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第四章 「動き出した偽り。」
「父上、いや...国王様にお話がございます。」
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「父上、私です。少々、お話があります。」
「....リル王子。国王様は、今大切なお話をされています。事前に謁見を申し込み下さい。例え親族といえども、ここは王室の中で、あなたはこの国のいち王子なのですよ????もう少し王子という自覚をお持ちください。」
「嫌だ、断る。急を要することなんだ。父上に逢わせてくれ!!!!」
「なっ!!!!国王様に対して何という無礼を....。リル王子、先ほども申しましたが、あなたは一国の王子なのですよ。物わかりが悪いのは感心されませんよ????」
「っ、部屋の中まで声が聞こえておる。仕事の邪魔だ。リル...一体何の用なんだ。それとモービス.....お前は下がっとれ!!!!『しかし...!!!!!』...聞こえなかったか???言っておくが、お前の首を飛ばすことなど、書類一枚で片がつくんだぞ???」
リルが部屋を出て足早に向かったのは、自分の父親でありエルミナ国の現国王であるロンラスの部屋であった。
リルが部屋の前でロンラスを呼ぶと、部屋のドアを開けて出てきたのはロンラス....ではなく、ロンラスの使用人であるモービスであった。
モービスはリルの顔を見ると、訝しげな表情を浮かべ、早々にリルのことを追い返そうとした。
見ての通り、モービスはリルのことをあまり好んでいない。
その証拠に、リルと話をするときは決まって、不機嫌そうな口調で話を進めるのだ。
リルもモービスに嫌われていることは重々理解しているようで、モービスへ警戒心を払いながら慎重に会話をしていた。
モービスが、エルミナ国の王子であるリルに対して、このような態度が許される理由としては....彼は、リルが幼い頃からの専属の教育係であったからだ...。
そんな二人の会話が少々騒がしかったためか、仕事途中のロンラスが不機嫌そうな表情で部屋から顔を出した。
ロンラスは、普段自分の部屋をめったに訪ねてくることがないリルの様子に、何か訳があるのだと思い、文句を吐くモービスを言葉で脅し、半ば強引にモービスを下がらせたのだった。
「....申し訳ありません、国王様...。謁見の申し込みもせずに、いきなり部屋を訪ねてしまい....大変失礼を致しました。」
「いや、いい。それに今日の仕事は、もう済んだ。つい先ほど、隣国のマティ嬢から連絡があってな....本日のパーティーは、延期させて欲しいそうだ。全く、どういった風の吹き回しなんだか...。お前も、マティ嬢の城に行ったと聞いてはいたが、既に自分の城に戻ってきているしな....何か訳があるのだろう????とりあえず、ずっと立っていないで座ったらどうだ???」
「....はい、ではお言葉に甘えて。」
リルは、ロンラスの言葉に若干焦った表情をしたが、マティ嬢のパーティーが延期になったとのことだったため、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
そんなことはさておき、リルはふかふかのソファに腰を掛け、目の前に座るロンラスへと真剣な表情で口を開いた。
「父上、お話があります。俺の妃候補であるリオン・リマークについてです。父上は、リオン一家のことをご存じなのですよね???だから、リオンがこの国に来たときから、あまりいいお顔をされなかった。今の俺の発言....俺が貴方に対して述べていることは間違っていますか???」
リルの言葉に、ロンラスは一瞬肩をぴくっとさせたが、表情はそのままでリルの真剣な顔を見つめると
「....だったら何だと言うんだ???あぁ、そうだよ。俺がもう少し若い頃だったかな....。あれは...もう10年以上前だな。その頃に隣国にいたリマーク一家を重罪犯の罪で、皆処刑した。だが、これは明確な理由...正義の元行われた殺しだ。俺が悪いわけではない。全て、この国が決めたことだ。」
と言って、自分は悪くないと罪の意識を全く持っていないとの意思表明をした。
ロンラスの口ぶりに、信じられないと言った表情をしたリルは、表情一つ変えないロンラスに対して
「....リオンは、酷く心を病んでいます。そして、この国のことも恨んでいる。しかもリマーク一家は、無実の罪で皆殺しにされたと伺った。....国王様、お願いです。リオン・リマークに....謝罪を要求します。それと....全国民に、これまであなた方が行ってきた悪事全ての公表も要求します。私たちが行ってきたことは、決して許されることではありません。それは国王である貴方なら、幼少期に一番始めに教養として学んだことではありませんか????私は、そうでした。モービスさんからでしたが、国民からの信頼が何よりも優先すべき大切なことである私たちは、自分たちが行ってきたことを国民に胸を張って堂々と言える事が大切だと....。ロンラス国王様、今までのことを全て国民に打ち明けましょう。国王様も、この国の歪みに薄々気がついていたのではありませんか???....今こそ、このタイミングで、この歪みきった情勢を何とかするべきではないですか!???」
とソファを勢いよく立ち上がり、必死にロンラスへと訴えかけた。
そんなリルの様子に、最初こそ驚いた表情をしていたが、最終的にはリルの言葉を鼻で笑い、
「フンっ。何を生意気な事を抜かしているのだ???私たちがこれまでやってきたことのおかげで、今の国民共は優雅な暮らしが送れているのだ。それをなんだ???まるでお前は、俺がこの国の民を罰したことで、この国がおかしくなった...と言っているようではないか???若いくせに生意気を....そんなくだらない話をしに来たのであれば無駄だ。とっとと部屋に帰れ。お前と話している時間はない。」
と言って、ソファを立ち上がり自身の仕事机へと向かったのだった。
偉そうなロンラスの様子に、リルはグッと自身の手を握りしめると、ロンラスの背中に対して、
「...待て。お前のやってきたことを、全て暴露してやってもいいんだぞ???お前は、国民をオモチャと同等に....いや、それ以下として扱ってきたんだ。自分の胸に手を当てて、もう一度よく考えてみろ。お前がやったことは、自身の快楽の為だけに行われた立派な殺害だ。つまり...分かるよな???この国で殺人は重罪だ。お前は、重罪を犯したんだ。何度も何度も...。これは、一国の王としてあるまじき行為。必ず.....国民に発言すべきだ。....もし発言しないのであれば、俺は王子の地位を捨て、国民にこれまでの王室の不祥事全てを暴露させてもらう。どうだ???.....ごめん、父さん。もう俺は、昔の俺ではない。何でもほいほい敷かれたレールの上を歩むことは、もうやめたんだ。だから俺は....父さんに間違っているって....何度でも言うよ。俺は、もう子供ではない。一国の...我がエルミナ国のいち王子なんだ。国を....一生懸命ついてきてくれている国民を、俺は裏切りたくない。もう....リオンのように悲しい思いをする人を、これ以上増やしたくないんだ。王族のことを恨む人を、一人でも少なくしたい。だからこそ、俺は間違いを正したい。これまでこの国の行ってきたことで悪かった点は、今からでも国民に謝罪したい。もう遅いかも知れない。でも....謝らないよりは、謝る方が何千倍もいい。....少なくとも、俺はこう思うよ。だから......俺はこの国と戦う。この国を、良い方向に持っていくために。理由は簡単だ。俺は、この国が大好きだからだ。大切なこの国を守るためなら....そのためなら、俺は何回でも戦えるよ。」
と言い放った。
リルの言葉にロンラスは、グッと唇を噛みしめるとリルの方を振り向き
「お前がどうこうしたところで、この国が変わるわけがないだろう。そんなにこの国が嫌なら、今すぐに王子の権利を剥奪してやる....『....きぃ~チャッタ~。きぃちゃったよ!!!!ロンラス国王様は、やっぱり色んな不祥事を隠蔽していたんだねぇ~。いやぁ、僕もね??最初から、おかしいとは思っていたんだよね????まぁ、僕ってさ....雇われの身だから、何も言うことが出来なかったけど.....リル王子の言っていることは、これっぽっちも間違っていないと思うし、出来れば俺もその意見に賛成したいところだね。』....っ....お前は、リルの仕立屋.....ナノではないか!????何故ここに????お前の低身分では、ここに出入りすることは出来ないはずだぞ???...警備はどうしたのだ????」
ロンラスの言葉にリルが覚悟を決めた瞬間、部屋の背後から最近登場回数がどんどん増えてきているナノが、ロンラスにこう声をかけたのだった。
ナノの言葉にロンラスは困惑した様子で、この状況を理解しようと必死になっていた。
そんなロンラスにナノは、陽気な声色で
「それが出来ちゃうんだよね~。何でか分かる????ボクってさぁ~、凄い巨大なコミュニティーを作るのが得意なんだよね~。だからさ、この屋敷の中にいる人は、全員が僕の味方なわけ。いやぁ、ここまでくるのに大分苦労したんだからね???というよりも、僕がこの仕事をしている本当の理由を教えてあげようか???僕はね、この国が大嫌いだ。特にアンタ。ロンラス国王様よぉ~~~。アンタの政治の取り方は納得がいかない。裕福層にだけありがたい政策作ってどうすんだよ。国民からお金巻き上げているクセして、マジであり得ないでしょ。だから、この国をなんとかしてもらいたいなぁって思っていたら、僕の店に昔からの友人であるリルが来てくれてね???そこからだよ、国王様。言っておくけど、現にアンタの取っている政治で満足しているのは、国民の約0.1%だけだから....勿論、裕福層のみ。残りはみ~んな、少なからずアンタの思考に不満を持っているよ。不人気投票があれば、圧倒的1位だね。」
と言ってのけた。
ナノは始めこそ陽気な口調で話をしていたが、次第に自身のロンラスに対する不満が募っていったのか、最後にはロランスに対して毒を吐きまくっていた。
そんな言いたい放題なナノの様子に、それまでじっと黙っていたリルが
「....ナノ。俺....初めて聞いた。お前はずっと、この国への不満を解消したいと思って俺と接していたのか???俺.....そんなこと全く知らなかった。」
と、ずっと信じてきた相手に裏切られた気がしたのか、目に涙を溜めてナノを見つめて次の言葉を待っていた。
リルの表情にナノは小さくため息をつくと
「はぁ、あのねぇ~リル???お前は人を疑わなさすぎるんだ。それがお前の悪い癖だよ。一国の王子なんだったら当たり前だけど、まずは人を疑うことから始めないとね。人間は、皆いい人ばかりじゃないんだよ???」
と言って、リルの肩をぽんっと軽く叩いたのだった。
リルはナノの言葉にそれ以上何も言うことが出来ず、黙り込んでしまった。
すっかり大人しくなったリルにナノは、何も言わずにロンラスへと話を戻した。
「それで....ロンラス国王様????どうするわけ????このまま行けば、アンタは確実にこの国の国民達によって殺されるだろうね???そうならないためにも、ここで何とか手を打っておく方が得策だと思うけどね???」
ナノのこの言葉にロンラスは、一瞬ためらう表情を浮かべ、苦しそうにうなり声を上げた。
そうして少しの間悩んだ末に
「....くそっ、俺の政治の何処が気に入らないんだよ。これほどまでに、国民の事を考えた政治は無いと思うがな。」
というと、何も言わないリルに向けて
「.....勝敗の敗だ。明日、急遽.....国民に向けて表明を行う。俺のやってきた政治とともに、悪事を払拭してやる。以上だ。これから準備に取りかかる。準備の邪魔だ...お前らは、早急に部屋を出て行け。」
と乱暴に声を掛けると、そのまま奥の部屋へと消えていったのだった。
取り残されたリルとナノは、互いに黙り続けそれから両者一言も発さないまま、カップうどんが出来上がる時間になろうとしたその時、ナノがリルに一言
「....なぁリル???おなか空かないか????」
と言ったことで、二人の間に流れていた緊迫した空気が一気に和らいだのだった。
「あのなぁ、第一声がそれか。(笑)まぁ、たしかにおなかは空いたが....。でも、お前...いいのか。あんなこと言って...父上は案外しぶとい人だぞ????なんて言ったって、俺の親なわけだしな。」
「いいに決まっているだろ????というよりも、もしかしてリルって、僕の言葉全部信じたの???たしかにこの国の政治には、不服ばかりあったよ???でもね、リル。君のことは大好きだ。君を利用しようと思った事なんて、今まで一度も無いんだよ????仕方ないなぁ.....本当は恥ずかしいけど、その疑ったままの目つきを何とかして欲しいから、久しぶりに僕いきつけの居酒屋で飲みながら話をしないか???リルに、これからのことも踏まえて伝えておきたいことが沢山あるんだ。」
ナノのこの言葉に、リルはこくりと頷き、ナノと共に普段は絶対にいけない庶民の憩いの場である飲み屋へと足を運ぶことになったのだった。
「....リル王子。国王様は、今大切なお話をされています。事前に謁見を申し込み下さい。例え親族といえども、ここは王室の中で、あなたはこの国のいち王子なのですよ????もう少し王子という自覚をお持ちください。」
「嫌だ、断る。急を要することなんだ。父上に逢わせてくれ!!!!」
「なっ!!!!国王様に対して何という無礼を....。リル王子、先ほども申しましたが、あなたは一国の王子なのですよ。物わかりが悪いのは感心されませんよ????」
「っ、部屋の中まで声が聞こえておる。仕事の邪魔だ。リル...一体何の用なんだ。それとモービス.....お前は下がっとれ!!!!『しかし...!!!!!』...聞こえなかったか???言っておくが、お前の首を飛ばすことなど、書類一枚で片がつくんだぞ???」
リルが部屋を出て足早に向かったのは、自分の父親でありエルミナ国の現国王であるロンラスの部屋であった。
リルが部屋の前でロンラスを呼ぶと、部屋のドアを開けて出てきたのはロンラス....ではなく、ロンラスの使用人であるモービスであった。
モービスはリルの顔を見ると、訝しげな表情を浮かべ、早々にリルのことを追い返そうとした。
見ての通り、モービスはリルのことをあまり好んでいない。
その証拠に、リルと話をするときは決まって、不機嫌そうな口調で話を進めるのだ。
リルもモービスに嫌われていることは重々理解しているようで、モービスへ警戒心を払いながら慎重に会話をしていた。
モービスが、エルミナ国の王子であるリルに対して、このような態度が許される理由としては....彼は、リルが幼い頃からの専属の教育係であったからだ...。
そんな二人の会話が少々騒がしかったためか、仕事途中のロンラスが不機嫌そうな表情で部屋から顔を出した。
ロンラスは、普段自分の部屋をめったに訪ねてくることがないリルの様子に、何か訳があるのだと思い、文句を吐くモービスを言葉で脅し、半ば強引にモービスを下がらせたのだった。
「....申し訳ありません、国王様...。謁見の申し込みもせずに、いきなり部屋を訪ねてしまい....大変失礼を致しました。」
「いや、いい。それに今日の仕事は、もう済んだ。つい先ほど、隣国のマティ嬢から連絡があってな....本日のパーティーは、延期させて欲しいそうだ。全く、どういった風の吹き回しなんだか...。お前も、マティ嬢の城に行ったと聞いてはいたが、既に自分の城に戻ってきているしな....何か訳があるのだろう????とりあえず、ずっと立っていないで座ったらどうだ???」
「....はい、ではお言葉に甘えて。」
リルは、ロンラスの言葉に若干焦った表情をしたが、マティ嬢のパーティーが延期になったとのことだったため、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
そんなことはさておき、リルはふかふかのソファに腰を掛け、目の前に座るロンラスへと真剣な表情で口を開いた。
「父上、お話があります。俺の妃候補であるリオン・リマークについてです。父上は、リオン一家のことをご存じなのですよね???だから、リオンがこの国に来たときから、あまりいいお顔をされなかった。今の俺の発言....俺が貴方に対して述べていることは間違っていますか???」
リルの言葉に、ロンラスは一瞬肩をぴくっとさせたが、表情はそのままでリルの真剣な顔を見つめると
「....だったら何だと言うんだ???あぁ、そうだよ。俺がもう少し若い頃だったかな....。あれは...もう10年以上前だな。その頃に隣国にいたリマーク一家を重罪犯の罪で、皆処刑した。だが、これは明確な理由...正義の元行われた殺しだ。俺が悪いわけではない。全て、この国が決めたことだ。」
と言って、自分は悪くないと罪の意識を全く持っていないとの意思表明をした。
ロンラスの口ぶりに、信じられないと言った表情をしたリルは、表情一つ変えないロンラスに対して
「....リオンは、酷く心を病んでいます。そして、この国のことも恨んでいる。しかもリマーク一家は、無実の罪で皆殺しにされたと伺った。....国王様、お願いです。リオン・リマークに....謝罪を要求します。それと....全国民に、これまであなた方が行ってきた悪事全ての公表も要求します。私たちが行ってきたことは、決して許されることではありません。それは国王である貴方なら、幼少期に一番始めに教養として学んだことではありませんか????私は、そうでした。モービスさんからでしたが、国民からの信頼が何よりも優先すべき大切なことである私たちは、自分たちが行ってきたことを国民に胸を張って堂々と言える事が大切だと....。ロンラス国王様、今までのことを全て国民に打ち明けましょう。国王様も、この国の歪みに薄々気がついていたのではありませんか???....今こそ、このタイミングで、この歪みきった情勢を何とかするべきではないですか!???」
とソファを勢いよく立ち上がり、必死にロンラスへと訴えかけた。
そんなリルの様子に、最初こそ驚いた表情をしていたが、最終的にはリルの言葉を鼻で笑い、
「フンっ。何を生意気な事を抜かしているのだ???私たちがこれまでやってきたことのおかげで、今の国民共は優雅な暮らしが送れているのだ。それをなんだ???まるでお前は、俺がこの国の民を罰したことで、この国がおかしくなった...と言っているようではないか???若いくせに生意気を....そんなくだらない話をしに来たのであれば無駄だ。とっとと部屋に帰れ。お前と話している時間はない。」
と言って、ソファを立ち上がり自身の仕事机へと向かったのだった。
偉そうなロンラスの様子に、リルはグッと自身の手を握りしめると、ロンラスの背中に対して、
「...待て。お前のやってきたことを、全て暴露してやってもいいんだぞ???お前は、国民をオモチャと同等に....いや、それ以下として扱ってきたんだ。自分の胸に手を当てて、もう一度よく考えてみろ。お前がやったことは、自身の快楽の為だけに行われた立派な殺害だ。つまり...分かるよな???この国で殺人は重罪だ。お前は、重罪を犯したんだ。何度も何度も...。これは、一国の王としてあるまじき行為。必ず.....国民に発言すべきだ。....もし発言しないのであれば、俺は王子の地位を捨て、国民にこれまでの王室の不祥事全てを暴露させてもらう。どうだ???.....ごめん、父さん。もう俺は、昔の俺ではない。何でもほいほい敷かれたレールの上を歩むことは、もうやめたんだ。だから俺は....父さんに間違っているって....何度でも言うよ。俺は、もう子供ではない。一国の...我がエルミナ国のいち王子なんだ。国を....一生懸命ついてきてくれている国民を、俺は裏切りたくない。もう....リオンのように悲しい思いをする人を、これ以上増やしたくないんだ。王族のことを恨む人を、一人でも少なくしたい。だからこそ、俺は間違いを正したい。これまでこの国の行ってきたことで悪かった点は、今からでも国民に謝罪したい。もう遅いかも知れない。でも....謝らないよりは、謝る方が何千倍もいい。....少なくとも、俺はこう思うよ。だから......俺はこの国と戦う。この国を、良い方向に持っていくために。理由は簡単だ。俺は、この国が大好きだからだ。大切なこの国を守るためなら....そのためなら、俺は何回でも戦えるよ。」
と言い放った。
リルの言葉にロンラスは、グッと唇を噛みしめるとリルの方を振り向き
「お前がどうこうしたところで、この国が変わるわけがないだろう。そんなにこの国が嫌なら、今すぐに王子の権利を剥奪してやる....『....きぃ~チャッタ~。きぃちゃったよ!!!!ロンラス国王様は、やっぱり色んな不祥事を隠蔽していたんだねぇ~。いやぁ、僕もね??最初から、おかしいとは思っていたんだよね????まぁ、僕ってさ....雇われの身だから、何も言うことが出来なかったけど.....リル王子の言っていることは、これっぽっちも間違っていないと思うし、出来れば俺もその意見に賛成したいところだね。』....っ....お前は、リルの仕立屋.....ナノではないか!????何故ここに????お前の低身分では、ここに出入りすることは出来ないはずだぞ???...警備はどうしたのだ????」
ロンラスの言葉にリルが覚悟を決めた瞬間、部屋の背後から最近登場回数がどんどん増えてきているナノが、ロンラスにこう声をかけたのだった。
ナノの言葉にロンラスは困惑した様子で、この状況を理解しようと必死になっていた。
そんなロンラスにナノは、陽気な声色で
「それが出来ちゃうんだよね~。何でか分かる????ボクってさぁ~、凄い巨大なコミュニティーを作るのが得意なんだよね~。だからさ、この屋敷の中にいる人は、全員が僕の味方なわけ。いやぁ、ここまでくるのに大分苦労したんだからね???というよりも、僕がこの仕事をしている本当の理由を教えてあげようか???僕はね、この国が大嫌いだ。特にアンタ。ロンラス国王様よぉ~~~。アンタの政治の取り方は納得がいかない。裕福層にだけありがたい政策作ってどうすんだよ。国民からお金巻き上げているクセして、マジであり得ないでしょ。だから、この国をなんとかしてもらいたいなぁって思っていたら、僕の店に昔からの友人であるリルが来てくれてね???そこからだよ、国王様。言っておくけど、現にアンタの取っている政治で満足しているのは、国民の約0.1%だけだから....勿論、裕福層のみ。残りはみ~んな、少なからずアンタの思考に不満を持っているよ。不人気投票があれば、圧倒的1位だね。」
と言ってのけた。
ナノは始めこそ陽気な口調で話をしていたが、次第に自身のロンラスに対する不満が募っていったのか、最後にはロランスに対して毒を吐きまくっていた。
そんな言いたい放題なナノの様子に、それまでじっと黙っていたリルが
「....ナノ。俺....初めて聞いた。お前はずっと、この国への不満を解消したいと思って俺と接していたのか???俺.....そんなこと全く知らなかった。」
と、ずっと信じてきた相手に裏切られた気がしたのか、目に涙を溜めてナノを見つめて次の言葉を待っていた。
リルの表情にナノは小さくため息をつくと
「はぁ、あのねぇ~リル???お前は人を疑わなさすぎるんだ。それがお前の悪い癖だよ。一国の王子なんだったら当たり前だけど、まずは人を疑うことから始めないとね。人間は、皆いい人ばかりじゃないんだよ???」
と言って、リルの肩をぽんっと軽く叩いたのだった。
リルはナノの言葉にそれ以上何も言うことが出来ず、黙り込んでしまった。
すっかり大人しくなったリルにナノは、何も言わずにロンラスへと話を戻した。
「それで....ロンラス国王様????どうするわけ????このまま行けば、アンタは確実にこの国の国民達によって殺されるだろうね???そうならないためにも、ここで何とか手を打っておく方が得策だと思うけどね???」
ナノのこの言葉にロンラスは、一瞬ためらう表情を浮かべ、苦しそうにうなり声を上げた。
そうして少しの間悩んだ末に
「....くそっ、俺の政治の何処が気に入らないんだよ。これほどまでに、国民の事を考えた政治は無いと思うがな。」
というと、何も言わないリルに向けて
「.....勝敗の敗だ。明日、急遽.....国民に向けて表明を行う。俺のやってきた政治とともに、悪事を払拭してやる。以上だ。これから準備に取りかかる。準備の邪魔だ...お前らは、早急に部屋を出て行け。」
と乱暴に声を掛けると、そのまま奥の部屋へと消えていったのだった。
取り残されたリルとナノは、互いに黙り続けそれから両者一言も発さないまま、カップうどんが出来上がる時間になろうとしたその時、ナノがリルに一言
「....なぁリル???おなか空かないか????」
と言ったことで、二人の間に流れていた緊迫した空気が一気に和らいだのだった。
「あのなぁ、第一声がそれか。(笑)まぁ、たしかにおなかは空いたが....。でも、お前...いいのか。あんなこと言って...父上は案外しぶとい人だぞ????なんて言ったって、俺の親なわけだしな。」
「いいに決まっているだろ????というよりも、もしかしてリルって、僕の言葉全部信じたの???たしかにこの国の政治には、不服ばかりあったよ???でもね、リル。君のことは大好きだ。君を利用しようと思った事なんて、今まで一度も無いんだよ????仕方ないなぁ.....本当は恥ずかしいけど、その疑ったままの目つきを何とかして欲しいから、久しぶりに僕いきつけの居酒屋で飲みながら話をしないか???リルに、これからのことも踏まえて伝えておきたいことが沢山あるんだ。」
ナノのこの言葉に、リルはこくりと頷き、ナノと共に普段は絶対にいけない庶民の憩いの場である飲み屋へと足を運ぶことになったのだった。
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