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日中、ご主人様は執務室で書類仕事をされているらしい。まだわたしと大して歳も変わらないのに、大変だなって思った。お茶でも出そうかと言ってみたけど、わたしがいると気が散るからと言われて追い出されてしまう。
それどころか部屋からは出ないようにと言いつけられてしまった……ちなみにご主人様の部屋は入ってもいいらしい。
一体どういう意図なんだろう……そう考えていた時、サヨさんから謎の伝言をもらっていた。
「今日は夜に仕事を頼みたいから今のうちに休んでおくようにとご主人様からの言付けを預かっております」
一体なんの仕事だろうか、わたしにもできるのだろうか。
ドキドキしながらソファで本を読み、いつの間にか眠ってしまった。
チリーン
あ、お呼び出しだ。
部屋の隅の扉を開け、ベッドのあるところへ行ってみたけれど誰もいない。もう一つのご主人様の部屋へ続く扉を恐る恐る開けてみると、彼が立って待っていた。
「あれ、服着てないの。これ着て」
クローゼットを開けたご主人様は他所行きのワンピースをわたしに手渡してくれた。なんでご主人様の部屋に女性もののワンピースが……? それにサイズピッタリ。
不思議に思いながらも袖を通す。そのまま部屋の本棚の裏にあった隠し扉を通った。真っ暗で何も見えなくて恐る恐る歩くわたしの手をご主人様は握ってくれて、わたし達は歩いていった。
「わぁ、お外ですか?」
この屋敷に来てから部屋から出ることは許されておらず、外なんて窓から眺めるくらいだったのだ。久しぶりの外の景色に感動してしまって、足を止めて綺麗な空気を吸った。
「……楽しい?」
「はい。空気が美味しいです」
そのままわたしは手を引かれて、暗い森の中を歩いていく。真っ暗でわたしには何も見えないけれど、彼にはしっかり見えているみたい。遅れないようについていくと突然開けた場所に辿り着いた。
「……綺麗」
思わず呟いてしまうほど綺麗な星空。地面に寝そべって眺めると顔に振ってきそうなほどたくさんの星が輝いている。
こんなに大きな空を見ていると悩んでいてもちっぽけだなぁって思えて、前向きになれる。
「気に入った?」
「……はい」
わたしと一緒に寝転がっているご主人様はわたしの頭をそっと撫でてくれる。あれ、侍女はご主人様の前で寝転がっちゃいけないのか。そいえば昔読んだ小説にも書いてあった……!
慌てて飛び起きて、「申し訳ありません」っていったら、彼はキョトンとした表情で「何が? もう少し寝てていいよ」って言ってくれた。
ご主人様がいいと言ってるならいいのだろう。そう思うことにして、夜空をいつまでも眺めた。
「くしゅんっ」
だいぶ冷えてきたみたいで体を起こしさする。そんなわたしを彼は笑っていて、上着をかけてくれた。
「そろそろ帰ろう」
差し出された手を握って部屋に戻る。その手はとっても暖かかった。
部屋に戻ったわたしは借りた服を脱いで、寝室へ向かう。そこでご主人様の食事を終えて、二人で休んだ。
ご主人様の食事になって、時々あの場所に連れていってくれて、一緒に星空を眺める。
そんな日々が数年にわたって続いていた。
ご主人様は十六歳、わたしは十四歳になった。
どうやら学園と呼ばれるところに通うことになるみたい。ご主人様の家からは遠いみたいで、寮に入るみたい。本当は使用人は連れて行けないみたいだけど特殊な事情もあって、わたしだけ特別に連れていってくれるみたい。
サヨさんにメイド服を詰めてもらって、ご主人様と馬車に乗り、学園へと向かった。到着した頃には真っ暗で、誰もいない。ご主人様に「どうしてこんな夜に?」って聞いてみたけど、「見せたくないから」ってよくわからないことを言ってた。どういうこと?って聞いても教えてくれなかった。
というかこの学園、どこかでみたことあるような……
ご主人様に手を引かれて寮の部屋へと連れてこられた。そこには大きな部屋が二つと侍女用の部屋が一つ。
ご主人様の荷物を運ぼうとしたけれど、止められてしまった。首を傾げたわたしに彼は「部屋から出ないように。自分の荷物だけでいいよ」って言ってくれた。
ご主人様の言葉通り従っている間にもう荷物を運び終えたみたい。仕事が早いな。
わたしはというとご主人様に連れられて彼の寝室へ向かっていた。
「いいかいアメリア。俺が連れ出す時以外はこの部屋から出ないこと。食事は俺が運ぶから。それと、寝るときはここで寝ること」
ご主人様の言葉にわたしは頷いた。
それから食事を終えて眠りにつく。最近ではご主人様の抱き枕になってしまっていて、少し恥ずかしい。そんなわたしに気づいているのかわざと髪を触ったり頬に触れたりして反応を見てはとてもいい笑顔で笑っている。
それに、ご主人様はすごく背が伸びた。顔立ちもなんだか男らしくなっていて、ドキドキしてしまっていた。
特に変化があったのは血を吸われている時。なんだかむずむずする感じからだんだん気持ち良くなっていく。変な声まで漏れそうになって、必死に我慢しているのだ。
なんだかはしたない感じがして、必死に口を塞ぐけど「声」って一言ご主人様に言われて諦める他なかった。
それどころか部屋からは出ないようにと言いつけられてしまった……ちなみにご主人様の部屋は入ってもいいらしい。
一体どういう意図なんだろう……そう考えていた時、サヨさんから謎の伝言をもらっていた。
「今日は夜に仕事を頼みたいから今のうちに休んでおくようにとご主人様からの言付けを預かっております」
一体なんの仕事だろうか、わたしにもできるのだろうか。
ドキドキしながらソファで本を読み、いつの間にか眠ってしまった。
チリーン
あ、お呼び出しだ。
部屋の隅の扉を開け、ベッドのあるところへ行ってみたけれど誰もいない。もう一つのご主人様の部屋へ続く扉を恐る恐る開けてみると、彼が立って待っていた。
「あれ、服着てないの。これ着て」
クローゼットを開けたご主人様は他所行きのワンピースをわたしに手渡してくれた。なんでご主人様の部屋に女性もののワンピースが……? それにサイズピッタリ。
不思議に思いながらも袖を通す。そのまま部屋の本棚の裏にあった隠し扉を通った。真っ暗で何も見えなくて恐る恐る歩くわたしの手をご主人様は握ってくれて、わたし達は歩いていった。
「わぁ、お外ですか?」
この屋敷に来てから部屋から出ることは許されておらず、外なんて窓から眺めるくらいだったのだ。久しぶりの外の景色に感動してしまって、足を止めて綺麗な空気を吸った。
「……楽しい?」
「はい。空気が美味しいです」
そのままわたしは手を引かれて、暗い森の中を歩いていく。真っ暗でわたしには何も見えないけれど、彼にはしっかり見えているみたい。遅れないようについていくと突然開けた場所に辿り着いた。
「……綺麗」
思わず呟いてしまうほど綺麗な星空。地面に寝そべって眺めると顔に振ってきそうなほどたくさんの星が輝いている。
こんなに大きな空を見ていると悩んでいてもちっぽけだなぁって思えて、前向きになれる。
「気に入った?」
「……はい」
わたしと一緒に寝転がっているご主人様はわたしの頭をそっと撫でてくれる。あれ、侍女はご主人様の前で寝転がっちゃいけないのか。そいえば昔読んだ小説にも書いてあった……!
慌てて飛び起きて、「申し訳ありません」っていったら、彼はキョトンとした表情で「何が? もう少し寝てていいよ」って言ってくれた。
ご主人様がいいと言ってるならいいのだろう。そう思うことにして、夜空をいつまでも眺めた。
「くしゅんっ」
だいぶ冷えてきたみたいで体を起こしさする。そんなわたしを彼は笑っていて、上着をかけてくれた。
「そろそろ帰ろう」
差し出された手を握って部屋に戻る。その手はとっても暖かかった。
部屋に戻ったわたしは借りた服を脱いで、寝室へ向かう。そこでご主人様の食事を終えて、二人で休んだ。
ご主人様の食事になって、時々あの場所に連れていってくれて、一緒に星空を眺める。
そんな日々が数年にわたって続いていた。
ご主人様は十六歳、わたしは十四歳になった。
どうやら学園と呼ばれるところに通うことになるみたい。ご主人様の家からは遠いみたいで、寮に入るみたい。本当は使用人は連れて行けないみたいだけど特殊な事情もあって、わたしだけ特別に連れていってくれるみたい。
サヨさんにメイド服を詰めてもらって、ご主人様と馬車に乗り、学園へと向かった。到着した頃には真っ暗で、誰もいない。ご主人様に「どうしてこんな夜に?」って聞いてみたけど、「見せたくないから」ってよくわからないことを言ってた。どういうこと?って聞いても教えてくれなかった。
というかこの学園、どこかでみたことあるような……
ご主人様に手を引かれて寮の部屋へと連れてこられた。そこには大きな部屋が二つと侍女用の部屋が一つ。
ご主人様の荷物を運ぼうとしたけれど、止められてしまった。首を傾げたわたしに彼は「部屋から出ないように。自分の荷物だけでいいよ」って言ってくれた。
ご主人様の言葉通り従っている間にもう荷物を運び終えたみたい。仕事が早いな。
わたしはというとご主人様に連れられて彼の寝室へ向かっていた。
「いいかいアメリア。俺が連れ出す時以外はこの部屋から出ないこと。食事は俺が運ぶから。それと、寝るときはここで寝ること」
ご主人様の言葉にわたしは頷いた。
それから食事を終えて眠りにつく。最近ではご主人様の抱き枕になってしまっていて、少し恥ずかしい。そんなわたしに気づいているのかわざと髪を触ったり頬に触れたりして反応を見てはとてもいい笑顔で笑っている。
それに、ご主人様はすごく背が伸びた。顔立ちもなんだか男らしくなっていて、ドキドキしてしまっていた。
特に変化があったのは血を吸われている時。なんだかむずむずする感じからだんだん気持ち良くなっていく。変な声まで漏れそうになって、必死に我慢しているのだ。
なんだかはしたない感じがして、必死に口を塞ぐけど「声」って一言ご主人様に言われて諦める他なかった。
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