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 マクルトから仕事が見つかったと言う内容の手紙が届けられた。詳しい話は会って話そうってことになって、わたしは出かけて行った。
 おしゃれなカフェの一室、そう個室だ。
 なんで個室?って聞いてみたら相手側が準備してくれたってマクルトは言ってた。
「今から働き口の人が来るから、それまでに簡単に説明するな」
 どうやら会員制の高級娼館らしい。
 会員制ということで、貴族しか入れないとのこと。もちろんキャストにも貴族令嬢が紛れているのだとか。
 あとは王都の娼館で人気な人がここにいるんだとか。
 娼館と言ってもお酒を飲んでお話しするのが基本なんだとか。もちろん閨事をする人もいるらしいけれど、オプションでいろいろ払わなければならないらしく、とてもじゃないけど高位貴族でなければ買えないらしい。
 キャバクラ嬢みたいな感じかな。
 それならなんとかなるかも。
 それだけじゃなくて、芸事に長けている人はそれだけを売っているんだって。
 自分でどこまで売るか選べるらしい。
 それに加えて、こちらは仮面をつけて接するようだ。相手のプライバシーもあるからこちらからは相手の顔はわからない。
 向こうからすれば、目元だけ隠れている状態だから感のいい人は気づくみたいだけど。

 マクルトが簡単に説明してくれた。
 そうこうしているうちに、お店の人が来たようだ。

 現れたのはがっしりとした体型の人で、ちょっと怖かった。剣で受けたような傷が右目から頬にある。
「初めまして、アウロって言います。よろしくね~」
 ギャップがすごい……怖い人かと思ったけど、声は高いしなんだかフレンドリーだ。
「は、初めまして。ローズ・フェローズと申します」
 慌てて挨拶する。そんなわたしをアントニーは思いっきり笑っていた。
「じゃあ、説明するね~。あらかたマクルトからは聞いてると思うけど、とりあえずは自分のできる範囲で仕事できるのが特徴ね」
 頷きながら真剣に聞く。
「あとはお金の話ね~。えっと、ローズちゃんの目標金額を聞いてもいいかな?」
 借金が返せればいい。
「十二億二千万マルクです」
 この国お金は日本と同じだ。単位が違うだけなので計算しやすくて助かる。
 わたしの告げた金額に目を丸くするアウロさん。そりゃそうだ。いくら高級娼館といえど、そんなに簡単に稼げないだろう。
「……ここの娼館での一時間の最低価格を伝えるね~」
 一緒にお話しするだけだと五万マルク。
 オプションつけてギリギリ純潔を失わずにで四十マルク。
 フルセットで六十万マルク。
 一日最大三時間までと決まっていて、それ以上は店に出せない。
 わたしは額に手を当てて天を仰ぐ。
 待って、お話しするだけで一日最大十五万マルク。二十年はかかるじゃない。その間に利子が膨れてしまう。というか返済期限に間に合わない。
 もし、体を毎日三時間売ったにしても二年はかかる。ただ、最低価格だからもう少し早くなるかも知れないけど、それでも毎日売っても二年……
 もうすでに半泣きだ。

「この高級娼館にはね、専属制度があるの」
 なんだそれは。首を傾げる。
「気に入られたら専属契約を結ぶことができるよ。その内容はお互いの合意のもと決められるけど、契約を結んでいる間は他の客は取らなくていいよ~。契約金は相手の言い値と条件にもよるけど、大体一年で五千万マルクからかな?高い子だと上限はかなり幅があるよ~。最高でいくらだったかな。十億マルクくらい?」
 十億マルク!それならだいぶ早くなるかも知れない。
「あとは~、身請けかな?身請けはこちらの言い値で向こうが同意したら成立だよ~」
 それがいい。結局貴族に嫁ぐか愛人にならないといけないけど、一番手っ取り早い。
「やります」
「そんなに簡単に決めていいの~?ちゃんと相談してからにしなよ。とりあえず保留にするから」
 そう言って金額が書かれた紙をわたしに手渡してアウロさんは帰って行った。



「おい、そんなに簡単に決めていいのか?」
 マクルトは眉間に皺を寄せて聞いてくる。きめるも何も選択肢なんてない。
「そもそもあなたが紹介したんじゃない」
「それはそうだけど……ちゃんと相談しろよ」
「誰によ!」
 もう、意味がわからない。言い値で身請けしてくれる人探すしかないじゃない。
 それに相談する人なんていないもの。
 こんな口調だから同世代の女子からは遠巻きにされるし爵位も低いし。それにずっとお仕事してて遊ぶ暇もなかった。
 幼馴染だって一人はこの仕事斡旋してるし、もう一人は……
 言えない。言ったら絶対借金肩代わりするもの。それも無償で。
 そんなの嫌よ。


  
 とぼとぼ家に帰る。
 部屋に行くと漆黒の髪の彼が立っていて、わたしは泣きたくなった。
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