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119 嫌がらせしてる?

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 ライアンとリッキーがお付き合いしているという衝撃事実をうっかりリオラお兄様に教えてしまった。

 どうしよう。これどうしよう。

 リオラお兄様が何も知らなければ、お兄様によるリッキーへの嫌がらせも行われないわけで。そう考えると、ぼくはすごく余計なことをしてしまったような気がする。ごめんね、リッキー。ぼく内緒にするの難しかった。

 冗談と言って誤魔化そうか。しかし「え? あのふたりが? 全然わからなかった」と真剣にぶつぶつ言うリオラお兄様は、今更冗談だと言っても信じてくれないだろう。あっさり受け入れるあたり、本当は薄々怪しいと思っていたのではないだろうか。だって隙だらけだもん。よくふたりきりで会話している場面を目撃する。

 これからぼくにできることは、お兄様がリッキーへの嫌がらせをしないよう見張ることだけ。

「お兄様ぁ」

 考え込むリオラお兄様は、「ん?」と顔を上げる。なんでそんなに真剣なのだろうか。

 やっぱりお兄様はライアンのことが好きで、そんなライアンとお付き合いを始めたリッキーのことが許せないのかもしれない。これはいけない。ぼくの未来がピンチ。巻き込まれ破滅ルートだけはなんとか回避したい。

「リッキーはいい人。ライアンはちょっぴり嘘つきのほんのちょっと悪い人」
「ライアンは優しいだろう?」

 優しいけど、大嘘つきでもある。
 シャルお兄さんとガストン団長は同一人物だと言ってぼくを揶揄ってくる。リオラお兄様だってそれに騙されている。だからちょっとだけ悪い人。

「リオラお兄様には、もっといい人います。大丈夫。ぼくが責任持って探してあげます」
「探してあげるって何を?」
「リオラお兄様の新しい恋人さん」
「……え?」

 驚いたように目を丸くするリオラお兄様は、「なんて?」と聞き返してくる。

「だから。お兄様の恋人さん」
「は?」

 丁寧に繰り返してあげるのに、お兄様は引き攣った顔であんまり理解してくれない。なぜ。

 懸命に頑張るぼくを横目に、ロルフは我慢できないといった様子で笑っている。ジョナスもやっぱり笑っている。お兄様だけがぽかんとしていた。

「えっと、アル?」
「なんですか」
「私は自分で見つけるからね、恋人。だから私のことは気にしないで」
「ダメぇ。リオラお兄様は恋愛下手くそだからぼくが見つけてあげます」
「下手くそ……?」

 呆然とするリオラお兄様に、ついにジョナスまでもが声をあげて笑った。それを睨んで制するお兄様は、「そんなことないと思うけど」とぼくを諭すように優しい声を出す。

 そんなことあるんだな、これが。

 原作小説において、リオラお兄様は恋愛下手くそ過ぎて破滅したもん。

「だからリッキーに意地悪しないでください」
「え」

 間抜けな声を発するお兄様は、「ちょっと待って!」とぼくに手のひらを突きつけてきた。待てと言われたら待ってあげる。ぼくは優しいから。

「どうして私がリッキーに意地悪しないといけないんだい?」

 それ聞いちゃう?

 くるっとロルフを振り返るが、彼は笑うのに忙しそうでぼくの視線に気が付かない。仕方がないのでひとりでリオラお兄様に立ち向かうことにする。

「それはリオラお兄様がライアンのこと好きだからでーす」

 簡潔に説明するが、お兄様は「え?」と面食らう。

 そうしてぼくとロルフを見比べたお兄様は、「違うよ?」と妙な返答を寄越してきた。違うってなに。違わないもん。

「お兄様はライアンのこと好きじゃないの?」
「そういう恋愛的な意味では好きじゃないよ」
「うそだぁ」

 思わず口元を押さえるぼくに、お兄様は「嘘じゃないよ」と念押ししてくる。そうなの?

 でもリオラお兄様はライアン好きすぎて破滅するのだ。ぼくが五歳だから誤魔化しているだけかもしれない。
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