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第3話 あやかしだって青春したい!
11 嵐再び
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「おかえりなさい。朱音くんどうでした? もしかして暇そうにしていましたか?」
事務所に戻るなり、宮下さんがいつもの胡散臭い笑みで出迎えてくれた。
定位置であるデスクに腰かけたままにこにこと視線を送ってくる彼は、相変わらず季節感ガン無視の黒いスーツに身を包んでいる。そんなにきっちり着込んで暑くはないのだろうか。毎度疑問に思っていたのだが、完全に尋ねるタイミングを見失ってしまった。
そんなことよりも。
「朱音なら、まぁ元気にしてましたよ」
元気というか不機嫌というか。恵さんと言い争ってからはどこか近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、あえてそれは黙っておいた。安易に触れてはいけないような、そんな感じがしたのだ。
「おや? そうですか」
するとなにに驚いたのか、宮下さんはひょいっと片眉を持ち上げた。そのまま考え込むように黙り込んでしまう。放っておいても喋りまくる彼にしては珍しい。
なにか引っかかることでもあったのだろうか。まさか誤魔化したことがばれたか? 彼は案外鋭い男である。不味いと思った末に、僕は自ら恵さんの話題を振ってみることにした。上手くいけば、朱音についてなにかわかるかもしれない。
「あ。そういえば、恵さんって方に会ったんですけど」
「あぁ、はいはい」
どうやら恵さんは宮下さんとも交流があるらしく、思い出すように何度も頷いている。
「彼女、愉快な方でしょ?」
「そうですね。まぁ、すごく明るいとは思いましたけど」
そう告げれば、宮下さんも同意するように肩を震わせた。
「朱音くんの家にいらっしゃったんですか?」
「いや。なんか朱音に連絡があって。僕らが学校まで駆けつけたんです」
「学校? 授業は大丈夫なんでしょうか。彼女たしか高校に通っていませんでしたっけ」
「ヤバいって言ってました」
「彼女らしいですねぇ」
目を細めて、くつくつと喉を鳴らす。そんな彼の手は完全にパソコンから離れ、休憩モードらしい。見た目や言動こそは胡散臭い男だが、仕事はきっちりやるタイプだということがここ最近わかった。もっとも、そうでなければ事務所の所長なんてやっていないだろう。
人は見かけによらないというが、あかやしも一緒らしい。
そこまで考えて、ふと疑問が生じた。
恵さんは件という予言を行うあやかしだ。そして、雪乃さんという雪女にも出会った。ひと言、あやかしといってもその種類は様々だ。では、宮下さんや朱音は?
見た限り、人とさして変わらない彼らはあやかしとしての本性がまるで見えない。本当に、あやかしなのかと疑ってしまうほどには。
「宮下さんは――」
どんなあやかしなんですか?
けれども、続けようとした言葉は表のドアが勢いよく開け放たれたことにより奥へと引っ込んでしまった。宮下さんと揃って入り口に目を向ければ、そこには先程別れたばかりの恵さんが佇んでいた。
事務所に戻るなり、宮下さんがいつもの胡散臭い笑みで出迎えてくれた。
定位置であるデスクに腰かけたままにこにこと視線を送ってくる彼は、相変わらず季節感ガン無視の黒いスーツに身を包んでいる。そんなにきっちり着込んで暑くはないのだろうか。毎度疑問に思っていたのだが、完全に尋ねるタイミングを見失ってしまった。
そんなことよりも。
「朱音なら、まぁ元気にしてましたよ」
元気というか不機嫌というか。恵さんと言い争ってからはどこか近寄りがたい雰囲気を醸し出していたが、あえてそれは黙っておいた。安易に触れてはいけないような、そんな感じがしたのだ。
「おや? そうですか」
するとなにに驚いたのか、宮下さんはひょいっと片眉を持ち上げた。そのまま考え込むように黙り込んでしまう。放っておいても喋りまくる彼にしては珍しい。
なにか引っかかることでもあったのだろうか。まさか誤魔化したことがばれたか? 彼は案外鋭い男である。不味いと思った末に、僕は自ら恵さんの話題を振ってみることにした。上手くいけば、朱音についてなにかわかるかもしれない。
「あ。そういえば、恵さんって方に会ったんですけど」
「あぁ、はいはい」
どうやら恵さんは宮下さんとも交流があるらしく、思い出すように何度も頷いている。
「彼女、愉快な方でしょ?」
「そうですね。まぁ、すごく明るいとは思いましたけど」
そう告げれば、宮下さんも同意するように肩を震わせた。
「朱音くんの家にいらっしゃったんですか?」
「いや。なんか朱音に連絡があって。僕らが学校まで駆けつけたんです」
「学校? 授業は大丈夫なんでしょうか。彼女たしか高校に通っていませんでしたっけ」
「ヤバいって言ってました」
「彼女らしいですねぇ」
目を細めて、くつくつと喉を鳴らす。そんな彼の手は完全にパソコンから離れ、休憩モードらしい。見た目や言動こそは胡散臭い男だが、仕事はきっちりやるタイプだということがここ最近わかった。もっとも、そうでなければ事務所の所長なんてやっていないだろう。
人は見かけによらないというが、あかやしも一緒らしい。
そこまで考えて、ふと疑問が生じた。
恵さんは件という予言を行うあやかしだ。そして、雪乃さんという雪女にも出会った。ひと言、あやかしといってもその種類は様々だ。では、宮下さんや朱音は?
見た限り、人とさして変わらない彼らはあやかしとしての本性がまるで見えない。本当に、あやかしなのかと疑ってしまうほどには。
「宮下さんは――」
どんなあやかしなんですか?
けれども、続けようとした言葉は表のドアが勢いよく開け放たれたことにより奥へと引っ込んでしまった。宮下さんと揃って入り口に目を向ければ、そこには先程別れたばかりの恵さんが佇んでいた。
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