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第三章【パシフィス王国編】

寒さ対策

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朝の光が宿の窓から差し込み、三人の影を長く引いていた。
冷たい風が吹き抜け、冬の訪れを感じさせる。
宿のドアが重く閉まる音が、出発の合図となった。

三人は通りに立ち、しばしの間、無言で周囲を見渡していた。
街はまだ静かで、人々はゆっくりと朝の活動を始めていた。

「さて、さっそくメガラニアに向かいたいところだけど、色々と準備が必要ね。防寒着とか、移動手段とか..」
彼女の表情には一抹の不安と決意が交じり合っていた。

「そういや向こうは雪国だったか..ならまずは服だな」
村田は頷き、過去にグレイスから聞いた話を思い出しながら言った。

ライトは興味津々にケイラに問いかけた。
「そんなに寒いの?」
彼の目には好奇心と少しの不安が浮かんでいた。

ケイラは呆れた顔で答えた。
「そうね、どこを見ても一面銀世界で、正直嫌になるほどに寒いわ..」
彼女は微かに身震いしながら、過去の寒さを思い出していた。
その様子を見て、ライトは少し身を縮めた。

「買うならあそこの店がおすすめ」
ケイラが指をさすと、そこには『サニー・スレッド』という看板がかかるこじんまりとした店が見えた。
看板には太陽のマークが描かれており、暖かみのあるデザインが目を引いた。

三人は店に入ると、店内は薄暗く、庶民的な服がぎっしりと多く取り揃えられていた。
ライトは興味深そうに周囲を見回し、手に取った服の感触を確かめていた。

「いらっしゃいまっせぇ~」
若干気だるそうな男性の声が響く。
カウンターに両肘をついている店主が、眠そうな目で三人を見つめていた。

(看板詐欺だろ..)
村田はそんな感想を抱き、軽くため息をついた。
彼の表情には少しの不満が浮かんでいた。

ケイラはそんな店主に気を留めることなく、店内の服に目を向けた。
「私の分は家にあるから..とりあえず二人分の服を選びましょ」

村田はダークブラウンのダッフルコートを手に取り、その質感を確かめる。
ライトはケイラと相談しながら、ベージュのフード付きロングコートを選ぶ。

「どうかな?」
ライトは試着室から出てきて、村田とケイラに見せた。
彼の顔には少しの照れが見えたが、新しい服に対する期待が感じられた。

ケイラはライトの姿を見て満足そうに頷いた。
「はいかわいい、それでOKよ」

「こんなところね..ねぇ、せっかくだしちょっとだけ服見てもいい?」
ケイラは村田に問いかけた。その目にはまだ輝きが残っていた。

「あぁ、ちょっとだけだぞ」
村田は微笑みながら承諾したが、心の中では早く出発したい気持ちがあった。

そこから一時間ほどが経過したが、ケイラは服選びに完全に熱中していた。
店内を歩き回り、次々と服を手に取っては鏡の前で合わせてみたり、村田とライトに意見を求めたりしていた。

「う~ん....ねぇ、これとこれどっちが似合うと思う?」

村田は定期的に来るこの問いかけに身構えていたが、ライトは村田の隣で睡魔と戦っていた。
「あ、あぁ..左がいいと思う。なぁケイラ、そろそ――」
ケイラにそろそろ見切りを付けるように伝えようとするが、彼の声は途中で途切れた。

「あ!!これライト君絶対似合う!試着しましょ!」
ケイラは広がったスリーブと裾が付いたワンピース型のドレスを手に取り、ライトを嬉しそうに見つめた。

「お、おう..なぁ、そろそろいいか?もう一時間経ってるし..」
村田は勢いに押されながらも、時間の経過に焦りを感じていた。

「あら、もうそんなに経ったの?もっと見たかった..」
ケイラは残念そうにドレスを戻したが、その目はまだ楽しさで輝いていた。

「それは買うか。..正直言うと俺もめっちゃ似合うとは思うから」
村田はライトがそのドレスを着ている姿を想像しながら、ちょっと恥ずかしそうに言った。

「..なんか私が聞いてた時よりも気持ちが籠ってない?」
ケイラは不満そうな表情で村田を見つめた。

「じゃあ買ってくる。ライトを頼む」
村田はカウンターに向かい、ドレスを手にした。
ドレスが想像より高額だったことに若干後悔しつつも、ライトが喜ぶ姿を想像して笑みを浮かべた。
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