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第4話 あやかしだって喧嘩したい!
15 道案内
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「……あの、八太さんですか?」
敷地の外から小声で呼びかけるが、耳がピクリと揺れるだけでそれ以上の反応はない。もしかして、違うのだろうか。人違いならぬ猫違いか。
「あのぉ。僕、あやかし相談事務所の矢沢優斗っていうんですけど」
八太さんが食いつきそうな自己紹介をしてみるが無反応。だめか。
「八太さぁん?」
名残惜し気に名前を呼んだそのとき。
「なんだおまえ! もしかして俺を食べる気かっ!」
なに言ってんだ、こいつ。
目を丸くする僕に構わず、八太さんと思わしき黒猫は立ち上がり毛を逆立てる。警戒心丸出しだ。
「いや、食べませんけど」
僕はそんなに怖い顔をしていただろうか。そんなことはないと思うんだけどなぁと首を捻ると、猫が一歩、また一歩と徐々に後退る。
「そんなこと言って油断させようとしても無駄だぁ!」
「だめだこりゃ」
話が通じそうにない。人間は敵とみなすタイプの猫なのだろうか。
それにしてもこの臆病っぷりである。これは八太さんである可能性がかなり高い。
「あの、八太さんですか?」
根気強く尋ねれば、黒猫がわかりやすく動揺した。
「ど、どうして俺の名前を! おまえ何者だ」
「ですから、あやかし相談事務所の優斗です」
あやかし相談事務所の名を聞いた途端、それまで威嚇していた八太さんがすっと体の力を抜いた。ぺたりと座り込み、安堵の息を吐き出す。
「なんだ。相談事務所の奴か。それならそうと早く言え」
「最初から言ってましたけど」
呆れるが、なんとか警戒を解くことに成功した。これはマリさんや山瀬さんが彼のことを臆病だと揶揄うのも納得がいく。凄まじい警戒心だった。
「それで、事務所の奴がなんの用だ?」
一転して正気を取り戻した八太さんが余裕たっぷりに訊き返す。相手があやかし関係の奴だとわかって安心したのだろうか。
「その前に、場所移動しませんか?」
さすがに他人様の家の前で話し込むのは気が引ける。
「そうか。では移動するか。どこがいいんだ?」
「そうですね。あやかし相談事務所とかどうですか?」
さり気なく提案すれば、八太さんは「了解した」と先頭切って歩み始める。これで帰りの心配はなくなった。ありがとう、八太さん。
心の中でしっかりお礼を言って、僕は八太さんの後を追いかけたのであった。
敷地の外から小声で呼びかけるが、耳がピクリと揺れるだけでそれ以上の反応はない。もしかして、違うのだろうか。人違いならぬ猫違いか。
「あのぉ。僕、あやかし相談事務所の矢沢優斗っていうんですけど」
八太さんが食いつきそうな自己紹介をしてみるが無反応。だめか。
「八太さぁん?」
名残惜し気に名前を呼んだそのとき。
「なんだおまえ! もしかして俺を食べる気かっ!」
なに言ってんだ、こいつ。
目を丸くする僕に構わず、八太さんと思わしき黒猫は立ち上がり毛を逆立てる。警戒心丸出しだ。
「いや、食べませんけど」
僕はそんなに怖い顔をしていただろうか。そんなことはないと思うんだけどなぁと首を捻ると、猫が一歩、また一歩と徐々に後退る。
「そんなこと言って油断させようとしても無駄だぁ!」
「だめだこりゃ」
話が通じそうにない。人間は敵とみなすタイプの猫なのだろうか。
それにしてもこの臆病っぷりである。これは八太さんである可能性がかなり高い。
「あの、八太さんですか?」
根気強く尋ねれば、黒猫がわかりやすく動揺した。
「ど、どうして俺の名前を! おまえ何者だ」
「ですから、あやかし相談事務所の優斗です」
あやかし相談事務所の名を聞いた途端、それまで威嚇していた八太さんがすっと体の力を抜いた。ぺたりと座り込み、安堵の息を吐き出す。
「なんだ。相談事務所の奴か。それならそうと早く言え」
「最初から言ってましたけど」
呆れるが、なんとか警戒を解くことに成功した。これはマリさんや山瀬さんが彼のことを臆病だと揶揄うのも納得がいく。凄まじい警戒心だった。
「それで、事務所の奴がなんの用だ?」
一転して正気を取り戻した八太さんが余裕たっぷりに訊き返す。相手があやかし関係の奴だとわかって安心したのだろうか。
「その前に、場所移動しませんか?」
さすがに他人様の家の前で話し込むのは気が引ける。
「そうか。では移動するか。どこがいいんだ?」
「そうですね。あやかし相談事務所とかどうですか?」
さり気なく提案すれば、八太さんは「了解した」と先頭切って歩み始める。これで帰りの心配はなくなった。ありがとう、八太さん。
心の中でしっかりお礼を言って、僕は八太さんの後を追いかけたのであった。
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