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脱却2
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「なかなか決まらない?」
「ううん、一応決めたよ。でもどっちにしようかなーって」
「二つで迷ってるなら、俺が片方買うよ」
俺の申し出に李煌さんが強く首を振った。
「ダメだよっ。大河くんは大河くんで好きなの買わなくちゃ!」
「俺は李煌さんが欲しい物を買いたいから、それでいいんだ」
「大河くん……でもっ」
少し頬を赤らめながらテンパっている李煌さんに、俺は小さく笑って促す。
「いいから。どこの店?」
「え、えっと……二階の――」
言われるまま二階に下りて李煌さんの案内の元目的の場所に辿りついた。
ここは見たまま……、
「実用品雑貨か」
「そ。実用品なら何が入っていても困らないしお得かなーって」
一つのワゴンに近付いて福袋を手に取る。
(しかも中身の商品名まで丁寧に書かれてるし……。まぁ柄とかは分からないからいいのか?)
俺が首を傾げていると、李煌さんが一つの福袋を持ってやってきた。
(やけにパンパンだな……)
「これ、ブランケットが入ってるんだって。あとマフラーも! 冬物の詰め合わせもいいよねー」
(ああ、それでか)
袋の形状に納得しつつ、嬉しそうに福袋を眺める李煌さんに頬を緩める。
そんな顔をされたらそれも買ってあげたくなってしまうじゃないか。
「それにする?」
「うーん……、うん! 決めた。あと、コレね」
俺の言葉を聞いてるのかいないのか分からないような返答につい笑いが零れてしまう。
「何笑ってるの?」
怪訝そうに俺を見上げる李煌さん。
「あー、いや。楽しそうだなーと」
「……本当にそれだけ?」
「それだけそれだけ」
福袋に夢中になっている李煌さんが、なんだか子供っぽくて可愛い。
(――なんて言ったら照れ怒りしそうだしな。それに、嘘はついてないし)
こんなに可愛い李煌さんがいるなら、もっと早く見たかった。
(それか、恋人って関係がそうさせてるのか? これ以上李煌さんが可愛くなるのも……俺は嬉しいが、他の奴には見せたくないな)
気付かないうちに眉間に皺を寄せていたようで、李煌さんがそこを指先で突いて来た。
「大河くんは楽しいって顔じゃないね。どうかした?」
(楽しいけど面白くないんだよ)
と、口には出せないまま額にある指をそっと掴む。
「どうもしてないよ。それより決まったんだろ? レジ行こう」
握った指を離してレジへと向かう。
すぐ後ろを李煌さんがついてきた。
「本当に良かったの?買ってもらっちゃったようなものだよ、これ」
ふたりで会計を済ませて一階へと下りるエスカレーターで、李煌さんがまだ少し納得がいっていない様子で呟いた。
「いいんだって。本当ならどっちも俺が買ってあげたかったんだ」
「それはダメだよっ」
「分かってる。だから一つくらいプレゼントさせて」
「……うん」
「それに、俺は李煌さんの恋人だろ? 喜んで受け取ってくれた方が、俺は嬉しいんだけどな」
周りに聞こえないようそっと耳に唇を寄せて囁くと、李煌さんは慌てた様子でこくこく何度も頷いて俯いた。
「ううん、一応決めたよ。でもどっちにしようかなーって」
「二つで迷ってるなら、俺が片方買うよ」
俺の申し出に李煌さんが強く首を振った。
「ダメだよっ。大河くんは大河くんで好きなの買わなくちゃ!」
「俺は李煌さんが欲しい物を買いたいから、それでいいんだ」
「大河くん……でもっ」
少し頬を赤らめながらテンパっている李煌さんに、俺は小さく笑って促す。
「いいから。どこの店?」
「え、えっと……二階の――」
言われるまま二階に下りて李煌さんの案内の元目的の場所に辿りついた。
ここは見たまま……、
「実用品雑貨か」
「そ。実用品なら何が入っていても困らないしお得かなーって」
一つのワゴンに近付いて福袋を手に取る。
(しかも中身の商品名まで丁寧に書かれてるし……。まぁ柄とかは分からないからいいのか?)
俺が首を傾げていると、李煌さんが一つの福袋を持ってやってきた。
(やけにパンパンだな……)
「これ、ブランケットが入ってるんだって。あとマフラーも! 冬物の詰め合わせもいいよねー」
(ああ、それでか)
袋の形状に納得しつつ、嬉しそうに福袋を眺める李煌さんに頬を緩める。
そんな顔をされたらそれも買ってあげたくなってしまうじゃないか。
「それにする?」
「うーん……、うん! 決めた。あと、コレね」
俺の言葉を聞いてるのかいないのか分からないような返答につい笑いが零れてしまう。
「何笑ってるの?」
怪訝そうに俺を見上げる李煌さん。
「あー、いや。楽しそうだなーと」
「……本当にそれだけ?」
「それだけそれだけ」
福袋に夢中になっている李煌さんが、なんだか子供っぽくて可愛い。
(――なんて言ったら照れ怒りしそうだしな。それに、嘘はついてないし)
こんなに可愛い李煌さんがいるなら、もっと早く見たかった。
(それか、恋人って関係がそうさせてるのか? これ以上李煌さんが可愛くなるのも……俺は嬉しいが、他の奴には見せたくないな)
気付かないうちに眉間に皺を寄せていたようで、李煌さんがそこを指先で突いて来た。
「大河くんは楽しいって顔じゃないね。どうかした?」
(楽しいけど面白くないんだよ)
と、口には出せないまま額にある指をそっと掴む。
「どうもしてないよ。それより決まったんだろ? レジ行こう」
握った指を離してレジへと向かう。
すぐ後ろを李煌さんがついてきた。
「本当に良かったの?買ってもらっちゃったようなものだよ、これ」
ふたりで会計を済ませて一階へと下りるエスカレーターで、李煌さんがまだ少し納得がいっていない様子で呟いた。
「いいんだって。本当ならどっちも俺が買ってあげたかったんだ」
「それはダメだよっ」
「分かってる。だから一つくらいプレゼントさせて」
「……うん」
「それに、俺は李煌さんの恋人だろ? 喜んで受け取ってくれた方が、俺は嬉しいんだけどな」
周りに聞こえないようそっと耳に唇を寄せて囁くと、李煌さんは慌てた様子でこくこく何度も頷いて俯いた。
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