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第一章 祓い師
【参】ー2
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返事はないがその細長い身体がピクリと震えたのが伝わってきて溜息が零れた。
普段もこの状態で仕事をすることが多いが、調べ物をする際は勝手にしゅるしゅると這い回るのに今日に限ってこうも頑なに離れないのはおかしい。
もしかしてと問うたことがまさか当たっていようとは……。
「雨が降る前に地下を探し出して様子を見ておきたいのですが……困りましたね」
足手纏いになることを嫌う騰蛇は晴明の落胆したような声色に慌てだした。
仕切りに身体の上を這いずりどうしたものかと右往左往している。
慣れているとはいえこのくすぐるような感覚は勝手に身体が反応してしまう。
「っ、……ここまで言っても離れないのは、何かわけがあるのですか?」
これまでも寒い中で仕事をしたことはもちろんある。今日のこの急激な気温変化に身体がついていかないということなのだろう。
「……オレには晴明を守る使命がある」
嘘ではないだろうが、今ばかりは取ってつけたような言い訳に聞こえてならない。
本当に暖を取るためなのか真意は分からないが押し問答している時間が惜しく、晴明は諦めて地下へと続く階段探しに集中した。騰蛇もぴったり張り付きながらも周囲に視線を巡らしている。
幾つ目かの部屋に入った途端、突然身体がぎゅっと締め付けられた。原因は言わずもがなだ。
「晴明。あそこだ、気を付けろ」
騰蛇の潜めた声に促され、彼が見つけた部屋の隅に足を向ける。
しゃがんで床の土や埃をサッと手で掃うと四角い板が二枚嵌め込まれていた。形状からして扉になっているようだ。
晴明は二本の指を立てて己に結界を張る。
「騰蛇は貴人を呼んできてください」
「駄目だ。あんたを一人にするわけにはいかない」
「結界を張ったので大丈夫です」
普段もこの状態で仕事をすることが多いが、調べ物をする際は勝手にしゅるしゅると這い回るのに今日に限ってこうも頑なに離れないのはおかしい。
もしかしてと問うたことがまさか当たっていようとは……。
「雨が降る前に地下を探し出して様子を見ておきたいのですが……困りましたね」
足手纏いになることを嫌う騰蛇は晴明の落胆したような声色に慌てだした。
仕切りに身体の上を這いずりどうしたものかと右往左往している。
慣れているとはいえこのくすぐるような感覚は勝手に身体が反応してしまう。
「っ、……ここまで言っても離れないのは、何かわけがあるのですか?」
これまでも寒い中で仕事をしたことはもちろんある。今日のこの急激な気温変化に身体がついていかないということなのだろう。
「……オレには晴明を守る使命がある」
嘘ではないだろうが、今ばかりは取ってつけたような言い訳に聞こえてならない。
本当に暖を取るためなのか真意は分からないが押し問答している時間が惜しく、晴明は諦めて地下へと続く階段探しに集中した。騰蛇もぴったり張り付きながらも周囲に視線を巡らしている。
幾つ目かの部屋に入った途端、突然身体がぎゅっと締め付けられた。原因は言わずもがなだ。
「晴明。あそこだ、気を付けろ」
騰蛇の潜めた声に促され、彼が見つけた部屋の隅に足を向ける。
しゃがんで床の土や埃をサッと手で掃うと四角い板が二枚嵌め込まれていた。形状からして扉になっているようだ。
晴明は二本の指を立てて己に結界を張る。
「騰蛇は貴人を呼んできてください」
「駄目だ。あんたを一人にするわけにはいかない」
「結界を張ったので大丈夫です」
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