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番外編sideウィリアム

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 俺には小さい頃から好きな女の子がいる。
 その女の子は皆に馴染めず一人でいたに声をかけてくれて、僕の欲しい言葉をくれて。
 あの日から君のことが大切で、幸せにしてあげたくて、できることなら僕が幸せにしたくて。
 君の望むことはなんでも叶えたくて。
 その日から僕は変わった。頼れる男になりたくて、僕からに変えて、口調も変えて。
 強い男になるために厳しい訓練を受けて、体を鍛えて。
 それからお金も稼いだ。
 年齢を誤魔化してギルドに所属して、高位クエストを受けまくっていつの間にかS級に昇格して。
 それをきっかけに、人脈の幅が広がった。
 この世界にはまだ、人間を脅かす獣がたくさんいて。
 それを討伐することで、王家に目をつけられて。
 王族からの任務をこなすことでさらにお金を集めた。


 うまく行かなかったのはローズのことだけ。
 小さい頃からローズの父に婚約の約束をしていた。すぐに婚約しなかったのは、彼女の心が欲しかったのもあるけど、俺の中にあるこの感情のタガが外れてしまいそうだったから。幼い体に無理をしいたくない。
 婚約しないことが俺のリミッターにもなっていた。
 それから、ただの幼馴染じゃないだろって言われることだって、彼女にとっての当たり前になるように努力した。
 彼女へ縁談の話が来た時だって、向こうを脅して破断にした。
 それでもなかなか彼女は落ちてくれなくて、だんだん焦っていた。
 彼女の家が負債を抱えたときはどうしようもできなかった。お金なんて余るほどあるのに、彼女は頑なに首を縦に降らなかった。
 いくら大丈夫って言っても自分で働くと利かなくて。仕事の紹介はマクルトに頼るよう言いつけて、働き出したらこっそり監視して警備して。
 怪しいやからが近づいてきたら、問答無用で片付けて。
 こっそり彼女のことを守り続けてきた。


 大きな借金を抱えたとき、それでも俺には相談してくれなくて。頼ってもらえないことが苦しくてイラついて。
 借金の額からしても仕事の選択肢は体を売るほかなくて。脅しのつもりで娼館を勧めてもらったら、あっさり頷いて。
 思わず自分の感情が爆発してしまって。それでも彼女は俺に助けを求めてくれなかった。

 それから彼女が勤める予定の娼館のオーナーになった。ちょっと高い買い物だったけど、利益も得られるし、彼女を守ることができる。
 そんななかマクルトに言われたんだ。


「お前ら不器用すぎなんだよ。ちゃんと自分の気持ち伝えてやれ。あいつは素直じゃないんだから、無理矢理聞きださねぇとお前にはなんも言えねぇよ」


 そうか。
 なんでうまくいかないんだって悩んでたってそりゃ解決するわけない。相手に求めてばかりで、自分からは一切気持ちを伝えてなくて。
 自分はこんなにやってる。気づいてなんて言葉で伝えなきゃ届くはずがなくて。
 だから俺は決めたんだ。
 この溢れ出る気持ちを君に伝えるって。
 そこからのことは後から考えよう。



 仮面をつけている彼女には俺の表情はわからない。だからこそ余計に素直に気持ちを打ち明けられた。その時だけは彼女は素直に俺を受け入れてくれて。
 本当によかったと思う。
 それからお節介焼きのマクルトが彼女に聞いてくれて。
 もう俺たちの間に障害なんてなくて。その日、娼館で彼女を追い詰めて。
「結婚したかった」
 って彼女の言ってもらえて。今までの人生の中で一番嬉しかった。

 気になることもあって、それにかこつけて一緒に住むための別荘を準備して。
 同棲生活を始めた。
 一緒に寝て起きて。お茶を飲んで話して。ご飯も一緒に作って。
 マクルトが邪魔だったけど、仕方なかった。ストッパーが外れないためには必要だった。
 でも時々彼女に触れたくて。娼館に連れ出した。彼女から好きってきいて、舞い上がって。
 それでも一線は超えてはいけないと思って自制して。
 彼女が寝ている間に自分を慰めて、仕事して。


 訳のわからない手紙からある程度のことが推測できた。俺と彼女の間に割り込もうとする邪魔者。
 彼女を危険に晒す可能性のある邪魔者。どうやって消してやろうかと考えていると、王太子殿下から手紙が届く。

 ヤるのはダメだ。王家に処罰を任せてほしい。それと一度話をしよう。

 あの二人は裏で色々やらかしているらしい。だから身柄は寄越せとのことだった。けれど、もし彼女に危害が加えられたなら、その時は好きにしていいと。

 いささか不満だが仕方ない。
 彼女には綺麗なもの、好きなものだけ見ていてほしい。
 汚いものは俺が全て目に入る前に消してやる。


 そのまま彼女の家に向かい、正式な婚約の申し込みをする。彼女の父は快く受け入れてくれた。
 そのまま初めて彼女と出会った庭に行って。
 プロポーズをして。

 そのまま娼館へ行って、彼女の初めてを奪って。
 あんな恥ずかしがりの君からえっちな言葉をたくさん聞けて、優しくしたかったのに、今までの全てが爆発してしまって。自分がなかなか抑えられなくて。
 でも、それでも、幸せだと思った。 
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