ゲノム～失われた大陸の秘密～

第三章【パシフィス王国編】

無理やり

ライトからの話は重く、彼の体は時折小さく震え、言葉を紡ぐのも一苦労のようだった。
「ケイラに血液を採られ、血液を飲んだり彼女自身の肌に塗るなどの行動を見せられた」
との内容は、二人の聞き手に強い衝撃を与えた。

「異常だな..他にはどんなことを？」
村田は眉間にしわを寄せて尋ねたが、
その声にはライトに対する同情と、状況の異常さに対する驚愕が混じっていた。

ライトは顔を下げ、言葉を詰まらせながら体を震わせた。
「うん..無理やり....食べさせられて..」
彼の声はかすれており、恐怖を思い出しているかのようだった。

「無理しないで大丈夫だ..まだ話すのは辛いよな..」
村田はライトの様子を心配しながら
彼の声には保護者のような温かさが込められていた。

「ごはん..を..」
と呟いた。

その言葉の意味がすぐには理解できなかった村田は、
「....ん？ご飯を、いっぱい、食べたの？」
と困惑しながら問い返した。

「うん..僕はいらないって言ったのに..『私の作った料理が食べれないの？』とか言って無理やり..」
とライトが答えると、彼の声には被害を受けたときの無力感と屈辱がにじみ出ていた。

村田とケラプは顔を見合わせた。
村田は少し困惑していたが、同時にライトが経験した恐怖を理解しようと努めていた。

「そうかライト..それは....怖かったな。その、そんなにまずかったのか？」
と、彼は優しく、しかし確かに共感を示してライトに声をかけた。

「いや、すごく美味しかったんだ。また食べたいと思ってる自分が怖いんだ..」
ライトは少し笑みを浮かべたが、すぐに落ち込んだ顔に戻る

（ダメだ..全然わかんねぇ..ケイラは悪い奴ではないのか？いや悪い奴ではあるんだけど、なんかなぁ..）
彼の心の中では、ライトの話が複雑に絡み合い、ケイラの行動に対する評価が一層困難になっていた。

「それで、彼女の処罰についてだが..うちでは被害者の意見を第一に対応を決めている..何か希望はあるかな？」
ケラプは静かに問いかけた。
彼の声は冷静で、深刻な問題に対する重みを感じさせた。

「そうですか..正直、今判断に悩んでいるところです」
村田はゆっくりと答え、眉をひそめながら自分の考えを整理しようとした。

「僕は、おねえちゃんがシュンを傷つけたことを許していない..けど、心の底から悪い人とは思ってないよ」
ライトが加わり、彼の声には未だ恐怖と混乱が残っているものの、どこか冷静さも感じられた。

「うーん、そうだな。確かにあの時のケイラは..ライトを自分のものにするという感情が前面に出ていた..」
村田はそっと続け、ライトの言葉を反芻していた。

「まぁすぐにとは..しばらくケイラはこちらで様子を見る..考えが纏まってからでも」
ケラプは提案し、その顔には決断の難しさが浮かんでいた。

「すみません..しばらく考えさせてください」
村田は最終的にそう答え、深く頷いた。

「わかった..ただどちらにせよ職は失うことになるだろう..今回の行いは彼女の職場にも広まっている」
ケラプは静かに付け加えた。
その言葉には現実の重さが含まれており、三人は一層重い空気に包まれた。