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第二章 人形の怪
【弐】ー3
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「そう、オレだ。一応聞き取れる程度には霊力があるんだな」
「こ、これは……!」
常人には見えない程度の隠形を使っていた騰蛇は西山に見つかっても平然としている。
西山が直ぐ気付かなかったのは視ようとしなかったからで、今は声の主を探して意識を集中させたため騰蛇の姿がうっすら視えたというわけだ。
声が聞き取れたのは視るより聞く方が感知し易いからだ。
珍しく出しゃばった白蛇に晴明は小さく溜息を吐くと蛇の目がじとっと見上げてきた。
「別に構わないだろう? これからこの人間の前で仕事するんだ。どうせバレるなら早い方がいい。ーーそれで? どんな噂だ?」
本気で聞く気でいたのかこの白蛇は……。
それに真面目に答えようとする西山に居心地の悪さを感じて晴明は逃げ出したくなった。
「少し耳にしただけですが、若くして式神召喚に成功した祓い師がいるのだとか……まさか本当だったとは驚きました」
「良くオレが“式鬼神”だって分かったな」
「え……ええ、蛇を使役していることも小耳に挟んでいたので、それで……」
「へえ? そうか」
言葉を詰まらせた西山を胡乱な目で見返す騰蛇がまた突っかかっていく前に話を進める。
「今は急を要します。西山さん、中路さんから預かっている人形を見せてください」
「あ、ああ、そうでしたね。ご本人がまだいらっしゃらないようですが……まあ良いでしょう、ご案内します」
通された場所は本堂の更に奥にある一室。
窓もなく、狭い通路の両側にはいろんな物が所狭しと置かれている。
いろんな物というのは言葉通りだ。古めかしい陶器や色褪せた和綴じ本、箱や布で覆われ中身の見えない物など様々。
西山住職はその中の一つ、桐の箱の前で立ち止まった。
「こちらです」
「触れずに少し下がってください」
霊力の弱い人間が安易に近付くのは危険だ。住職が手にするのを制して晴明が箱の前に立つ。
「こ、これは……!」
常人には見えない程度の隠形を使っていた騰蛇は西山に見つかっても平然としている。
西山が直ぐ気付かなかったのは視ようとしなかったからで、今は声の主を探して意識を集中させたため騰蛇の姿がうっすら視えたというわけだ。
声が聞き取れたのは視るより聞く方が感知し易いからだ。
珍しく出しゃばった白蛇に晴明は小さく溜息を吐くと蛇の目がじとっと見上げてきた。
「別に構わないだろう? これからこの人間の前で仕事するんだ。どうせバレるなら早い方がいい。ーーそれで? どんな噂だ?」
本気で聞く気でいたのかこの白蛇は……。
それに真面目に答えようとする西山に居心地の悪さを感じて晴明は逃げ出したくなった。
「少し耳にしただけですが、若くして式神召喚に成功した祓い師がいるのだとか……まさか本当だったとは驚きました」
「良くオレが“式鬼神”だって分かったな」
「え……ええ、蛇を使役していることも小耳に挟んでいたので、それで……」
「へえ? そうか」
言葉を詰まらせた西山を胡乱な目で見返す騰蛇がまた突っかかっていく前に話を進める。
「今は急を要します。西山さん、中路さんから預かっている人形を見せてください」
「あ、ああ、そうでしたね。ご本人がまだいらっしゃらないようですが……まあ良いでしょう、ご案内します」
通された場所は本堂の更に奥にある一室。
窓もなく、狭い通路の両側にはいろんな物が所狭しと置かれている。
いろんな物というのは言葉通りだ。古めかしい陶器や色褪せた和綴じ本、箱や布で覆われ中身の見えない物など様々。
西山住職はその中の一つ、桐の箱の前で立ち止まった。
「こちらです」
「触れずに少し下がってください」
霊力の弱い人間が安易に近付くのは危険だ。住職が手にするのを制して晴明が箱の前に立つ。
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