3 / 25
3
しおりを挟む
マクルトから仕事が見つかったと言う内容の手紙が届けられた。詳しい話は会って話そうってことになって、わたしは出かけて行った。
おしゃれなカフェの一室、そう個室だ。
なんで個室?って聞いてみたら相手側が準備してくれたってマクルトは言ってた。
「今から働き口の人が来るから、それまでに簡単に説明するな」
どうやら会員制の高級娼館らしい。
会員制ということで、貴族しか入れないとのこと。もちろんキャストにも貴族令嬢が紛れているのだとか。
あとは王都の娼館で人気な人がここにいるんだとか。
娼館と言ってもお酒を飲んでお話しするのが基本なんだとか。もちろん閨事をする人もいるらしいけれど、オプションでいろいろ払わなければならないらしく、とてもじゃないけど高位貴族でなければ買えないらしい。
キャバクラ嬢みたいな感じかな。
それならなんとかなるかも。
それだけじゃなくて、芸事に長けている人はそれだけを売っているんだって。
自分でどこまで売るか選べるらしい。
それに加えて、こちらは仮面をつけて接するようだ。相手のプライバシーもあるからこちらからは相手の顔はわからない。
向こうからすれば、目元だけ隠れている状態だから感のいい人は気づくみたいだけど。
マクルトが簡単に説明してくれた。
そうこうしているうちに、お店の人が来たようだ。
現れたのはがっしりとした体型の人で、ちょっと怖かった。剣で受けたような傷が右目から頬にある。
「初めまして、アウロって言います。よろしくね~」
ギャップがすごい……怖い人かと思ったけど、声は高いしなんだかフレンドリーだ。
「は、初めまして。ローズ・フェローズと申します」
慌てて挨拶する。そんなわたしをアントニーは思いっきり笑っていた。
「じゃあ、説明するね~。あらかたマクルトからは聞いてると思うけど、とりあえずは自分のできる範囲で仕事できるのが特徴ね」
頷きながら真剣に聞く。
「あとはお金の話ね~。えっと、ローズちゃんの目標金額を聞いてもいいかな?」
借金が返せればいい。
「十二億二千万マルクです」
この国お金は日本と同じだ。単位が違うだけなので計算しやすくて助かる。
わたしの告げた金額に目を丸くするアウロさん。そりゃそうだ。いくら高級娼館といえど、そんなに簡単に稼げないだろう。
「……ここの娼館での一時間の最低価格を伝えるね~」
一緒にお話しするだけだと五万マルク。
オプションつけてギリギリ純潔を失わずにで四十マルク。
フルセットで六十万マルク。
一日最大三時間までと決まっていて、それ以上は店に出せない。
わたしは額に手を当てて天を仰ぐ。
待って、お話しするだけで一日最大十五万マルク。二十年はかかるじゃない。その間に利子が膨れてしまう。というか返済期限に間に合わない。
もし、体を毎日三時間売ったにしても二年はかかる。ただ、最低価格だからもう少し早くなるかも知れないけど、それでも毎日売っても二年……
もうすでに半泣きだ。
「この高級娼館にはね、専属制度があるの」
なんだそれは。首を傾げる。
「気に入られたら専属契約を結ぶことができるよ。その内容はお互いの合意のもと決められるけど、契約を結んでいる間は他の客は取らなくていいよ~。契約金は相手の言い値と条件にもよるけど、大体一年で五千万マルクからかな?高い子だと上限はかなり幅があるよ~。最高でいくらだったかな。十億マルクくらい?」
十億マルク!それならだいぶ早くなるかも知れない。
「あとは~、身請けかな?身請けはこちらの言い値で向こうが同意したら成立だよ~」
それがいい。結局貴族に嫁ぐか愛人にならないといけないけど、一番手っ取り早い。
「やります」
「そんなに簡単に決めていいの~?ちゃんと相談してからにしなよ。とりあえず保留にするから」
そう言って金額が書かれた紙をわたしに手渡してアウロさんは帰って行った。
「おい、そんなに簡単に決めていいのか?」
マクルトは眉間に皺を寄せて聞いてくる。きめるも何も選択肢なんてない。
「そもそもあなたが紹介したんじゃない」
「それはそうだけど……ちゃんと相談しろよ」
「誰によ!」
もう、意味がわからない。言い値で身請けしてくれる人探すしかないじゃない。
それに相談する人なんていないもの。
こんな口調だから同世代の女子からは遠巻きにされるし爵位も低いし。それにずっとお仕事してて遊ぶ暇もなかった。
幼馴染だって一人はこの仕事斡旋してるし、もう一人は……
言えない。言ったら絶対借金肩代わりするもの。それも無償で。
そんなの嫌よ。
とぼとぼ家に帰る。
部屋に行くと漆黒の髪の彼が立っていて、わたしは泣きたくなった。
おしゃれなカフェの一室、そう個室だ。
なんで個室?って聞いてみたら相手側が準備してくれたってマクルトは言ってた。
「今から働き口の人が来るから、それまでに簡単に説明するな」
どうやら会員制の高級娼館らしい。
会員制ということで、貴族しか入れないとのこと。もちろんキャストにも貴族令嬢が紛れているのだとか。
あとは王都の娼館で人気な人がここにいるんだとか。
娼館と言ってもお酒を飲んでお話しするのが基本なんだとか。もちろん閨事をする人もいるらしいけれど、オプションでいろいろ払わなければならないらしく、とてもじゃないけど高位貴族でなければ買えないらしい。
キャバクラ嬢みたいな感じかな。
それならなんとかなるかも。
それだけじゃなくて、芸事に長けている人はそれだけを売っているんだって。
自分でどこまで売るか選べるらしい。
それに加えて、こちらは仮面をつけて接するようだ。相手のプライバシーもあるからこちらからは相手の顔はわからない。
向こうからすれば、目元だけ隠れている状態だから感のいい人は気づくみたいだけど。
マクルトが簡単に説明してくれた。
そうこうしているうちに、お店の人が来たようだ。
現れたのはがっしりとした体型の人で、ちょっと怖かった。剣で受けたような傷が右目から頬にある。
「初めまして、アウロって言います。よろしくね~」
ギャップがすごい……怖い人かと思ったけど、声は高いしなんだかフレンドリーだ。
「は、初めまして。ローズ・フェローズと申します」
慌てて挨拶する。そんなわたしをアントニーは思いっきり笑っていた。
「じゃあ、説明するね~。あらかたマクルトからは聞いてると思うけど、とりあえずは自分のできる範囲で仕事できるのが特徴ね」
頷きながら真剣に聞く。
「あとはお金の話ね~。えっと、ローズちゃんの目標金額を聞いてもいいかな?」
借金が返せればいい。
「十二億二千万マルクです」
この国お金は日本と同じだ。単位が違うだけなので計算しやすくて助かる。
わたしの告げた金額に目を丸くするアウロさん。そりゃそうだ。いくら高級娼館といえど、そんなに簡単に稼げないだろう。
「……ここの娼館での一時間の最低価格を伝えるね~」
一緒にお話しするだけだと五万マルク。
オプションつけてギリギリ純潔を失わずにで四十マルク。
フルセットで六十万マルク。
一日最大三時間までと決まっていて、それ以上は店に出せない。
わたしは額に手を当てて天を仰ぐ。
待って、お話しするだけで一日最大十五万マルク。二十年はかかるじゃない。その間に利子が膨れてしまう。というか返済期限に間に合わない。
もし、体を毎日三時間売ったにしても二年はかかる。ただ、最低価格だからもう少し早くなるかも知れないけど、それでも毎日売っても二年……
もうすでに半泣きだ。
「この高級娼館にはね、専属制度があるの」
なんだそれは。首を傾げる。
「気に入られたら専属契約を結ぶことができるよ。その内容はお互いの合意のもと決められるけど、契約を結んでいる間は他の客は取らなくていいよ~。契約金は相手の言い値と条件にもよるけど、大体一年で五千万マルクからかな?高い子だと上限はかなり幅があるよ~。最高でいくらだったかな。十億マルクくらい?」
十億マルク!それならだいぶ早くなるかも知れない。
「あとは~、身請けかな?身請けはこちらの言い値で向こうが同意したら成立だよ~」
それがいい。結局貴族に嫁ぐか愛人にならないといけないけど、一番手っ取り早い。
「やります」
「そんなに簡単に決めていいの~?ちゃんと相談してからにしなよ。とりあえず保留にするから」
そう言って金額が書かれた紙をわたしに手渡してアウロさんは帰って行った。
「おい、そんなに簡単に決めていいのか?」
マクルトは眉間に皺を寄せて聞いてくる。きめるも何も選択肢なんてない。
「そもそもあなたが紹介したんじゃない」
「それはそうだけど……ちゃんと相談しろよ」
「誰によ!」
もう、意味がわからない。言い値で身請けしてくれる人探すしかないじゃない。
それに相談する人なんていないもの。
こんな口調だから同世代の女子からは遠巻きにされるし爵位も低いし。それにずっとお仕事してて遊ぶ暇もなかった。
幼馴染だって一人はこの仕事斡旋してるし、もう一人は……
言えない。言ったら絶対借金肩代わりするもの。それも無償で。
そんなの嫌よ。
とぼとぼ家に帰る。
部屋に行くと漆黒の髪の彼が立っていて、わたしは泣きたくなった。
43
お気に入りに追加
574
あなたにおすすめの小説
山に捨てられた元伯爵令嬢、隣国の王弟殿下に拾われる
しおの
恋愛
家族に虐げられてきた伯爵令嬢セリーヌは
ある日勘当され、山に捨てられますが逞しく自給自足生活。前世の記憶やチートな能力でのんびりスローライフを満喫していたら、
王弟殿下と出会いました。
なんでわたしがこんな目に……
R18 性的描写あり。※マークつけてます。
38話完結
2/25日で終わる予定になっております。
たくさんの方に読んでいただいているようで驚いております。
この作品に限らず私は書きたいものを書きたいように書いておりますので、色々ご都合主義多めです。
バリバリの理系ですので文章は壊滅的ですが、雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
読んでいただきありがとうございます!
番外編5話 掲載開始 2/28
鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~
二階堂まや
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。
ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。
しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。
そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。
【完結】婚約破棄を待つ頃
白雨 音
恋愛
深窓の令嬢の如く、大切に育てられたシュゼットも、十九歳。
婚約者であるデュトワ伯爵、ガエルに嫁ぐ日を心待ちにしていた。
だが、ある日、兄嫁の弟ラザールから、ガエルの恐ろしい計画を聞かされる。
彼には想い人がいて、シュゼットとの婚約を破棄しようと画策しているというのだ!
ラザールの手配で、全てが片付くまで、身を隠す事にしたのだが、
隠れ家でシュゼットを待っていたのは、ラザールではなく、ガエルだった___
異世界恋愛:短編(全6話) ※魔法要素ありません。 ※一部18禁(★印)《完結しました》
お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
「君と勝手に結婚させられたから愛する人に気持ちを告げることもできなかった」と旦那様がおっしゃったので「愛する方とご自由に」と言い返した
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
デュレー商会のマレクと結婚したキヴィ子爵令嬢のユリアであるが、彼との関係は冷めきっていた。初夜の日、彼はユリアを一瞥しただけで部屋を出ていき、それ以降も彼女を抱こうとはしなかった。
ある日、酒を飲んで酔っ払って帰宅したマレクは「君と勝手に結婚させられたから、愛する人に気持ちを告げることもできなかったんだ。この気持ちが君にはわかるか」とユリアに言い放つ。だからユリアも「私は身を引きますので、愛する方とご自由に」と言い返すのだが――
※10000字前後の短いお話です。
ワケあってこっそり歩いていた王宮で愛妾にされました。
しゃーりん
恋愛
ルーチェは夫を亡くして実家に戻り、気持ち的に肩身の狭い思いをしていた。
そこに、王宮から仕事を依頼したいと言われ、実家から出られるのであればと安易に引き受けてしまった。
王宮を訪れたルーチェに指示された仕事とは、第二王子殿下の閨教育だった。
断りきれず、ルーチェは一度限りという条件で了承することになった。
閨教育の夜、第二王子殿下のもとへ向かう途中のルーチェを連れ去ったのは王太子殿下で……
ルーチェを逃がさないように愛妾にした王太子殿下のお話です。
お義兄様に一目惚れした!
よーこ
恋愛
クリステルはギレンセン侯爵家の一人娘。
なのに公爵家嫡男との婚約が決まってしまった。
仕方なくギレンセン家では跡継ぎとして養子をとることに。
そうしてクリステルの前に義兄として現れたのがセドリックだった。
クリステルはセドリックに一目惚れ。
けれども婚約者がいるから義兄のことは諦めるしかない。
クリステルは想いを秘めて、次期侯爵となる兄の役に立てるならと、未来の立派な公爵夫人となるべく夫人教育に励むことに。
ところがある日、公爵邸の庭園を侍女と二人で散策していたクリステルは、茂みの奥から男女の声がすることに気付いた。
その茂みにこっそりと近寄り、侍女が止めるのも聞かずに覗いてみたら……
全38話
散りきらない愛に抱かれて
泉野ジュール
恋愛
傷心の放浪からひと月ぶりに屋敷へ帰ってきたウィンドハースト伯爵ゴードンは一通の手紙を受け取る。
「君は思う存分、奥方を傷つけただろう。これがわたしの叶わぬ愛への復讐だったとも知らずに──」
不貞の疑いをかけ残酷に傷つけ抱きつぶした妻・オフェーリアは無実だった。しかし、心身ともに深く傷を負ったオフェーリアはすでにゴードンの元を去り、行方をくらましていた。
ゴードンは再び彼女を見つけ、愛を取り戻すことができるのか。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる