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第三章【パシフィス王国編】

実食

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村田はライトに目を向け、
「はーびっくりした..ライト、大丈夫か?」
と静かに尋ねた。

ライトは村田の問いに小さく頷き、やや強張った表情で答えた。
「あ..うん。すごいおばあさん?だね」
彼の言葉には、ケラプおばさんの圧倒的な存在感に対する驚きと、少しの恐れが感じられた。

村田は冗談を交えて緊張を和らげようとした。
「あぁ、俺も初めて見た。裏でなんかヤバい事でもやってるのか?」

しかし、その試みはライトの不安をさらに煽る結果となった。
「うぅ..僕たち生きて帰れるかな..」
ライトの声は震えていた。

「おい怖いことを言うな」
と村田は苦笑いしつつも、ライトを励ました。

そして、予期せぬ瞬間に、
「..お待たせいたしました」
とケラプが再び現れた。
彼女の丸太のような腕には、焼きたてのアップルパイを乗せた皿が二つ。
ライトは驚きのあまり声を上げ、椅子から転げ落ちてしまった。

「お客様、大丈夫ですか..」
と、ケラプは心配そうにライトを見下ろし、その巨大な左手だけで彼を軽々と持ち上げた。

その力強さに、ライトはさらに恐怖を感じ、
「うわー食べられるー!」
とパニックに陥った。

しかし、ケラプは冷静に
「お怪我は、大丈夫そうですね..」
と言い、ライトを優しく椅子に座らせた。

その意外な優しさに、ライトは戸惑いながらも
「あ、ありがとう」
と小さく感謝の言葉を返した。

「それではごゆっくりと..」
ケラプは去っていった。

待ちに待ったアップルパイが二人の前に置かれた時、部屋は甘美な香りで満たされた。
パイはまるで太陽のように輝いており、その見た目だけで食欲をそそられた。

「これは、すごいな....」
村田の声は驚嘆に満ちていた。
彼の目は、目の前のアップルパイに釘付けになり、その美しさに心を奪われていた。

「こんな食べ物初めて見たよ..」
ライトが目を輝かせながら言った。
彼は少し震える手でフォークを取り、期待と緊張で息を呑んだ。
そして、フォークがパイの中に沈む瞬間、ザクッという音が心地よく響いた。
パイが割れると、その中からはさらに豊かなリンゴの香りとともに、温かい蒸気が立ち上がった。

ライトは遠慮がちにフォークに乗せたパイの一片を口に運んだ。
その瞬間、彼の顔が驚きと歓喜で照らされた。

「リンゴの甘酸っぱさと、クラストのバターの風味が完璧に調和してる..それに、中のフィリングはとろりとしていて、口の中でゆっくりと、まるで夕暮れ時に沈む太陽のように溶けるんだ...」
ライトが興奮を抑えきれずに言った。

「すごく美味い..んだな、それだけはわかった」
村田はライトの反応を見て、少し笑みを浮かべたが、好奇心に負け自分も食べてみることにした。

フォークを手に取り慎重にパイを切り分け、一口食べると彼の目が輝き、味わい深い表情を浮かべた。
「リンゴのフレッシュな甘さとスパイスの効いた風味、それにサクサクとしたパイ生地が絶妙にマッチしている。なんて素晴らしいバランスなんだ..」
村田の声は感動に満ちており、彼の食レポにライトも笑顔でうなずいた。
二人はしばらく言葉を交わさず、ただその絶品のアップルパイに魅了され続けた。
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