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第4章 「過激なパーティーの始まり。」

4-3話 「ドウシャーの悪魔の囁き。」

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ラグルは、先程のドウシャーの言葉に仕方なく、ニーソンに一声かけて屋敷から外に出ると、ドウシャーの屋敷のある隣の国に瞬間移動で向かっていた。
 ドウシャーの屋敷の前につくと、ため息をついて愚痴をこぼした。
「全く...やっぱり普段、三日はかかる距離をものの三十分程度で移動すると...どうも体力が持たない...。(汗)」
 ラグルは、少し息を整えると自分の屋敷よりもさらに大きな屋敷の中へと入っていった。
 侍従に案内されながら、通されたのはドウシャーの部屋だった。
「...それで、旦那様からのお話とは一体...??(あー、めんどくさい...こんな茶番に付き合ってられるか...。(汗))」
「まぁ、それよりも...まずはお茶でもいかがかしら???だいぶ急いできてくださったみたいですし...??(笑)」
「...分かった...では、一杯だけご馳走になるとしよう。(本当は...ここで無駄な時間を過ごす訳にはいかないんだがな...。(汗)ただでさえ、最近...こっちの方に帰ってきていなかったから、仕事が溜まっているというのに...。(汗))」
 ラグルは、内心焦りながらも目の前のドウシャーの心底嬉しそうな表情のせいで何も言えず、促されるまま目の前にあるソファへと腰を下ろした。
 しばらくして、侍従が飲み物を抱えて部屋に入ってきた。ドウシャーは、侍従に何かを囁くと小さく笑い、カップの乗ったトレーを受け取ると、ソファの方へ戻ってきた。
 ラグルは、ドウシャーと侍従のやり取りが気になったが、あまり深く考えることはせず、目の前に出された紅茶の礼を軽くドウシャーに告げた。
 そんなラグルにさらに笑みを深くしたドウシャーは、ソファに腰を落ちつけると、目の前に座るラグルに話を始めた。
「それでね、ラグル様に少しお話したいことがありまして...。ニーソン様の妹さんでしたっけ??エピーヌ様っていう...可愛らしい女の子の妙な噂を耳にしまして...。「...っ!???エピーヌの???(汗)」...あら、お友達の妹さんなのに、随分と焦った表情をしているのですね??(笑)」
 ドウシャーは、目の前でエピーヌの名前が出た瞬間に血相を変えたラグルに対して、トゲのある言い方をした。
 そんなドウシャーの言葉にまずいと思い、咳払いをするとあたかも関心がないと言った様子で話を続けた。
「...それで。ニーソンの妹であるエピーヌの妙な噂とは...??」
「ふふっ、まぁ、とりあえず長話になりそうなので、紅茶を一口召し上がられては??(笑)」
 こう言ったドウシャーの声に、内心悪態をつきながら、カップを手に取るとそっと口をつけた。
 その瞬間ドウシャーは、うっすらと気味の悪い笑みをラグルへと向けていたが、やがて普段の笑顔をラグルに向けると話を続けた。
「実は...今日のパーティーでエピーヌ様が最近、魔界で話題になっているアトリー様に求婚を申し込まれていたっていう目撃証言を得たのですわ。『何...!??(汗)アトリーって、あのレナーゼイン家のアトリー皇か???(汗)』...えぇ、そのまさかですわ!(笑)」
 ドウシャーの言葉を、目を大きく見開いて驚きを隠せないでいるラグルの様子に可笑しそうに微笑むドウシャーは、小さく頷いた。
 そんなドウシャーの言葉に、ラグルは信じられないと言った様子で、困った表情をしていた。
「なんで、寄りにもよって...エピーヌなんだ。アトリーは、魔界でも特殊なタイプの魔族で...あんな危険なやつとエピーヌが...!??(汗)...ありえない。あっ、それでエピーヌは、その婚約を受けたのか???(汗)」
 ラグルの明らかに動揺した様子に、顔を少し歪めたドウシャーは、ラグルにこう言った。
「えぇ、お受けしたって聞いたわ??(笑)...でも、まぁ良かったんじゃないのかしら??だって、あのルックスで魔界でも知らないものはいないほどの、お金持ち...オマケに...『っ!???ありえない!!!(汗)すまないが、急用を思い出したから...お父上には、明日改めて伺わせてもらうと、断りを入れおいてほし...っ...なんだ...急に目眩が...。あっ!お前...まさか...!!(汗)くそっ、紅茶に何を入れた??侍従と何を話していたんだ!!!(汗)』...ふふふっ、だいぶお疲れのようね???ラグル様...??でも、そもそもあなたが招いたこと...。私を責めても...無意味よ???(笑)」
 ドウシャーのこの言葉を最後に、ソファを立ち上がって、部屋を出ていこうとしていたラグルは、次の瞬間大きくよろめいたと思ったら、片膝をつき頭を抱えて息を荒らげだした。
 そんなラグルの様子に、微笑みを濃くすると、ドウシャーはラグルにさっきまでとは打って変わって、冷たい口調で声をかけた。
 そんなドウシャーの言葉を最後にラグルは、床に倒れ意識を失ったのだった。
「ふふっ、ラグル様???あんな...淫乱な女のことは忘れて...私のことだけを見ていて??(笑)」
 こう言うと、ラグルの横に両膝をついて、頬に手を添わせるとラグルの唇にキスを落とした。
「クスッ...私との契約により、あなたのあの女に対する記憶は全て吸い取らせてもらったわ??(笑)これで...あなたは、人間の心など持ち合わせていない...野生のヴァンパイアよ??(笑)」
 こう言うと、ラグルから手を離し立ち上がるとふっと微笑んで、ドウシャーは部屋から出ていった。
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