借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの

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「んんっ」
 なんだか違和感を感じて目を覚ます。あれ、ピンクじゃない……
 というかカタカタ音がする。これ馬車に乗ってる……?
 というか口に何か巻かれてて喋れない。周りを見渡すけど、窓には布が貼られているのか真っ暗だ。
 一体何が起こっているんだろう……
「んっ」
 もう一人誰かいる気がする……
 もしかしてルージェちゃん⁈
「んんんーっ」
「ん⁈」
 手足は自由なようだ。手探りでルージェちゃんを探す。いたっ。
 とりあえず二人で身を寄せる。なんとか会話できないかと思い、彼女の背中に日本語で文字を描く。
 こっちの言葉長いし、判別しにくい。日本語のほうがわかりやすいんだよね。
『何があったか覚えてる?』
 ひらがなで会話する。ちょっとくすぐったいけど、そこは我慢だ。わたしの問いかけにルージェが答える。
『わかんない。寝てたと思うんだけど……寝てる間に連れ出された気がする』
『とりあえず、大人しくしておく?』
『そうだね』
 二人寄り添っていると、馬車の扉が開かれた。全身真っ黒な服を着た男二人がわたし達を乱暴に連れ歩く。
 閉じ込められたのはとある屋敷だった。ずいぶん豪華な屋敷だ。大きさこそ小さいけれど、装飾品や作りが高位貴族のものと酷似している。
 一体誰が……
 そんなことを考えながら連れられた部屋に二人揃って放り込まれる。ガチャリと外から施錠されてしまい、どうやら監禁されるようだ。
 二人で口の布をとる。
「あ、最初から布外せばよかったね」
「そういえばそうだね」
 二人でくすくす笑い合った。気が動転しているとどうも抜けてしまうようだ。まぁ、日本での記憶があるわたし達はこの世界の霊嬢達よりも逞しいのだ。


「され、どうしようかルージュちゃん」
「んー、とりあえず、抜け道がないか探してみる?」
「そうね」
 冷静に抜け出す算段を立てるために捜索する。多分こういう屋敷にはお約束の抜け道が必ずあるはずだ。
「あ、あった!」
 ベッド下に切れ目を見つけどかしてみると階段があった。その先もどこかに繋がっているようだ。
「どうする? 見てみる?」
 その時扉の鍵が外される音がして慌てて布をつけて怯えているふりをした。

 入ってきたのはすらっというよりはガリガリの男。茶色の髪に緑の目。誰だろう……なんて首を傾げているとこっちへ近づいてくる。
「ローズ、久しぶりだねぇ。会いたかったよ」
「え、誰……?」
 いけない、思わず素で答えてしまった。というか本当に誰?
 茶髪の男は目を釣り上げている。やば、地雷踏んだ?
「そうか、そこまであの男に……」
 ああぁぁぁぁっ。やばい、やばい、やばい……刺激してしまった……
「洗脳されているんだな。その洗脳が解けるまでしばらく待とう」
 ……ん? なんかわかんないけど、よかった……のかしら。
「ああ、なんかおまけ付きか。お前は一週間後だからな。それまではせいぜいローズと一緒にいることを許してやろう」
 そう話し、茶髪の男はさっていった。ちゃんとガチャリと鍵をかけて。


 色々ツッコミどころはあるけど……
「とりあえず、あの茶髪誰?」
 ルージェちゃんに聞いてみる。なんだか面識ありそうだったから知ってるかなーと思って。
「あれが、アントニー・ボイルよ。ローズちゃんに婚約申し込んでたんでしょ? 面識なかったの?」
「ないわ。あったこともないと思うんだけど……」
 なるほど。それであの発言なのか。ということは今は図らずして囮になってしまったということね。もしかしたらうまく捕まえられるかも……
「ローズちゃん……あんまり変なこと考えないでよ? 無茶させたらわたしがウィリアム様に殺される……」
 うっ……ルージェちゃんに迷惑はかけたくない……
 それより気になっていることがある。
「ローズちゃん、一週間後って……?」
「あー、あれ多分売られるんだと思う。前回それから逃げたから……」
 ええー⁈
 あの人身売買とかってやつかしら……
 どうしよう、早くなんとかしないと。
「アタシよりローズちゃんの方が心配だよ。あいつの目やばい。何されるかわかんないよ。もしかしたら無理矢理手篭めにされるかも……」
 ゾクリとした。あれって、そういう意味なの……?
 いやよ。ウィル以外に体を許すなんて。


「とりあえず、あの秘密の通路見てみようか」
 ルージェちゃんの言葉に同意し、適当に明かりを見つけて通路を降りていく。突き当たった先は外のようだ。それも門の外。
 でも一応、部屋に戻ることにした。あまり早く出ても彼らが近くまで来ていなければすぐに捕まるだろう。
「作戦会議をしようよ。まだ時間もありそうだしね」
  
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