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外堀
しおりを挟む『僕、今年の魔法学園卒業試験の試験官に選出されました~。どうぞよろしくお願いしますね。今年は豊作の予感がしていて今からとても楽しみです。エマさんは相変わらず勉強熱心でいらっしゃるご様子。僕も負けていられませんね。お互い、良い研究ライフを』
『あ、最後になりましたが、お誕生日おめでとうございます。僕、人が集まるところは苦手なので……今度二人きりでお祝いさせてほしいですね。どうでしょうか。良い返事をお待ちしています』
フェリクスの声を発する紙は「それでは~」と文字通りヒラヒラと手(?)を振った後、綺麗に折り畳まって元の手紙の形へと戻っていった。
風に乗ってエマの手に舞い降りる手紙。
差出人は言わずもがな、先程雄弁に語り、最後にはデートの誘いまで入れてきたフェリクス・サースティンである。
「「…………」」
「ちゃんと渡したからね」
「………はい」
色々とツッコミどころはあるが、最重要事項はどう考えても卒業試験についてだ。
エマが適当にやって、適当に落ちようと思っているアレだ。
現在学力テストをザ平均点数で並べているエマは、ユーリにそれはもうチクチクチクチクと棘を刺されている。
最初は「体調が悪かったの?」と心配してくれたりしたのだが、段々と「真面目にやってる?」「ねぇ、何やってんの?」などとお怒りモードに入り、今では、
『何を企んでるのか知らないけど、精々足掻けば』
と、全力で取り組まないエマに軽蔑の眼差しさえ向け、そう言い放った。
かなり、怒らせてしまっている。
しかし婚約破棄はまだ成されていないし、お茶会も変わらず行われる。
エマにとっては心底謎でしかなかった。
ユーリもそうだが、フェリクスもなかなかに厄介だった。
如何せん彼との交流は非常に勉強になる為、未だ時折温室で会って話すことがある。
質問をすればわかりやすく解説してくれるし、逆にフェリクスの研究話の聞き手になることもある。
そうしているうちに「エマさんがワーズに来るのが楽しみです」なんて言われることが多くなり、その度に否定を入れるがイマイチ届いている感触がない。
┄┄まぁ、流石に無理やりコネ入所、なんてことになったりはしないはず。
…しないよね……? と一抹の不安を抱えているエマである。
余りにも周りがグイグイとワーズ行き当たり前といった様子で扱ってくるせいで、世界観を守るための抑制力的なものが働いているのでは、と勘繰っているのだ。
そうなると、もはや太刀打ちはできない。
「ぐぬぬ~~~~~」
「あーあ、アンタらのせいで、またこの人よくわかんないモードに入っちゃったじゃないですか」
「フェリクスのせいでしょ。オレは関係ないよ~」
アルは笑いながらエマの頬をブスブスと指で突いている。
もはやそんなことは気にしている余裕もなく、エマは半年後に控えた『卒業試験』に怯えているのだった。
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