設定めちゃくちゃな乙女ゲームのモブに転生したら、何故か王子殿下に迫られてるんですけどぉ⁈〜なんでつがい制度なんてつくったのぉ

しおの

文字の大きさ
上 下
19 / 30
本編

19.例の場所っ

しおりを挟む
 カタカタと乗り心地の良い馬車に乗り、時折降りて休憩しながら王家所有の別荘へとたどり着いた。
 着いた時にはもう夜も更けていて、今日はゆっくり休もうということになり、それぞれ割り当てられた部屋でゆっくり休むことになった。



「おはよう、ルシア」
 ベッドで眠っていたわたしは誰かの声で目を覚ます。そこにはとろけたような瞳のシエル様。眠たい目を擦って「おはようございます……」と挨拶したところで、シエル様はノーラ様と別荘にいた侍女に追い出されていた。
 あ、そうか。普通寝起きの女性の部屋に入るなんてありえないもんね……
 なんて呑気に考えているうちに手早く侍女に着替えさせられた。さすが王家の侍女だ。手際が違う。
 そしてリビングにきたわたし達は朝食を仲良く食べるのであった。


 わたしを真ん中に、シエル様とノーラ様と手を繋いで歩く。前回頭痛で倒れてしまったこともあってか、後ろにはぞろぞろとたくさんの人が来ていて、もし周りに人がいたら異様だと思われるだろう。
 まあ、王家所有の地だからあまり周りに人は居ないんだけれど。
 段々と見覚えのある風景が近づいてくる。ツキン、ツキンとちょっとずつ痛み始める頭。
 そしてある場所でシエル様は足を止めた。
「大丈夫?」
 眉を顰めているわたしを心配そうに見つめる彼。「大丈夫」といって、その風景をじっと見つめてみる。
「ここはね、八年前にとある事件が起こった場所なんだ……何か覚えてる?」
 八年前。八年前ならわたしは八歳だ。八歳……
 痛む頭を抱えながらも必死に思い出そうとする。めまいもして真っ白になった頭の中にある情景が浮かんだ。
 たくさんの子ども達。わいわいお話ししたり遊んだり。お茶を飲んだり。その中にわたしは立っていた。
 隣にはシルエットだけの……男の子? わたしはなんだか楽しい気持ちだったと思う。うきうきしているのが伝わってくる。
 ぐるりと場面が変わる。今度はシルエットだけの女の子が目の前に立っている。隣には、気を失っているのか動かない男の子。
 その女の子はわたしに何かを手渡す。その手渡されたものをわたしは飲んだ。
 そこで意識は途切れた……



「あれ……」
 パチリと目を覚ますとわたしは横になっている。周りを見渡すと一面の緑。どうやらまだ外のようだ。
 意識がはっきりしてくる。わたしは膝枕されているようだ。上を見ると心配そうなシエル様。
 ああ、わたし、シエル様に膝枕されてるんだ……
 体を起こそうとしたけど、それは彼の腕で止められていた。
「もう少し休んで。今馬車を向かわせてるから」
 そうか、まだ少し頭が痛い。わたしの瞼は重くて、すぐに目を閉じた。




「やっぱり僕は思い出してもらいたくない。それで彼女の心が手に入るのだとしても」
「でも、それじゃあダメだと思うわ。ルシアにとっても、シエル、あなたにとっても」
「でも、彼女に辛い思いは……」
「それを決めるのはルシアよ、あなたじゃない」
「……」
 そう、これはわたしが決めたこと。だからそんな悲しそうな顔をしないで。
 大丈夫。きっと大丈夫だから……





 パチリと目を覚ます。妙にスッキリした気分だった。あの記憶のシルエットは誰かわからないけれど、わたしはとある女の子に薬を飲まされた。どこかはわからないけれど、そばには同じくらいの男の子がいた。
 それだけははっきりと思い出した。
「ルシア。大丈夫? 最近これしか言っていない気がするね」
 苦笑しながら優しく髪を撫でてくれる。どうしてこんなに安心するんだろう。両親とは違う安心感。これは一体なんなんだろう。
 心地いい。
「もっと撫でて」
 全ての不安が消し飛ぶような気がする。もっと撫でて。もっとわたしを安心させて。
 とろとろの目でわたしをたくさん撫でてくれる。こんな時間がもっと続けばいいのに。
 ――どうして? どうしてそう思うの? 思い出して……


 やっと起きたわたしは、激しい頭痛の最中に思い出した記憶について話した。二人ともなんだか悲しそうな、辛そうな表情をしていたけれど。
 きっと心配しているだけねなんて、呑気に考えていた。



「さて、次はどうする?」
 そうか、次の手がかりが掴めていないのか。「んー……」と考え込むわたし。
「あそこで開かれていたお茶会の参加者って、誰ですか? 学園にいた人たちには何も感じなかったから会ったことない人な気がするんですけど……」
 あの場所はあれ以上いることはできないだろう。二度も倒れてしまったのだ。あまり迷惑もかけられないし、わたしの謎の感覚が違うといってる気がする。
「わかった。今すぐ王宮で調べさせるよ。キース、頼んだ」
「はい」
 突如現れたキース様にびっくりしているうちに彼はいなくなった。忍者かな……?
 なんだかよくわからないことになっているけど、わたしは周りに恵まれているらしい。だからこそ記憶を探すことを決断できたのだ。
「ありがとう、シエル様、ノーラ様。これからも迷惑かけるかもしれないけれどよろしくね」
 その言葉に三人で笑い合った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

21時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢に転生したはずなのに!?

21時完結
恋愛
現代日本の普通一般人だった主人公は、突然異世界の豪華なベッドで目を覚ます。鏡に映るのは見たこともない美しい少女、アリシア・フォン・ルーベンス。悪役令嬢として知られるアリシアは、王子レオンハルトとの婚約破棄寸前にあるという。彼女は、王子の恋人に嫌がらせをしたとされていた。 王子との初対面で冷たく婚約破棄を告げられるが、美咲はアリシアとして無実を訴える。彼女の誠実な態度に次第に心を開くレオンハルト 悪役令嬢としてのレッテルを払拭し、彼と共に幸せな日々を歩もうと試みるアリシア。

【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス
恋愛
 家庭にも学校にも居場所がない女子高生の花梨は、ある日夢で男の子に出会う。  その日から毎晩夢で男の子と会うが、時間のペースが違うようで1ヶ月で立派な青年に?  ある日、龍の娘として治癒の力と共に、成長した青年がいる世界へ行くことに! 「ヴィラ(青年)に会いたいけど、会いに行ったら龍の娘としての責任が!なんなら言葉もわからない!」  混乱しながらも花梨が龍の娘とした覚悟を決めて、進んでいくお話。 ※こちらの作品は2007年自サイトにて連載、完結した小説です。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...