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第二章【カバルの村編】

旅の始まり

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二人は草原を歩き、静かな川を越えながら、アドリア大陸の広大な自然を横切っていった。
周囲の景色は徐々に変化し、そこには新たな驚きと発見が待っていた。

「ねぇシュン、城下町まではどのくらいかかりそう?」
ライトが訊ねた。
彼の声には、旅のわくわくと少しの不安が混じっていた。

「歩いて3日くらいはかかるな、基本は野宿、途中小さな村があるみたいだからそこに泊めてもらったりしよう」
村田はグレイスからもらった地図を見ながら、落ち着いた口調で答えた。
彼の目は、計画を立てる際の冷静さと自信に満ちていた。

その日の夜、森に差し掛かったところで二人は
焚火のそばで干した豚肉に塩をまぶしたものを食べながら、お互いに話をしていた。
焚火の炎が二人の顔を暖かく照らし、夜の寒さを和らげていた。

「それにしても、お前2年間で全然身長伸びてねーな」
と村田がからかった。

「うるさいなぁ!まだこれからだって!」
ライトは顔を膨らませ、少し拗ねたような声で反論した。
彼の目は、少年特有のプライドを守ろうとする瞬間のきらめきを見せていた。

「それ1年前も言ってなかったか?で、その『これから』はいつ来るんだ?」
村田はくすっと笑いながら、更にからかう。

ライトは更に顔を膨らませ、
「うっ..そういうシュンはどうなのさ!2年前に比べて『横に』伸びたんじゃないの!?」
と言って、反撃した。
彼の声は、少しの怒りと楽しんでいるようなトーンが混ざっていた。

「う、うるせぇな!グレイスさんの料理が美味すぎるのが悪いんだよ!それに食べないと成長しないしな!」
村田は少し赤くなりながら、慌てて言い訳した。
彼の表情は、自分の体型に対する少しの気恥ずかしさを隠せていなかった。

「そーやって人のせいにする!」

そんな下らない言い争いをしている内に、ライトに睡魔が襲い掛かる。
「ふわあ~、眠くなってきた..」

「なんか疲れた..ライト、寝てていいぞ。俺見張っておくから」
と村田が優しく言う。

「そっか、シュンは『シャカイジン』だから寝なくても大丈夫だったね」
なんか誤解されている気がするが、納得してくれたのでよしとする。

「あーそうだ、明日も朝早いからな」
と村田が付け加える。

「ふふ、ありがと。なんやかんやシュンは優しいよね」
ライトは持参した敷布団に横たわりながら眠そうに言った。

「へいへい、さっさと寝ないと身長伸びないぞ~」
と村田が笑いながら言う。

ライトは
「やっぱりさっきの嘘おやすみ」
と言い残して眠りについた。

村田は息をつきながら、焚火を見つめ続けた。彼らの冒険はまだ始まったばかりだ。
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