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11歳
244 理解したってば
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クレイグ団長は、淡々と俺に説教してきた。ついでにアロンにも文句を言っていた。ロニーは「申し訳ありません」と、ひたすら頭を下げていた。
「おまえも。見ていないで止めてくれ」
「それはだって。アロン殿相手に止めるとか無理です」
肩をすくめるティアンは、「ダメですよ、ルイス様」と、形式だけのお小言をぶつけてくる。ダメですよって。おまえも一緒になってはしゃいでいただろうが。
「ユリスも誘えばよかった」
一回誘ったんだけどな。くだらないと鼻で笑われて終わった。
俺のちょっとした後悔を聞いたクレイグ団長が、なにか言いたげに口を開いては閉じるという不審な動きをした。こほんと咳払いをした団長は、「ユリス様は、こういった遊びは好まないでしょう」とわかったような口を利く。
ユリスの出不精は、もはや広く屋敷内に知れ渡っている。
外遊びよりも、家の中で変な収集品を観察している方が楽しいらしい。よくオーガス兄様に、新しい品物を持ってこいと偉そうにねだっている。ブルース兄様に頼んでいるところは見ないけどな。
「とにかく。こういった変な遊びはおやめください」
クレイグ団長の中では、水遊びは変な遊びに分類されるらしい。まともな遊びってなんだろうか。ちょっとわからない。
ぽかんとしていれば、団長が苦い顔をする。
「ルイス様。庭を荒らしてはいけません」
「荒らしてない」
「ひどく荒れております」
足元に視線を落とす。水浸しの地面は、ところどころに水たまりができ、少々ぬかるんでいる。乾いたらボコボコになりそう。
「……ごめんなさい」
これは確かに荒れている。頭を下げれば、団長の表情が僅かに柔らかくなる。
「わかっていただければよろしいのです」
「うん」
明らかに安堵した団長は、「では」と一礼して立ち去ろうとする。その背中に手を振って、噴水を振り返る。
「ティアン、バケツ貸して。今度は俺が水撒く」
ティアンの手からバケツを奪い取れば、肩越しにこちらを見る団長とバッチリ目があってしまった。ばいばいと手を振るが、なぜか団長はすごい勢いで戻ってくる。ティアンが小さく「ばか」と呟いている。
「団長も一緒に遊ぶか?」
「ルイス様? 私の話、なにも理解されていませんね?」
ガシッと俺の両肩を強めに掴んだ団長は、目力強かった。ブルース兄様にも負けない迫力である。
どうやら、俺が話を理解していないととんでもない誤解をしているらしい。ちゃんと理解したと告げるが、団長は疑いの目を向けてくる。
「地面を荒らさない。理解した」
「ではなぜ、再び水を撒こうとしておられるのか」
そんなの簡単である。もう手遅れだからだ。
見たところ、地面はすでにぐちゃぐちゃである。これはもう整備しないとダメだと思う。どうせ整備するのであれば、今のうちに遊んでおくべきだろう。今日を逃せば、もうチャンスはない。
そういったことを丁寧に説明するが、クレイグ団長の顔色は晴れない。逆に、肩を掴む手に力がこもる。
「そういった屁理屈は必要ありません」
屁理屈ではないのに。だが、クレイグ団長はなにやらマジである。
ここで変にごねても、後が面倒くさい。
「ごめんなさい」
もう一度謝っておくが、団長は解放してくれない。すごく疑いの目を向けてくる。
「ルイス様、お部屋に戻りましょう」
「……はーい」
俺の手からバケツを引ったくった団長は、アロンに「片付けておけ」と押し付ける。渋々受け取ったアロンは、「よろしく」とそのままロニーに押し付けている。
そうして濡れることも厭わずに、俺を抱え上げた団長は、そのまま俺の部屋へと向かう。
タオルを持ってくるようジャンに指示して、ティアンには着替えを持ってくるよう言い付けている。
団長にわしゃわしゃ拭かれる俺は、されるがままである。一気に人の増えた室内の隅っこで、白猫がにゃあにゃあ鳴いている。急に人が増えてビビってるんかな。
「おまえも。見ていないで止めてくれ」
「それはだって。アロン殿相手に止めるとか無理です」
肩をすくめるティアンは、「ダメですよ、ルイス様」と、形式だけのお小言をぶつけてくる。ダメですよって。おまえも一緒になってはしゃいでいただろうが。
「ユリスも誘えばよかった」
一回誘ったんだけどな。くだらないと鼻で笑われて終わった。
俺のちょっとした後悔を聞いたクレイグ団長が、なにか言いたげに口を開いては閉じるという不審な動きをした。こほんと咳払いをした団長は、「ユリス様は、こういった遊びは好まないでしょう」とわかったような口を利く。
ユリスの出不精は、もはや広く屋敷内に知れ渡っている。
外遊びよりも、家の中で変な収集品を観察している方が楽しいらしい。よくオーガス兄様に、新しい品物を持ってこいと偉そうにねだっている。ブルース兄様に頼んでいるところは見ないけどな。
「とにかく。こういった変な遊びはおやめください」
クレイグ団長の中では、水遊びは変な遊びに分類されるらしい。まともな遊びってなんだろうか。ちょっとわからない。
ぽかんとしていれば、団長が苦い顔をする。
「ルイス様。庭を荒らしてはいけません」
「荒らしてない」
「ひどく荒れております」
足元に視線を落とす。水浸しの地面は、ところどころに水たまりができ、少々ぬかるんでいる。乾いたらボコボコになりそう。
「……ごめんなさい」
これは確かに荒れている。頭を下げれば、団長の表情が僅かに柔らかくなる。
「わかっていただければよろしいのです」
「うん」
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「ティアン、バケツ貸して。今度は俺が水撒く」
ティアンの手からバケツを奪い取れば、肩越しにこちらを見る団長とバッチリ目があってしまった。ばいばいと手を振るが、なぜか団長はすごい勢いで戻ってくる。ティアンが小さく「ばか」と呟いている。
「団長も一緒に遊ぶか?」
「ルイス様? 私の話、なにも理解されていませんね?」
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どうやら、俺が話を理解していないととんでもない誤解をしているらしい。ちゃんと理解したと告げるが、団長は疑いの目を向けてくる。
「地面を荒らさない。理解した」
「ではなぜ、再び水を撒こうとしておられるのか」
そんなの簡単である。もう手遅れだからだ。
見たところ、地面はすでにぐちゃぐちゃである。これはもう整備しないとダメだと思う。どうせ整備するのであれば、今のうちに遊んでおくべきだろう。今日を逃せば、もうチャンスはない。
そういったことを丁寧に説明するが、クレイグ団長の顔色は晴れない。逆に、肩を掴む手に力がこもる。
「そういった屁理屈は必要ありません」
屁理屈ではないのに。だが、クレイグ団長はなにやらマジである。
ここで変にごねても、後が面倒くさい。
「ごめんなさい」
もう一度謝っておくが、団長は解放してくれない。すごく疑いの目を向けてくる。
「ルイス様、お部屋に戻りましょう」
「……はーい」
俺の手からバケツを引ったくった団長は、アロンに「片付けておけ」と押し付ける。渋々受け取ったアロンは、「よろしく」とそのままロニーに押し付けている。
そうして濡れることも厭わずに、俺を抱え上げた団長は、そのまま俺の部屋へと向かう。
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団長にわしゃわしゃ拭かれる俺は、されるがままである。一気に人の増えた室内の隅っこで、白猫がにゃあにゃあ鳴いている。急に人が増えてビビってるんかな。
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