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第5章 「悪魔の囁き。」

5-4話 「ロンデルさんは、おじいちゃん!」

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 荷物を持った面々は、ラボンに続いてロンデルさんの屋敷を目指していた。
「ここが、ロンデルさんの屋敷だよ!!ちょっと待ってね、ロンデル・シオン・レナーゼイン様。夜分に申し訳ありません。ラボンです。ラボン・ファルヴェンです。」
ラボンの呼びかけに、屋敷の中からは、低くて威厳を感じる声が聞こえてきた。
「入れ...ラボン。」
 その瞬間、侍従とエピーヌ...ニーソンは、ゴクリと唾を飲み込み気を引き締めたのだった(だって...声色が取り立てみたいだったから...なんて言えないけど...。)。
 そうして、屋敷の中に入りロンデルの居る部屋へと足を踏み入れた一行は、目を丸くして口をあんぐりと開けていた。
 それもそのはず、目の前に座っているのは...さっきの声色からは想像もつかないような...笑顔が特徴的な気さくなおじいさんがいたのだから。
 ラボンは、一行の口の大きさを特に気にした様子もなく、ロンデルの前に歩いていくと猫の姿になり、椅子に座るロンデルを見つめた。
 そんなラボンの姿にロンデルは、笑顔をさらに濃くして、ラボンを抱きしめるとヨシヨシと頭を撫で出した。
「ふぉっふぉっふぉっ!!(笑)やっぱり、ラボンは猫の姿の方がいいの~、さわり心地が最高じゃわい!(笑)」
「ありがたきお言葉、私もロンデルさんに撫でて貰えると心が和みます。(笑)」
 ラボンとロンデルのやり取りに、既に開けていた口をさらに顎が外れるほど大きく開くと、周りの侍従たち...エピーヌやニーソンは何も言えずに、ただじっとことが終わるのを見守っていた。
 そうしてやっとラボンの挨拶も終わり、ロンデルは、ソファへとみんなを促すと、おもむろに温めたミルクを全員に手渡した。
「それで...ラボン???こんな時間にどうしたんじゃ??なにか、問題でも起こったのかの???(汗)」
「えぇ、実は...ラグルさんに悪魔の囁きをかけた人がわかったんです。恐らく...アイラ・グレン・ドウシィー様とアトリー・シオン・レナーゼイン様であると、読んでおります。(汗)」
 こう話をしたラボンは、すっかり人間の格好に戻っており、目の前に腰をかけるロンデルに視線を向けていた。
 そんなラボンの声に、目を見開いたロンデルは、困り果てた顔をしていた。
「はぁ...やはりか...。(汗)恐らくうちの孫も絡んでいるとは、踏んでいたがやはりそうじゃったか...。(汗)...すまんな~、お前にまで迷惑をかけることになるとはのぉ...。(汗)」
 ロンデルの申し訳なさそうな表情にラボンは、慌てて首を360度回りそうなほど勢いよく左右にブンブンと振って否定した。
「いいえ、そんな...ロンデルさんが謝るようなことは何も...!!(汗)」
「いや、わしの身内じゃ...ワシにも責任がある...。(汗)」
 こういって話をしているロンデルとラボンの様子をじっと見つめていたエピーヌは、隣に腰をかけているニーソンにコソッと耳打ちで質問をした。
「ねぇ、ラボンのさっきの言葉って本当かしら??(汗)...ロンデルさんが、アトリー様と家族だってこと...。(汗)」
「うーん、話を聞いている限りだとそういうことらしいね...。(笑)...あっ、そっか...。エピーヌは、アトリー様に求婚されていたんだったっけ??...ごめん、机の上にあった手紙に書いてあったから...。(汗)」
 こう言ってエピーヌに紙切れを手渡したニーソンに、エピーヌは慌てた様子でこういった。
「このこと...他のみんなには黙ってて...。(汗)実はね...婚約も...受けたの...。(汗)」
 エピーヌの一言に目を見張ったニーソンは、慌てた様子でエピーヌに聞き返した。
「何っ!??(驚)婚約を受けたのか...???(汗)エピーヌ...それは、まずい...。(汗)魔界の婚約と人間界の婚約は、全然重みが違うんだ...。(汗)」
「それって...どういうこと...??約束をするだけなんじゃないの...???(汗)」
 ニーソンの言葉に焦った様子のエピーヌは、少し早口でニーソンに聞いた。
 そんなエピーヌに一呼吸置くと、周りのみんなに声をかけた。
「ごめん、エピーヌが少し外の風に当たりたいそうだから...出てくる。」
 こう言うと、エピーヌの手を取り部屋の外へと出た。
 廊下を歩いて、バルコニーらしきところから外へ出ると、握っていた手を離し、ニーソンは背後のエピーヌに向き直りこういった。
「エピーヌ...よく聞いてね??(汗)...エピーヌが考えている結婚の約束と言うのは、解消できるものだと考えているんだよね...???きっと...。でもね、魔界の婚約っていうのは...人間界でいう契約と同じものなんだ。(汗)...契約というのは、昔...領主だった人達間で結ばれていた神との忠誠のことなんだけど...。これは、神にしか取り消すことが出来ないと言われている、厄介なものなんだ...。(汗)知っている人が、いるかもしれないけど...現在神との契約をきることは、不可能と言われている...。最後の預言者というものが出てきてしまったからね...。(汗)さらに厄介なのは、このタイプの婚約を了承するということはすなわち、血を分け与えることで、婚約が成立するんだけど...アトリーは、化け狐と魔術師の血をもつものだ。狐は...一言で言えば、とても長生きだ...。つまり、やつから血を貰うということは、不老不死に近い状態となり、結果としてエピーヌは、人間というものではなくなるんだ...。(汗)」
 長い長いニーソンの話を聞き終えたエピーヌは、途端にわなわなと震えだし、泣きそうな目でニーソンを見つめた。
「ニーソン...どうしよう...。(汗)私...もうラグルとニーソンとあのお店に帰ることは出来ないの...???(汗)...いや、そんなの絶対に嫌よ!!!!(汗)」
 エピーヌの荒らげた声に近くにいたレナーゼイン家の侍従が、不審に思い駆け寄ってきた。
 ニーソンは、まずいと思い侍従に咄嗟にこう声をかけた。
「すまない...。自分の妹が、駄々を捏ねてね...??(汗)...エピーヌ、ダメだろう??ここは、他の人のお屋敷なんだから、そんなに声を荒らげては...。(汗)」
 こう言うと、エピーヌの頭を軽く撫でて、駆け寄ってきた侍従に一礼すると、侍従が去ったことを確認してエピーヌの顔を見つめると、こう声をかけた。
「エピーヌ...俺も、君がいないと...ラグルとむさ苦しい男二人の同居が始まってしまう...それは嫌だ。だから、一緒にラグルを助けてから、皆で方法を考えよう??ねぇ??(汗)」
 ニーソンは、まるで本物のお兄ちゃんのような優しい表情でエピーヌの頭を撫でると、エピーヌの目から流れている涙をすらっとした指先で拭うのだった。
 そんなニーソンの様子にさらに大泣きしたエピーヌに、困り果てた顔を向けたニーソンなのであった。
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