ゲノム～失われた大陸の秘密～

第二章【カバルの村編】

帰還

二人が声のする方に向かうと、村の入り口に狩猟班が帰還しているのが見えた。
しかし、歓迎するはずの村の雰囲気は一変しており、空気には緊迫感が漂っていた。

二人が村の入り口に近づくと、
狩猟班から戻った一人の男がパニック状態で叫んでいるのを目の当たりにした。
「熊が出たんだ！喰われたんだあいつは！」
彼の叫び声は、周囲の村人たちにも衝撃を与え、一瞬の静寂の後、ざわめきが広がった。

ガガリアは、人々の間をすり抜け、その震える男の元へ急ぎ寄った。
彼は深い憂慮を抱えながら、男の肩に手を置き、安定させるように言葉をかけた。

「一体何があったんだね、落ち着いて、冷静に話してくれ」
村長の声は、落ち着きと慈愛に満ちており、混乱した男を鎮める力を持っていた。

男は、ガガリアと村人たちの顔を見渡しながら、深く息を吸い込んだ。
彼の顔は恐怖で青ざめ、その目には未だに信じられない出来事への驚愕が宿っていた。
「お、俺らは朝仕掛けた罠を見に行ったんだ、だが掛かっていた動物がほとんど喰い荒らされていて..」
彼の声はまだ震えていたが、ガガリアの存在が彼に少しの勇気を与えていた。

「そしたら後ろからうなり声が聞こえて、とんでもなくでかくて真っ黒な熊が..」
言葉を失った彼の表情からは、その恐ろしい瞬間を目の当たりにした絶望が伝わってきた。

「ありがとう、状況はわかったよ。君たちは休んでいなさい」
村田は狩猟班のうち一人の男が、血で汚れた腕を抱えながら震えているのに気づいた。

その時、村田は前に進み出て言った。
「あの、治療が必要なら私が手伝います」

男性と他の村人たちは、村田の提案に少し驚きながらも、
「..あんた誰だ、医者なのか？」
彼の声には、わずかながらも希望の光が見え始めていた。

「私は看護師の村田です。わけあって今日この村に泊めさせていただいています」
と村田は静かに答えた。
彼の目は真剣そのもので、この危機的状況での助力への決意を示していた。

その言葉を受け、男性は村田の目を見て信頼を寄せ、
「そうか、すまないが頼めるか？」
と頼み込んだ。
村田は優しい笑顔で頷き、男性に肩を貸した。

その時、ガガリアの声が重々しく村全体に響き渡った。
彼の宣言は、切迫した状況に対する彼の迅速な対応を示していた。
「バンを襲った熊だが、奴は人間の味を覚えた。じきにこの村を襲撃するだろう」

「村の平穏を守るため、そして..彼の仇をとるために、奴を討伐する」
彼の声には、決意と責任感が込められていた。

「女子供は家に避難、戦える者は武器を持って集合！」
この言葉に、村人たちの間に一瞬の沈黙が流れた。
恐怖に震える者、怒りに燃える者、そして戦う決意を新たにする者。
彼らの表情は一様に緊張していたが、ガガリアの言葉に勇気づけられ、
少しずつ団結の気持ちが高まっていった。