ダメな私と吸血鬼

第6章 「エピーヌの過去。」

俺に...俺の過去を...お前に。

 ラグルが向かったのは...ニーソンの家だった。
ガチャっと玄関のドアを開け、中に入るラグルの姿を、肩を落としうなだれていたニーソンが目にとめると、途端に険しい表情をして、家に入ってきたラグルに飛びかかった。
「...てめぇ！！なんで帰ってきたんだよ！！！もう来るなって言っただろ！？？？（怒）しかもなんだ...！！......えっ...お前...泣いてる...？？」
と言ってラグルの胸元を掴み、ニーソンは、怒鳴り散らしたが...ラグルの顔を見た瞬間、彼が泣いているのがわかり咄嗟に手の力を緩めた。
「...いや...泣いていない。...すまない。やはり、もう少し頭を冷やす時間が必要だな...。夜分に失礼したな...。」
と言って踵を返しニーソンの家から出ていこうとした瞬間、ニーソンは、咄嗟にラグルを背後から抱きしめた。
「...まて、ラグル...。お前が人前で泣くなんて...初めてだろ...。一体、何があったんだ...。（汗）...ごめん、ごめんな...。俺がもっとお前の気持ち考えていれば...。あの時は、エピーヌが居なくなった時は、エピーヌのことで頭がいっぱいでお前のことを考えずに、自分の気持ちをぶつけて...エピーヌを止められなかったことをお前のせいにしたんだ...。（泣）こんな弱い俺を、許して欲しい...。」
そんなニーソンの様子に、ラグルは目を丸くして
「えっ...いや、それはこっちのセリフで...。俺も、エピーヌを止めることが出来なかったのは...エピーヌの過去を俺の過去と重ね合わせて...弱い自分の姿がバレたくなかっただけなんだ...。（泣）」
「...えっ、それってどういう...『俺は、お前にずっと隠していたことがあるんだ...。俺が、人間と吸血鬼のハーフだって話は、知ってるだろ...。俺が...処罰を受けずにこうして生きていられるのは、自分を売っているからなんだ...。自分の血をモーリア夫妻に売って...本当は、魔族と人間のハーフの血を売買することも法律で固く禁止されている...。禁止されているが...俺は、死ぬのが怖くて...モーリア夫妻の言いなりになったんだ...。魔界と人間界の繋がりを調べているのだってそうだ...。モーリア夫妻に依頼されたから...。奴らは、なにかよからぬ事を企んでいる...。』...。」
ラグルの話を、無言で聞いていたニーソンは、ラグルから体を離し、ラグルの目の前に立つと
「...だから、どうしたって言うんだ？？？弱い自分を守っていたからと言って...それが、悪いことではないだろ...？？皆、そうして生きている...。お前だけじゃない...。なぁ、どうして一人で考えこんでいたんだよ...。俺らは、友人以上の絆で結ばれているだろ！？...この際だから、俺も言うけど...俺は...っ！？？」
ニーソンがラグルに何かを話そうとしたが...ラグルが瞬間移動でニーソンの背後に周り手で口を塞ぐと
「...今は、まだ言いたくないんだろ...？？だったら、言わなくていい...。自分のペースで...構わない...。」
と言ってラグルがニーソンの口から手を離し、ニーソンから身体を離すと必死に赤面した顔を下に向けていた。ラグルは、普段は、あまり人を慰めるようなことをしない男だ。
 そんなラグルにニーソンは、目から涙を流し...次の瞬間、ラグルに飛びついた。
「ラグル...！！俺...お前が親友でよかった！！！うぐっ...ラグル！！！！（泣）『おっ、おい！やめろ！！気持ち悪い...あー！！！！！鼻水つけるな！！！！汚い！！！うわっ！！！助けてくれ！！！！（汗）』。」
と言って涙をボロボロ流しながら、背中に抱きついているニーソンに、戸惑った顔をして叫ぶラグルなのであった。
「...頼むから...ベタベタするな！！！（汗）」