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11歳
255 長距離移動
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天気は晴れ。空気は澄んでおり、お出かけには最高の日である。
馬車に揺られること長時間。ユリスが疲れたとごねるため、予定よりも多く休憩を挟んだ。このままでは到着しないと、アロンが何度も文句を言っていた。それをタイラーが宥めて、ロニーはひたすら無言でにこにこしている。ジャンは青い顔で、アロンとタイラーのやり取りを見守っていた。
彼らから一歩離れたところでは、クレイグ団長が憮然と腕を組んでいる。そろそろ団長が、アロンにお怒りになってしまう。
危機を察知した俺は、そろそろと団長から距離を取る。同じく察したらしいユリスもついてくる。
結局、お出かけにはクレイグ団長が同行することになった。
初めは、副団長であるセドリックが同行するという話が出たのだが、大人たちが話し合いをした結果、セドリックではなくクレイグ団長がついてくることになった。
なんか、オーガス兄様が「セドリックに任せるのはちょっと」と首を傾げたかららしい。
どうもオーガス兄様は、セドリックのことが苦手のようだ。常に無口で無表情。なにを考えているのか不明な騎士は、気弱なオーガス兄様とは相性が悪いらしい。
今回は俺とユリスがいる。おまけにアロンも。セドリックが全員をまとめることができるのか、兄様たちは不安を抱いたらしい。
「おまえは、あれだろ。ユリスやルイスがいらんことをしても、自分の仕事が増えさえしなければ放置するんだろ?」
「はぁ」
ブルース兄様に問われて、そんな覇気のない返事をしたセドリックは、なんかもうダメだった。
ということで、代わりに名前があがったのがクレイグ団長というわけだ。今回のお出かけの目的はティアンである。彼の父親であるクレイグ団長を同行させるのに、誰も反対はしなかった。
唯一、アロンだけが不満そうな顔をしていたのだが、クソ野郎である彼は、結局誰が同行しても不満らしいので放置された。
「おまえが揉め事を起こしてどうする」
「俺がいつ揉め事なんて起こしましたよ? 団長こそ。いらん時間を使わないでもらえますか。ただでさえ予定より遅れているっていうのに」
アロンが、さりげなく遅れをクレイグ団長のせいにしようとしている。なんて奴だ。案の定、団長の眉間に皺がよるが、遅れていることは紛れもない事実である。これ以上の時間をここで潰すわけにはいかないと判断したのだろう。
鋭くアロンを睨み付けた団長は、それで話を終わらせてしまう。
そうして長々と移動して、ほとんど一日が潰れてしまった。目的地であるアロンの実家に到着した時には、あたりはすでに真っ暗だった。
「どうぞどうぞ。すみませんね。ろくな歓迎もできずに」
「時間も遅いしね。お気になさらず」
アロンの言葉通り、屋敷はひっそりとしていた。伯爵家らしく広々とした屋敷は、暗闇の中では全貌がよくわからない。
屋敷の警備をしているらしい若い男たちに馬を任せて、アロンは肩で風を切るようにして堂々と中に入る。
物珍し気にきょろきょろする俺の横で、ユリスもしきりに視線を彷徨わせていた。
「部屋を用意させています。今日はもう遅いので、とりあえず休みましょう。諸々のことはまた明日」
手慣れた様子で屋敷を案内してくれるアロン。どうやらあらかじめ部屋を用意してくれていたらしく、スムーズに客室へと通された。
広々とした部屋である。馬車に揺られて疲れもたまっていた。けれども見知らぬ部屋に、俺はそわそわと落ち着きなく室内を歩きまわる。
ここで、ひとりで寝るのはちょっと。
ロニーとジャンには別に部屋が用意されていた。見知らぬ家、しかも夜中である。ひとりはちょっと怖かった。
悩む間もなかった。勢いよく隣だというユリスの部屋に駆け込んだ。
「なんだ。なんの用だ」
「一緒に寝よう!」
「ふざけるな」
口ではそう言いながらも、追い出すのも面倒くさいらしい。それ以上、ユリスは文句を言ってこない。
夕飯はすでに済ませていた。寝る支度を整えて、大きなベッドに飛び込む。遠慮なく真ん中を占領していれば、ユリスが不機嫌そうに舌打ちした。
馬車に揺られること長時間。ユリスが疲れたとごねるため、予定よりも多く休憩を挟んだ。このままでは到着しないと、アロンが何度も文句を言っていた。それをタイラーが宥めて、ロニーはひたすら無言でにこにこしている。ジャンは青い顔で、アロンとタイラーのやり取りを見守っていた。
彼らから一歩離れたところでは、クレイグ団長が憮然と腕を組んでいる。そろそろ団長が、アロンにお怒りになってしまう。
危機を察知した俺は、そろそろと団長から距離を取る。同じく察したらしいユリスもついてくる。
結局、お出かけにはクレイグ団長が同行することになった。
初めは、副団長であるセドリックが同行するという話が出たのだが、大人たちが話し合いをした結果、セドリックではなくクレイグ団長がついてくることになった。
なんか、オーガス兄様が「セドリックに任せるのはちょっと」と首を傾げたかららしい。
どうもオーガス兄様は、セドリックのことが苦手のようだ。常に無口で無表情。なにを考えているのか不明な騎士は、気弱なオーガス兄様とは相性が悪いらしい。
今回は俺とユリスがいる。おまけにアロンも。セドリックが全員をまとめることができるのか、兄様たちは不安を抱いたらしい。
「おまえは、あれだろ。ユリスやルイスがいらんことをしても、自分の仕事が増えさえしなければ放置するんだろ?」
「はぁ」
ブルース兄様に問われて、そんな覇気のない返事をしたセドリックは、なんかもうダメだった。
ということで、代わりに名前があがったのがクレイグ団長というわけだ。今回のお出かけの目的はティアンである。彼の父親であるクレイグ団長を同行させるのに、誰も反対はしなかった。
唯一、アロンだけが不満そうな顔をしていたのだが、クソ野郎である彼は、結局誰が同行しても不満らしいので放置された。
「おまえが揉め事を起こしてどうする」
「俺がいつ揉め事なんて起こしましたよ? 団長こそ。いらん時間を使わないでもらえますか。ただでさえ予定より遅れているっていうのに」
アロンが、さりげなく遅れをクレイグ団長のせいにしようとしている。なんて奴だ。案の定、団長の眉間に皺がよるが、遅れていることは紛れもない事実である。これ以上の時間をここで潰すわけにはいかないと判断したのだろう。
鋭くアロンを睨み付けた団長は、それで話を終わらせてしまう。
そうして長々と移動して、ほとんど一日が潰れてしまった。目的地であるアロンの実家に到着した時には、あたりはすでに真っ暗だった。
「どうぞどうぞ。すみませんね。ろくな歓迎もできずに」
「時間も遅いしね。お気になさらず」
アロンの言葉通り、屋敷はひっそりとしていた。伯爵家らしく広々とした屋敷は、暗闇の中では全貌がよくわからない。
屋敷の警備をしているらしい若い男たちに馬を任せて、アロンは肩で風を切るようにして堂々と中に入る。
物珍し気にきょろきょろする俺の横で、ユリスもしきりに視線を彷徨わせていた。
「部屋を用意させています。今日はもう遅いので、とりあえず休みましょう。諸々のことはまた明日」
手慣れた様子で屋敷を案内してくれるアロン。どうやらあらかじめ部屋を用意してくれていたらしく、スムーズに客室へと通された。
広々とした部屋である。馬車に揺られて疲れもたまっていた。けれども見知らぬ部屋に、俺はそわそわと落ち着きなく室内を歩きまわる。
ここで、ひとりで寝るのはちょっと。
ロニーとジャンには別に部屋が用意されていた。見知らぬ家、しかも夜中である。ひとりはちょっと怖かった。
悩む間もなかった。勢いよく隣だというユリスの部屋に駆け込んだ。
「なんだ。なんの用だ」
「一緒に寝よう!」
「ふざけるな」
口ではそう言いながらも、追い出すのも面倒くさいらしい。それ以上、ユリスは文句を言ってこない。
夕飯はすでに済ませていた。寝る支度を整えて、大きなベッドに飛び込む。遠慮なく真ん中を占領していれば、ユリスが不機嫌そうに舌打ちした。
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