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第五章 「変化する情勢と共に。」

「リルを信じてあげて。」

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 「いいかい、アラン....今、アランがリルに対して不満に思っていることは、主に3つあるだろう??1つ目に、リルが王室関係者の方々にウソをついたと思っていること。そして2つ目に、王室関係者に自分が次期妃にふさわしくないと言われていたにもかかわらず、リルは自分の意見を強引に通したと思っていること。そして3つ目は、リルに対して感じている自分の心情の変化について。....どう???僕の考えは、当たっている???」

 ナノのこの言葉にアランは、図星だったためか唇をわなわなと震わせて、目の前のナノに視線を向けると

 「っ、お前....なんなんだよ....。なんで、俺の考えていることが分かるんだよ。....それに、1つ目と2つ目の思っている事って何だよ。....アイツがやっていたことは事実だろ???なんで、リルを庇うような言い方するんだよ。」

 と言い、悲しそうななんとも言えない表情を浮かべていた。

 そんなアランにナノは、先ほどまで浮かべていた綺麗な笑顔を一瞬で消し、代わりに真剣でとても直視できないような怖い表情をアランに向けると、静かな声色でこう話を始めた。

 「それは...まだ言えないかな。僕ってさ、ほら!ミステリアスなところが、読者に人気だし???......っと、冗談はこれぐらいにして、ここからは真剣な話を始めようか???ねぇ、アラン・リマークくん???」

 「....っ。(なんだ...なんなんだよ。....ナノの表情が変わった瞬間、部屋の空気が一気にどんよりと....嫌だ。早くこの部屋から外に出たい。お願い....誰か助けて。怖い....まるで、ナノが俺の中に入り込んでくるような...心の中を全て見透かされているような...なんとも言えない不快感が...。(汗))」

 「どうしたの???この状況が怖いの???酷く怯えた表情をしているね。でも大丈夫だよ。そんなに気を張らないで。僕は協力したいだけなんだからさ。(笑).....じゃあ、早速話を始めようか。アランは、重大な勘違いをしている。まず始めに、リルが君と血の契約を交わしたと王室関係者に断言したことについて。言っておくけど、リルは嘘はついていないよ。その証拠にアランは昨日、僕のお店にきてクッキーを頬張っていた。....覚えている???クッキーのお皿....僕とアランで別々にしてあったでしょ???それに....一回だけではないよ???アランが遊びに来てくれていた計数回に渡り、毎回アランのクッキーには、僕がリルの採寸時と、居酒屋にお酒を飲みに行ったときに、毎回ちょっとずつ貰っていた血を混ぜていたって感じかな?そして、リルには今日飲ませたドリンクの中に、アランからも採寸時にこっそりともらった血を混ぜていたって訳。つまり、簡単に言えば僕の手によって、君たち二人は神の誓いを果たしてしまったというわけ。....スッキリしたでしょ???(笑)」

 ナノのこの言葉に、アランは途端に猛烈な吐き気を催し、激しく嘔吐き始めた。

 一方アランの様子に、ナノはじっと真剣な表情を浮かべて

 「スッキリではなく、気持ち悪くなっちゃったか...。(ははっ、吐いているアランの姿...いいね。そそられる、そして...たまらなくなるね。リルのものでなければ、俺が悪戯に使っていたのになぁ。)まぁ、いいや。僕はせっかちだから、アランの様子を気にせずに、次の話を始めるとするね。」

 と言い、口を押さえていた手の隙間から、胃液と唾液が混じった斑点を落として、肩で息をしているアランに不敵な笑みを浮かべると、ナノはそのまま次の話を始めたのだった。

 「次はね、次期妃に君がふさわしくないと言われたときに、リルが強引に話を進めたと思っていることについてだよ。いい??あの時...話を進めたのはリルではなく、この僕だ。....それに、君は知らないかも知れないが、あの場で君が時期妃に就任できなければ、君はこれから先残酷な人生を歩む事になっていたんだよ。この意味が君には分かるかい???まぁ、分からないのが当たり前だよ。何故なら、君を不安にさせまいとリルは、その事実を自分の中にずっと、閉じ込めていたのだから。....でも、君の心の声を聞く限り....アラン。君はリルの本当の優しさを、一ミリ足りとも理解していないようだ。これでは、余りにもリルが可哀想だ。仕方ないから、僕が真実を教えてあげるよ。リルはね、君との婚約に自身の命を懸けているんだよ。君がもし、自分の妃に就任できなかった場合は、本来であれば君が全王室関係者から、奴隷以下の酷い扱いを受ける運命を辿るんだけど、今回はその報いを自分が全て背負うという条件の下、リルは君を妃候補に選んだんだ。それが....王室関係者との約束だったんだ。...一方で、アランが妃に就任しても、アラン自身が妃になりたくないと発言した場合....リルは、アランを元いたアバルント・フォーズに帰し、自身はエルミナ国の法律...第462条『国民を集めて行った正式な会では、国王直系の人物の場合に限り、その場で一度示した意向を撤回することは不可である。』という法に則り、リルは罰せられることになっている。だから彼は、なんとしてもアランを自分の妃にしなければならなかったんだ。」

 「....なんだよ、それ....そんなの。」

 ナノの言葉にアランは、迫り来る吐き気を抑えながら何とか声を絞り出していた。

 苦しそうなアランの言葉にナノは、顔色1つ変えずに

 「そんなの、言ってくれなきゃ分からないって???はぁ...リルはね、言えなかったんだ。自分が勘違いされやすい性格だということと....アラン。もしリルが、さっき僕が言ったことを君に話したとして、君はリルの言葉を素直に信じてあげられたかい???.....今の君の心と同じだ。リルは、自分の口から言っても、自分を敵視しているアランには、一言たりとも信じて貰えないと思ったんだ。....確かに、言葉足らずなリルが悪いことだってあるよ。でもね、もう少しリルの言葉を信じてあげて欲しいんだ。勘違いされやすいだけで、凄く優しくて正義感が強くて、変わり者の僕とずっと一緒にいてくれた素敵な人なんだ。ほんの少しで良いんだ。リルの心と、向き合ってやって貰えないだろうか...。」

 と言い、アランをじっと見つめていた。

 そんなナノの言葉にアランは、苦しそうな表情を浮かべつつ、グッと唇と噛みしめると小さく頷いたのだった。

 アランの様子にナノは、満足そうな表情をすると、アランに優しい表情を向け、こう声を掛けた。

 「はぁ....良かった。アランのその言葉...信じることにするからね。リルの気持ち...ちゃんと聞いてあげてね。じゃあ最後に、アランのリルに対しての心情の変化について....。単刀直入に言うね???アラン、君は....リルに惚れているのだろう???本当は、リルに少し考える時間が欲しいと言ったときから、リルの気持ちを邪険に扱うつもりは微塵もなかったのだろう???.....少なからず、リルの気持ちは分かっていたはずだ。....アラン、いいかい。僕が、今から言うことをよく聞くんだよ???....人間は何回も失敗する生き物だ。だけどね、時には絶対に間違えてはいけない重大な選択がある。でも、そのタイミングはいつ来るか分からない。アランは賢い子だから、きっとこの言葉の意味が理解出来ていると思っているよ。つまりは、自分に正直に...失敗したときに後悔しないように....全ては、ランダムに来る重大な選択に対応するためだよ。....アランは、これからどうすればいいのか....分かるよね?」

 ナノのこの言葉と共に、先ほどまで部屋に漂っていた重々しい空気は消え去っており、明るく優しいいつも通りのナノがそこにいた。

 そんなナノの顔を真っ直ぐに見つめながらアランは

 「....分かっているよ。....俺、もう道を間違えたくない...家族を失った...あの時みたいに、後悔したくないから。」

 と真剣な表情で告げると、そのままソファから立ち上がり、リルの待つ自身の部屋へと足早に向かったのだった。

 そんなアランの様子に、クスッと微笑みを浮かべていたナノは

 はぁ....まったくもう....二人とも、拗らせすぎなんだよ。

 結局、最後まで僕が二人の面倒を見るはめになったじゃないか...。

 まぁでも、僕の秘めたる能力の数々は....読者の人気を僕に集中させるためにも、もう暫くは黙っておこうと思うよ。(笑)

 さぁて、丁度良い時間だし、僕のお友達にご飯でもあげに行ってこようかな。

 可愛い可愛い....僕のお友達にね。(笑)

 と心の中でこう考えると、そのまま自身のポケットから小さな小袋を取り出し、独り嬉しそうな表情を浮かべると部屋を出て行ったのだった。
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