上 下
82 / 109
第三章【パシフィス王国編】

ライトvsリゼルタ②

しおりを挟む
蒸気が晴れ目に映ったのは何事もなく立つリゼルタの姿だった。

「はは..木を隠すなら森の中とはよく言ったものだな..」
リゼルタは冷静に言った。
あらぬ方向に飛んだスコーチウィンドは勢いを失い、地面に焦げた爪痕を残して消滅した。

「えっ..どうして..」
ライトは疑問と落胆の色を浮かべたまま、リゼルタを見上げた。

「うむ、時間だ」
リゼルタは冷静に腕時計を見ながら言った。

「うぅ、当てられなかった..」
ライトは悔しそうに唇をかみしめ、肩を落とした。

「何を言っているんだ。素晴らしい戦いっぷりだったぞ?さぁ皆様、彼に盛大な拍手を!」
リゼルタはライトの肩に優しく手を置き、観客席に向かって呼びかけた。
その瞬間、大きな拍手と歓声が会場中に響き渡った。

「ところで..すっかり聞き忘れていたが、君の名前は?」
リゼルタはライトに目を向け、穏やかな声で尋ねた。

「ライトだよ!」
ライトは元気いっぱいに答えた。

「そうか、ライト君。レムリアに来る気はないかな?君の才能を見込んでの話だ」
リゼルタの目には期待と興味が輝いていた。

「うーん、僕にはまだ、どうしても知りたいことがあって..それに、シュンとも相談しないとだし..」
ライトは少し困惑しながらも真剣に答えた。

「あぁすまない、急にこんな話をしてしまって..ぜひ気が向いたらレムリアへ足を運んでくれ」
リゼルタは申し訳なさそうに微笑んだ。

「ありがとう、絶対行くよ。またねリゼルタおじさん!」
ライトはリゼルタに手を振り、別れを告げた。

観客席に戻るライトを見送りながら、リゼルタは心の中で呟いた。
(ただの遊びだと油断していた..まさか最後の攻撃で私の特殊魔法を引き出されるとはな..)

リゼルタの表情は複雑だった。驚き、恐れ、そして興味。
瞳には、ライトの才能に対する強い欲望が映っていた。
しおりを挟む

処理中です...