村から遠くへ行っちゃいけないって言われてるよ・・・」
小さな少女が隣の少年の服の裾を掴んで呟く。
「どうしても水がいるんだよ、チコ。村はずっと雨が降らずに作物も枯れかけているし」
にーちゃんと呼ばれた少年が答える。
そういえば、俺がスライムになってこの森に居座ってから、雨降ったっけ? 記憶に無いな。
もっとも泉の底で沈んている期間もそこそこあったけどね。
「でも・・・、森の泉も毒で汚れてしまったって村長様が・・・」
不安げに呟くチコと呼ばれた少女。
「そう言われてたけど、井戸の水も少しずつしかもらえないし、母ちゃんの具合も良くならないし、どうしても水がいるんだ。少しでも可能性があるなら、調べてみないと」
震えるように、それでも力強く一歩一歩泉の方へ歩みを進める少年。
「カンタにーちゃん・・・」
なにっ!にーちゃんはカンタって名前だったのか!
であれば、妹はチコではなくメイちゃんであれ!(ムチャクチャ)
兄妹は俺が見えるところまで来たのだが、急に走り出し俺を素通りして泉の畔にしゃがみ込む。
「み、水が綺麗だ・・・」
「ホ、ホントだよ、カンタにーちゃん!水がキラキラしてる!」
カンタと呼ばれた少年は泉に顔を突っ込んでゴクゴクと水を飲み出した。
チコと呼ばれた少女も両手で泉の水をすくって喉を潤し始める。
「ぷはー!生き返った!」
「にーちゃんおいしいね!」
兄妹はたらふく水を飲んで満足したのか、嬉しそうに話す。
そして、ふと横を見て俺に気づく。
「わああ!」
「きゃあ!」
慌てた兄妹はしりもちをついてびっくりする。
そりゃびっくりもするか。
というか、ヒヨコや狼牙族とはコミュニケーション取ってるけど、なにせ人間と会ったのはこれが初めてだからな! ついに、人間とファーストコンタクト! く~、緊張するねぇ、子供とはいえ。
やはりここは友好的な態度で臨まなくては。
(あー俺は・・・)
って、声出ねーよ?俺。ヤベー! 久々やべちゃんヤッベー!
どうやってコミュニケーションとるよ?
「魔物か!? 見たことない魔物だ・・・。チコ、ここはにーちゃんが食い止める! お前は逃げろ!」
「にーちゃんも一緒じゃないとやだよ!」
「チコ! 早く逃げるんだ!」
ああ、仲のいい兄妹のテンプレ会話聞いててほっこりしている場合じゃないわ。
敵意が無いって教えないと可哀そうだよね。
とりあえず地面に字を書いてみるか。
ボクは悪いスライムじゃないよ・・・っと。
「な、なんだ?何か魔物が書いてるけど・・・」
「にーちゃん、字、読める・・・?」
「ばかっ! にーちゃんに読めるわけないだろ。村長かザイーデルばあさんじゃないと」
うお! 異世界教育恐るべし! 田舎の村では識字率低いか!
・・・尤も俺の書いている文字が異世界で通じているかわからんけども。
気を取り直して、ならばっ! 必殺パントマイム!
「うわっ! なんだかウネウネし出したぞ」
「ちょっとかわいいかも」
兄妹も少し落ち着いてきたみたいだけど、やっぱコミュニケーションとれねー。
ほとんど不思議な踊りだからな。どうするか?むむむ・・・
『少年よ、聞こえるか?』
俺はエネルギーをぐるぐるしながら、念話をイメージして心で語ってみようとする。
ヒヨコや狼牙族と同じく念話を試してみよう。
「うわっ!頭に声が直接響いてきた!」
「にーちゃん、あたしにも聞こえるよ」
えっ!? マジで念話成功? やった! 何でもとりあえずトライしてみるもんだね!
トライさんありがとー!(意味不明)
魔物以外でも念話って通じるのね。
『泉の水は俺様が浄化したから、とっても綺麗だぞ。いっぱい飲んでいいぞ』
「ほ、ほんと!?」
少女が嬉しそうに聞いてきた。
『ああ、たくさん飲むといい』
「あんた、水の精霊か?」
少年の問いに俺は体をデローンMk.Ⅱ型から美しいブルーのティアドロップ型へ変更する。
え? いつの間にデローン型がデローンMk.Ⅱ型へ進化したのかって? 先日デローン型で早く走れるようになった時にグレードアップと認めました・・・俺が。
「うわっ!変身した!?」
『俺は水の精霊ではないよ。だが水の精霊の力を借りて、この泉は奇跡の泉になった。お前たちにも水の精霊の恩恵があるだろう』
ちょっと言い回しが難しかったか?
「恩恵・・・?」
『例えば、この泉の水を飲めば体の不調が改善したり、体の調子が良くなったりするということだ』
「ほ、ホントか!?」
泉を見て興奮するカンタ。どうかしたのかな?
「なあ、俺たちのかーちゃんも助けてくれよ! 水をたくさん飲ませてやりたいけど、体調が悪くて起きられないんだ・・・」
そう言って俯いてしまう。
俺様は早速俯瞰イメージを起動する。
『お前たちの村はここから近いのか?』
「ああ、そんなに遠くないよ」
『村の入り口は竹の柵で囲ってあるところか?』
「え、よく知ってるな。行ったことあるのか?」
ないよ。何たってここから全くと言っていいほど動いてないからね。
ほぼヒキコモリ?
そんなわけで俯瞰イメージを拡大して空から村を観察中。
『いいや、行った事はない。それでお前たちの家はどこだ? 入口からどう行くのか説明してくれ』
俺の言葉に少年は首を傾げながらも説明してくれた。
「あ、うん。ウチは入口から入って右手の建物の三軒目のさらに奥の小さい家だよ」
『家の横に空の大甕があるな』
「そ、そうだよ! とーちゃんが生きているころは家の中にしまってあって、村の中央にある井戸に水を汲みに行ってたんだけど、とーちゃんが死んでからは、かーちゃんが力仕事していたけど、体調を崩しちゃったから、甕を家の外に出して、近所のおじさんが余裕のある時に水を汲んでくれてたんだ。でも村の井戸の水も少なくなって・・・」
『入り口を入って中央の井戸を超えた左手は大きな畑が広がっているな』
「ああ、村のみんなで畑をやっていて、作物が取れるごとに行商人が来るから、それでいろんなものと交換するんだ。でも雨が降らないから作物も育たなくて・・・」
俯きながら話す少年の瞳に涙が溜まっていく。どうにもすることのできない悔しさがあるのだろうな。
『少年、名前は?』
「えっ、ああ・・・、カンタっていうんだ」
「あたしはチコ!」
答えた少年に続いて元気よく少女も答える。微笑ましいな。
『カンタ、チコ。お前たちは約束を守ることが出来るか?』
「約束?」
『そうだ、約束だ。この泉で俺に会ったことを誰にも教えないという約束が守れるのならば、お前の家まで水を運んでやろう』
「えっ!? ホントか!」
『ああ、本当だ』
今はまだ俺の存在を村全体に知られるわけにはいかない。泉が綺麗になったことが知られれば大勢の村人がここまで押し寄せるだろうし、何より俺が討伐されかねない。
「守るよ! 約束! だから、水を届けてくれ! かーちゃんを助けてくれ!」
「チコも守る!」
『そうか、優しい兄妹よ。では俺も約束を守って水を届けよう。今日は気を付けて帰るがいい』
「うん!」
「ありがとう!」
いい笑顔だ。なんだかいい事をした気分だな。まだ何にもしてないけど。
「アンタ、なんて名前なんだ?」
「お名前、教えて?」
二人して目をキラキラ輝かせて聞いてくる。
『俺様はスライムのヤーベだ』
「じゃーな! ヤーベありがとう!」
「スライムさんありがとう!」
元気に挨拶して村へ帰っていく兄妹。
ヤーベなのかスライムなのかわからん挨拶をしてしまったな。まあいいか。
・・・・・・
『ローガ、いるか?』
『はっ!ここに』
俺が念話すると、瞬時にそばに控えるローガ。どこにいたんだろね? ほんと。忍者だね。
『あの人間の兄妹が無事に村まで帰ることが出来るよう見えない位置から守れ』
『ははっ!』
ピィ!と口から鋭い音を鳴らすと、さらに三匹の狼牙族の狼が並ぶ。
『先ほどの人間の子供たちが魔物に襲われたりしないよう守れ。気取られるな!』
『ははっ!』
三匹は風のように消える。ほんと、忍者かっての。
『ボス、村に水を持って行って恩でも売る作戦ですか?』
『まずは子供二人だからな・・・、恩ってほどでもないだろうな』
『ボスは気長ですな』
スライムだから、気が長くなったんですかね~。
俺は今日の夜村に水を運ぶため、さらに泉の水を取り込んでいった。
でも泉を枯渇させないように水の量には気を付けないとね。
ガサガサッ
ふいに茂みから何かが出てくるような気配がしたので慌ててそちらに向き直る。
そして出てきた存在に目が飛び出るほどに驚く・・・スライムだから目ん玉ないけども。
茂みから姿を現したのは子供だった。男の子と女の子、どうやら兄妹のようだ。
(異世界初、人間遭遇キタ―――――!! こわい騎士とかじゃなくてありがトゥゥゥゥ!!)
あまりの嬉しさに不思議な踊りをくねくねと踊る俺。
・・・ちょっと女騎士とか、優しそうな、いかにもヒロインです的な美少女と出会いたかったとか、そんなことも思ったり思わなかったり・・・思ってましたけど、なにか?
でも、ぶっちゃけ脳筋冒険者とかに「魔物コロセ!」的に追い掛け回されるよりはずっとましだな。異世界初の人間エンカウントでコロセと追い掛け回されたら人間不信になる自信がある。
なにせ、地球時代だってぼっちでコミュニケーション能力に大きく疑問符のついた俺だ。
異世界初の人間には優しくしてもらいたい。ヒロインよりも、求めるは庇護! ラヴよりはカインドネス! 誰か俺を養って!
・・・いや、お初にお目にかかる幼い兄妹の愛玩魔物になる気はないが。
「にーちゃん、魔物が出てくるかもしれないから、村から遠くへ行っちゃいけないって言われてるよ・・・」
小さな少女が隣の少年の服の裾を掴んで呟く。
「どうしても水がいるんだよ、チコ。村はずっと雨が降らずに作物も枯れかけているし」
にーちゃんと呼ばれた少年が答える。
そういえば、俺がスライムになってこの森に居座ってから、雨降ったっけ? 記憶に無いな。
もっとも泉の底で沈んている期間もそこそこあったけどね。
「でも・・・、森の泉も毒で汚れてしまったって村長様が・・・」
不安げに呟くチコと呼ばれた少女。
「そう言われてたけど、井戸の水も少しずつしかもらえないし、母ちゃんの具合も良くならないし、どうしても水がいるんだ。少しでも可能性があるなら、調べてみないと」
震えるように、それでも力強く一歩一歩泉の方へ歩みを進める少年。
「カンタにーちゃん・・・」
なにっ!にーちゃんはカンタって名前だったのか!
であれば、妹はチコではなくメイちゃんであれ!(ムチャクチャ)
兄妹は俺が見えるところまで来たのだが、急に走り出し俺を素通りして泉の畔にしゃがみ込む。
「み、水が綺麗だ・・・」
「ホ、ホントだよ、カンタにーちゃん!水がキラキラしてる!」
カンタと呼ばれた少年は泉に顔を突っ込んでゴクゴクと水を飲み出した。
チコと呼ばれた少女も両手で泉の水をすくって喉を潤し始める。
「ぷはー!生き返った!」
「にーちゃんおいしいね!」
兄妹はたらふく水を飲んで満足したのか、嬉しそうに話す。
そして、ふと横を見て俺に気づく。
「わああ!」
「きゃあ!」
慌てた兄妹はしりもちをついてびっくりする。
そりゃびっくりもするか。
というか、ヒヨコや狼牙族とはコミュニケーション取ってるけど、なにせ人間と会ったのはこれが初めてだからな! ついに、人間とファーストコンタクト! く~、緊張するねぇ、子供とはいえ。
やはりここは友好的な態度で臨まなくては。
(あー俺は・・・)
って、声出ねーよ?俺。ヤベー! 久々やべちゃんヤッベー!
どうやってコミュニケーションとるよ?
「魔物か!? 見たことない魔物だ・・・。チコ、ここはにーちゃんが食い止める! お前は逃げろ!」
「にーちゃんも一緒じゃないとやだよ!」
「チコ! 早く逃げるんだ!」
ああ、仲のいい兄妹のテンプレ会話聞いててほっこりしている場合じゃないわ。
敵意が無いって教えないと可哀そうだよね。
とりあえず地面に字を書いてみるか。
ボクは悪いスライムじゃないよ・・・っと。
「な、なんだ?何か魔物が書いてるけど・・・」
「にーちゃん、字、読める・・・?」
「ばかっ! にーちゃんに読めるわけないだろ。村長かザイーデルばあさんじゃないと」
うお! 異世界教育恐るべし! 田舎の村では識字率低いか!
・・・尤も俺の書いている文字が異世界で通じているかわからんけども。
気を取り直して、ならばっ! 必殺パントマイム!
「うわっ! なんだかウネウネし出したぞ」
「ちょっとかわいいかも」
兄妹も少し落ち着いてきたみたいだけど、やっぱコミュニケーションとれねー。
ほとんど不思議な踊りだからな。どうするか?むむむ・・・
『少年よ、聞こえるか?』
俺はエネルギーをぐるぐるしながら、念話をイメージして心で語ってみようとする。
ヒヨコや狼牙族と同じく念話を試してみよう。
「うわっ!頭に声が直接響いてきた!」
「にーちゃん、あたしにも聞こえるよ」
えっ!? マジで念話成功? やった! 何でもとりあえずトライしてみるもんだね!
トライさんありがとー!(意味不明)
魔物以外でも念話って通じるのね。
『泉の水は俺様が浄化したから、とっても綺麗だぞ。いっぱい飲んでいいぞ』
「ほ、ほんと!?」
少女が嬉しそうに聞いてきた。
『ああ、たくさん飲むといい』
「あんた、水の精霊か?」
少年の問いに俺は体をデローンMk.Ⅱ型から美しいブルーのティアドロップ型へ変更する。
え? いつの間にデローン型がデローンMk.Ⅱ型へ進化したのかって? 先日デローン型で早く走れるようになった時にグレードアップと認めました・・・俺が。
「うわっ!変身した!?」
『俺は水の精霊ではないよ。だが水の精霊の力を借りて、この泉は奇跡の泉になった。お前たちにも水の精霊の恩恵があるだろう』
ちょっと言い回しが難しかったか?
「恩恵・・・?」
『例えば、この泉の水を飲めば体の不調が改善したり、体の調子が良くなったりするということだ』
「ほ、ホントか!?」
泉を見て興奮するカンタ。どうかしたのかな?
「なあ、俺たちのかーちゃんも助けてくれよ! 水をたくさん飲ませてやりたいけど、体調が悪くて起きられないんだ・・・」
そう言って俯いてしまう。
俺様は早速俯瞰イメージを起動する。
『お前たちの村はここから近いのか?』
「ああ、そんなに遠くないよ」
『村の入り口は竹の柵で囲ってあるところか?』
「え、よく知ってるな。行ったことあるのか?」
ないよ。何たってここから全くと言っていいほど動いてないからね。
ほぼヒキコモリ?
そんなわけで俯瞰イメージを拡大して空から村を観察中。
『いいや、行った事はない。それでお前たちの家はどこだ? 入口からどう行くのか説明してくれ』
俺の言葉に少年は首を傾げながらも説明してくれた。
「あ、うん。ウチは入口から入って右手の建物の三軒目のさらに奥の小さい家だよ」
『家の横に空の大甕があるな』
「そ、そうだよ! とーちゃんが生きているころは家の中にしまってあって、村の中央にある井戸に水を汲みに行ってたんだけど、とーちゃんが死んでからは、かーちゃんが力仕事していたけど、体調を崩しちゃったから、甕を家の外に出して、近所のおじさんが余裕のある時に水を汲んでくれてたんだ。でも村の井戸の水も少なくなって・・・」
『入り口を入って中央の井戸を超えた左手は大きな畑が広がっているな』
「ああ、村のみんなで畑をやっていて、作物が取れるごとに行商人が来るから、それでいろんなものと交換するんだ。でも雨が降らないから作物も育たなくて・・・」
俯きながら話す少年の瞳に涙が溜まっていく。どうにもすることのできない悔しさがあるのだろうな。
『少年、名前は?』
「えっ、ああ・・・、カンタっていうんだ」
「あたしはチコ!」
答えた少年に続いて元気よく少女も答える。微笑ましいな。
『カンタ、チコ。お前たちは約束を守ることが出来るか?』
「約束?」
『そうだ、約束だ。この泉で俺に会ったことを誰にも教えないという約束が守れるのならば、お前の家まで水を運んでやろう』
「えっ!? ホントか!」
『ああ、本当だ』
今はまだ俺の存在を村全体に知られるわけにはいかない。泉が綺麗になったことが知られれば大勢の村人がここまで押し寄せるだろうし、何より俺が討伐されかねない。
「守るよ! 約束! だから、水を届けてくれ! かーちゃんを助けてくれ!」
「チコも守る!」
『そうか、優しい兄妹よ。では俺も約束を守って水を届けよう。今日は気を付けて帰るがいい』
「うん!」
「ありがとう!」
いい笑顔だ。なんだかいい事をした気分だな。まだ何にもしてないけど。
「アンタ、なんて名前なんだ?」
「お名前、教えて?」
二人して目をキラキラ輝かせて聞いてくる。
『俺様はスライムのヤーベだ』
「じゃーな! ヤーベありがとう!」
「スライムさんありがとう!」
元気に挨拶して村へ帰っていく兄妹。
ヤーベなのかスライムなのかわからん挨拶をしてしまったな。まあいいか。
・・・・・・
『ローガ、いるか?』
『はっ!ここに』
俺が念話すると、瞬時にそばに控えるローガ。どこにいたんだろね? ほんと。忍者だね。
『あの人間の兄妹が無事に村まで帰ることが出来るよう見えない位置から守れ』
『ははっ!』
ピィ!と口から鋭い音を鳴らすと、さらに三匹の狼牙族の狼が並ぶ。
『先ほどの人間の子供たちが魔物に襲われたりしないよう守れ。気取られるな!』
『ははっ!』
三匹は風のように消える。ほんと、忍者かっての。
『ボス、村に水を持って行って恩でも売る作戦ですか?』
『まずは子供二人だからな・・・、恩ってほどでもないだろうな』
『ボスは気長ですな』
スライムだから、気が長くなったんですかね~。
俺は今日の夜村に水を運ぶため、さらに泉の水を取り込んでいった。
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