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15歳
413 美味しいもの
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綿毛ちゃんって名前は可愛いのに。マーティーは馬鹿にしてくる。謝れと綿毛ちゃんを掲げながら要求すれば、マーティーは渋々「悪かったな」と言ってきた。
綿毛ちゃんに手を伸ばしてくるマーティーは、もふもふに触りたくて仕方がないらしい。
まぁ、約束は約束だし。綿毛ちゃんを差し出せば、マーティーがおそるおそる綿毛ちゃんの頭に手を置いた。
「もふもふだろ。羨ましいだろ」
綿毛ちゃんをぐいぐい押し付ければ、マーティーは戸惑いながらも受け取った。だが、動物を抱っこすることに慣れていないのか。すごく危うい手つきで抱えている。不安定な体勢になった綿毛ちゃんが、困った顔で固まっている。毛玉が悲しい顔で助けを求めている。
「綿毛ちゃんのこと落とさないでね」
心配になって横から綿毛ちゃんを支えると、マーティーは強張った声で「落としそう」と嫌な宣言をしてくる。落とすなよ?
「返して!」
綿毛ちゃんが変な姿勢で可哀想。マーティーから奪い取れば、綿毛ちゃんが安堵したように尻尾を振る。
「兄上が言っていた変な犬というのはそれか?」
「変な犬じゃない。綿毛ちゃん」
「綿毛ちゃん……」
どうしてそんな名前にしたんだ、と首を捻るマーティーはすごく失礼。灰色もふもふは綿毛みたいで可愛いだろうが。
綿毛ちゃんの頭にある角を見せてあげれば、マーティーは興味津々に手を伸ばしてくる。なにを気軽に触ろうとしているのか。俺の犬だぞ。
「触りたければ、なんか美味しいもの持ってこい」
「図々しいぞ」
タイラーが横から「やめなさい」と口出ししてくるが、ユリスは「いいぞ、ルイス」とにやにや笑っている。
綿毛ちゃんを抱っこしたまま逃げまわる。マーティーが「なんだ、おまえは。ちょっとは落ち着けよ」とオロオロしている。
「綿毛ちゃん。マーティーと仲良くしてね」
マーティーは、泣き虫のお子様である。
優しくしてあげてと綿毛ちゃんに言い聞かせれば、毛玉はうんうん勢いよく頷いた。
マーティーは、どうやら綿毛ちゃんを見に来たらしい。先日、彼の兄であるエリックにお喋り毛玉を見せたから。エリックからマーティーに話が伝わったのだろう。どうしても見たいと、わざわざ足を運んできたらしい。
「綿毛ちゃん。喋る」
すごいだろと自慢すれば、マーティーが「それは本当なのか?」と疑いの目を向けてくる。
そういえば、マーティーはユリスが黒猫になっていたことは知っているが、黒猫ユリスと会話したことはない。喋る動物を見たことがないのだ。
「マーティー様とは普通に仲良しなんですね」
部屋に入ってきたティアンが、突然そんなことを言う。急にどうしたよ。「もしかして、ティアンか?」と自信なさそうに問いかけるマーティー。わかるよ、その困惑。ティアンは、十二歳の頃とは大きく変わったから。「お久しぶりです」と、にこやかに応じるティアンに、マーティーはいまだ信じられないといった目を向けている。
「マーティーは俺の子分だからな」
「誰が誰の子分だって!?」
強気に言い返してくるマーティーだが、横から「僕の子分だろ」と口を挟んでくるユリスにビビったらしく、ぴたりと口を閉ざした。
マーティーは、なんでこんなにユリスを怖がっているのだろうか。同い年のお子様なのに。
『それでぇ? 美味しいものは?』
オレも食べたいと騒ぐ綿毛ちゃんに、マーティーが変な声を上げた。
食いしん坊毛玉は、先程俺がマーティーに要求した美味しいものを早く出せと急かしてくる。嫌な毛玉だな。
『触らせてあげたから。美味しいものください』
「綿毛ちゃん。うるさいぞ」
短い足で美味しいものを要求する綿毛ちゃんを抱えて、マーティーを追いかけまわす。「やめろよ!」とビビるマーティーは、お喋り毛玉が怖いらしい。
「犬が怖いのか? さすがマーティーだな」
偉そうに腕を組んで、マーティーを馬鹿にするユリス。実に楽しそうでいいと思う。
ちらりとティアンに目を向ければ、なんだか不満そうな色が見えた気がした。だが、すぐに取り繕ったように微笑むティアンに、俺は内心で首を傾げる。なんでティアンが不満そうな顔をするのだろうか。俺の見間違い?
マーティーと仲良しなのが気に入らないのか?
足を止めて、じっとマーティーを観察してみる。「なんだよ」と、俺を睨んでくるお子様マーティーと、すっかり身長も伸びて大人びたティアンを見比べる。どう考えても、ティアンの方が大人だ。
そういえば、俺はティアンと再会した時、勢いあまってティアンを知らない人扱いした。それなのに、久しぶりに会うマーティーのことは疑問もなく受け入れたから。もしかしてそれで怒っているのだろうか。
だが、マーティーは確かに成長したが、ぶっちゃけあまり変わっていない。ちょっと大人っぽくなったかなくらいで、劇的に変化したティアンとは違う。
でも、あの対応はティアンに失礼だったな。ティアンはティアンで頑張ったのに、俺はなんか違うという自分の気持ちを優先してティアンを傷付けてしまった。
なんだか仲直りした気になってあやふやにしていたが、酷い対応をした件について、まだちゃんと謝っていない。これはあれだ。あやふやにしちゃダメだ。ちゃんと謝んないといけない。
綿毛ちゃんに手を伸ばしてくるマーティーは、もふもふに触りたくて仕方がないらしい。
まぁ、約束は約束だし。綿毛ちゃんを差し出せば、マーティーがおそるおそる綿毛ちゃんの頭に手を置いた。
「もふもふだろ。羨ましいだろ」
綿毛ちゃんをぐいぐい押し付ければ、マーティーは戸惑いながらも受け取った。だが、動物を抱っこすることに慣れていないのか。すごく危うい手つきで抱えている。不安定な体勢になった綿毛ちゃんが、困った顔で固まっている。毛玉が悲しい顔で助けを求めている。
「綿毛ちゃんのこと落とさないでね」
心配になって横から綿毛ちゃんを支えると、マーティーは強張った声で「落としそう」と嫌な宣言をしてくる。落とすなよ?
「返して!」
綿毛ちゃんが変な姿勢で可哀想。マーティーから奪い取れば、綿毛ちゃんが安堵したように尻尾を振る。
「兄上が言っていた変な犬というのはそれか?」
「変な犬じゃない。綿毛ちゃん」
「綿毛ちゃん……」
どうしてそんな名前にしたんだ、と首を捻るマーティーはすごく失礼。灰色もふもふは綿毛みたいで可愛いだろうが。
綿毛ちゃんの頭にある角を見せてあげれば、マーティーは興味津々に手を伸ばしてくる。なにを気軽に触ろうとしているのか。俺の犬だぞ。
「触りたければ、なんか美味しいもの持ってこい」
「図々しいぞ」
タイラーが横から「やめなさい」と口出ししてくるが、ユリスは「いいぞ、ルイス」とにやにや笑っている。
綿毛ちゃんを抱っこしたまま逃げまわる。マーティーが「なんだ、おまえは。ちょっとは落ち着けよ」とオロオロしている。
「綿毛ちゃん。マーティーと仲良くしてね」
マーティーは、泣き虫のお子様である。
優しくしてあげてと綿毛ちゃんに言い聞かせれば、毛玉はうんうん勢いよく頷いた。
マーティーは、どうやら綿毛ちゃんを見に来たらしい。先日、彼の兄であるエリックにお喋り毛玉を見せたから。エリックからマーティーに話が伝わったのだろう。どうしても見たいと、わざわざ足を運んできたらしい。
「綿毛ちゃん。喋る」
すごいだろと自慢すれば、マーティーが「それは本当なのか?」と疑いの目を向けてくる。
そういえば、マーティーはユリスが黒猫になっていたことは知っているが、黒猫ユリスと会話したことはない。喋る動物を見たことがないのだ。
「マーティー様とは普通に仲良しなんですね」
部屋に入ってきたティアンが、突然そんなことを言う。急にどうしたよ。「もしかして、ティアンか?」と自信なさそうに問いかけるマーティー。わかるよ、その困惑。ティアンは、十二歳の頃とは大きく変わったから。「お久しぶりです」と、にこやかに応じるティアンに、マーティーはいまだ信じられないといった目を向けている。
「マーティーは俺の子分だからな」
「誰が誰の子分だって!?」
強気に言い返してくるマーティーだが、横から「僕の子分だろ」と口を挟んでくるユリスにビビったらしく、ぴたりと口を閉ざした。
マーティーは、なんでこんなにユリスを怖がっているのだろうか。同い年のお子様なのに。
『それでぇ? 美味しいものは?』
オレも食べたいと騒ぐ綿毛ちゃんに、マーティーが変な声を上げた。
食いしん坊毛玉は、先程俺がマーティーに要求した美味しいものを早く出せと急かしてくる。嫌な毛玉だな。
『触らせてあげたから。美味しいものください』
「綿毛ちゃん。うるさいぞ」
短い足で美味しいものを要求する綿毛ちゃんを抱えて、マーティーを追いかけまわす。「やめろよ!」とビビるマーティーは、お喋り毛玉が怖いらしい。
「犬が怖いのか? さすがマーティーだな」
偉そうに腕を組んで、マーティーを馬鹿にするユリス。実に楽しそうでいいと思う。
ちらりとティアンに目を向ければ、なんだか不満そうな色が見えた気がした。だが、すぐに取り繕ったように微笑むティアンに、俺は内心で首を傾げる。なんでティアンが不満そうな顔をするのだろうか。俺の見間違い?
マーティーと仲良しなのが気に入らないのか?
足を止めて、じっとマーティーを観察してみる。「なんだよ」と、俺を睨んでくるお子様マーティーと、すっかり身長も伸びて大人びたティアンを見比べる。どう考えても、ティアンの方が大人だ。
そういえば、俺はティアンと再会した時、勢いあまってティアンを知らない人扱いした。それなのに、久しぶりに会うマーティーのことは疑問もなく受け入れたから。もしかしてそれで怒っているのだろうか。
だが、マーティーは確かに成長したが、ぶっちゃけあまり変わっていない。ちょっと大人っぽくなったかなくらいで、劇的に変化したティアンとは違う。
でも、あの対応はティアンに失礼だったな。ティアンはティアンで頑張ったのに、俺はなんか違うという自分の気持ちを優先してティアンを傷付けてしまった。
なんだか仲直りした気になってあやふやにしていたが、酷い対応をした件について、まだちゃんと謝っていない。これはあれだ。あやふやにしちゃダメだ。ちゃんと謝んないといけない。
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