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第1話 あやかしだって恋愛したい!
5 主とは
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翌日。
開けた窓から吹き込むそよ風が頬を撫でていく。暑さのために揺らめく景色をぼんやりと眺めながら、深くため息をついた。清々しい夏空。蝉時雨が降り注ぎ、カーテンレールに引っ掛けた風鈴が涼やかな音を奏でる。
なんとなくそれに耳を傾けつつも、僕の心は一向に晴れない。
一日の始まりという本来ならば晴れやかな気分で迎えるものが、今朝はひどく憂鬱だった。それもこれも、すべては昨日の出来事が原因だ。
僕の前に兄として現れた朱音という謎の男。けれども、僕に兄なんていなかった。
昨晩、それとなく両親に探りを入れたがどちらも朱音の存在を覚えていなかった。
当然と言えば当然の反応だ。一体、朱音はいつから矢沢家に紛れていたのだろうか。
両親が覚えていないということは、昨日一日だけだったのだろうか。家中隈なく見て回ったが、朱音がいたという証拠はなにもない。もしかして、すべては僕の悪い夢だったのだろうかという気さえしてきた。
どちらにしろ、気味が悪い。すぐにでも忘れてしまいたいが、去り際の朱音の顔が頭から離れない。僕を見下ろす彼の目は、ひどく冷たかった。そして、同時に残された言葉も引っ掛かる。
『おまえが、俺の主になる資格はない』
あれは一体どういうことなのだろうか。主とは、なんのことだ。まったくもってわけがわからない。
もしや頭のおかしな人の妄想劇に付き合わされたのだろうか。でも、そう考えるとどうして僕が当然のように居もしない兄の存在を受け入れていたのか説明がつかない。
そういえば、神やあやかしなどありえないことを力説していたが、もしやあれは本当のことだったりして。いや、そんなわけないか。
あるわけないのだ。そんなこと。やたら渇く喉を癒そうと、窓を離れる。
両親は朝早くから仕事のため、この時間は僕ひとりだ。
適当にパンでも焼いて朝食にしよう。確か冷蔵庫にヨーグルトもあったはずだ。この間買ってきたイチゴジャムを入れても美味しいだろう。そうだ、そうしよう。
開けた窓から吹き込むそよ風が頬を撫でていく。暑さのために揺らめく景色をぼんやりと眺めながら、深くため息をついた。清々しい夏空。蝉時雨が降り注ぎ、カーテンレールに引っ掛けた風鈴が涼やかな音を奏でる。
なんとなくそれに耳を傾けつつも、僕の心は一向に晴れない。
一日の始まりという本来ならば晴れやかな気分で迎えるものが、今朝はひどく憂鬱だった。それもこれも、すべては昨日の出来事が原因だ。
僕の前に兄として現れた朱音という謎の男。けれども、僕に兄なんていなかった。
昨晩、それとなく両親に探りを入れたがどちらも朱音の存在を覚えていなかった。
当然と言えば当然の反応だ。一体、朱音はいつから矢沢家に紛れていたのだろうか。
両親が覚えていないということは、昨日一日だけだったのだろうか。家中隈なく見て回ったが、朱音がいたという証拠はなにもない。もしかして、すべては僕の悪い夢だったのだろうかという気さえしてきた。
どちらにしろ、気味が悪い。すぐにでも忘れてしまいたいが、去り際の朱音の顔が頭から離れない。僕を見下ろす彼の目は、ひどく冷たかった。そして、同時に残された言葉も引っ掛かる。
『おまえが、俺の主になる資格はない』
あれは一体どういうことなのだろうか。主とは、なんのことだ。まったくもってわけがわからない。
もしや頭のおかしな人の妄想劇に付き合わされたのだろうか。でも、そう考えるとどうして僕が当然のように居もしない兄の存在を受け入れていたのか説明がつかない。
そういえば、神やあやかしなどありえないことを力説していたが、もしやあれは本当のことだったりして。いや、そんなわけないか。
あるわけないのだ。そんなこと。やたら渇く喉を癒そうと、窓を離れる。
両親は朝早くから仕事のため、この時間は僕ひとりだ。
適当にパンでも焼いて朝食にしよう。確か冷蔵庫にヨーグルトもあったはずだ。この間買ってきたイチゴジャムを入れても美味しいだろう。そうだ、そうしよう。
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