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 例の隠し通路を使うかと思ったけど、あれは非常時用にしたらしい。娼館で何かあった時はそれを使ってここまで逃げればマクルトがいるからなんとかなるということだそうだ。
 馬車に乗り、あちこち遠回りして娼館に着く。
 肩を抱かれ、連行される様はぱっと見恋人同士だ。なんだか気恥ずかしくなる。

「何照れてんの?」
 図星を刺されたわたしはツンと横を向いて誤魔化すことにした。


 いつもの部屋に入り、着替えをしようと部屋に入ろうとしたけど彼に止められてしまった。
「着替えなんていらないでしょ。はい、こっちね」
 彼はソファに座り、わたしは向かい合わせて座らされる。
 お互い顔が見える状況にわたしは思わず顔を逸らす。
 そんなわたしの後頭部に手を当て、彼と見つめあう位置まで顔を向けられる。
 もうとりあえず、恥ずかしい。ドキドキしてしまって落ち着かない。



「さて、可愛いローズ。君に質問をしようか」
 彼の言葉にピクリと体がはねる。また、キスされる。
 早く答えないと……
「そんなに身構えないでよ。君の好きな人は誰?」
 ……えっ
 これは、実質告白じゃない。え、言わなきゃダメ……?
「答えないは許さないよ。さ、早く」
 どんどん腕に力が入っているのがわかる。その度に彼の体にわたしが近づいていく。
 腹を括ろう。
「わ、たしは、ウィルが好きなの」
 その瞬間唇に吸いつかれる。
「ん、んんーっ」
 ちょっと! 答えたらしないんじゃなかったのー?
「やっと言ったな」
 その時の彼は今まで見た中で一番の笑顔で、なんだか幸せを感じてしまった。

 そのままぎゅっと抱きしめられて、肩に顔を埋められて。
「俺もローズがこの世で一番好きだよ」
 なんて耳元で囁かれたら、もうどうなってもいいって思うじゃない。
 体に入っていた力が徐々に抜けていって。
 気がついたら彼にしなだれかかっていた。



 どれくらいそうしていたんだろう。
 気づいた頃にはベッドに二人横になっていて、後ろから抱きしめられていた。
「あ、あのっ」
「まだ婚約もしてないからね。最後まではしないよ」
 いやそうじゃなくて!
 この世界は貞操は結婚するまで守らなければいけないと言われていて、貴族たちは結婚式の初夜でなければ致さないらしい。
 大抵はキスやハグまでが普通で、それ以外は性的行為と見做みなされている。
 くるりと向きを変えられて、ちゅ、ちゅと顔中にキスの雨が降り注いで、恥ずかしい。
「あっ、や」
 真っ赤になった耳までキスされて、音がダイレクトに聞こえてきて思わずぶるりと体が震える。

「本当、耳弱いね」
 彼の言葉にさらに耳を赤く染める。
 今度は舌で舐められて、もう頭がぼんやりする。
「あっ」
 思わず漏れ出る声が恥ずかしい。手で口を隠そうとしたけど、その手を掴まれる。
 もうこうなってはされるがままだ。
 諦めることにした。
 目がとろんとする。それと同時になんだかあそこが疼いてくる感じがして。
 足をもじもじと動かす。
 それに気づいた彼はくすくす笑って。
「感じちゃった?」
 って意地悪な顔で聞いてくる。
 必死に顔を横に振るけど、彼の行動にぴたりと止めてしまった。

 スカートを捲り上げて下着に触れる。不浄の所に下着の上から手で触られた。
「やだ、そこやだ……」
 再び嫌々と顔を振るけど彼はそんなのお構いなしのようだ。
 したから上につーっと撫でる。
 途端に体がピクっと反応してしまった。
「あっ」
 何度もなぞられて、次第に何かが溢れてくる感覚がする。
「いっぱい濡れてるね」
「濡れ……?」
 彼の言葉に首を傾げていると彼は器用に下着を脱がせた。
 空気に触れて変な感覚だ。
「ちょ、脱がさないでぇ」
 そんなわたしの言葉を無視して今度は直接彼の指が触れる。
 さっきの気持ちよかったところを執拗に責められ、声が漏れる。
「あっ、そこ、やだぁっ」
 ニヤリと笑った彼はわたしの唇を塞ぐ。
「ん、んっ、んんーっ」
 下半身に力が入らなくてビリビリ痺れてくる。
 次の瞬間、何かが脳まではしり、火花が散る。体が跳ねてあそこがピクピクしているのを感じた。
「上手に達したね」
 にこにこしながら頭を撫でてくる彼を無償に殴りたくなったけど、体に力が入らなくて諦めた。

 彼は清潔な布を持ってきて不浄の場所を清めようとしたけれど、恥ずかしいので自分でやるといい布を奪い取った。
 拭き取っている様子を彼はじっと眺めていて、本当に嫌だった。
 ちなみに汚れた下着は彼がポケットに入れていて、わたしは衣装部屋に用意されていた下着を履いて帰ることにした。
 下着を取り戻そうとしたんだけど、彼に叶うはずもなく。
「これは俺の」
 いや、確かに屋敷に用意されていたものだったから、元を正せば彼のものだけど、けど!
 わたしの何かがついている下着なんて、本当に嫌なんだけど……

 疲労感が襲ってきて、馬車の中でうとうとしていたわたしを彼は横抱きにして部屋へ連れていってくれた。
 思い返せば屋敷では一切手を出されていない。
 マクルトがいるのもあるだろうけど、その辺は紳士的というかなんというか。
 彼の中には何か変な基準があるのだろう。
 そのまま眠ってしまった。  
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