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第16号 「動き出した日々...1ヶ月の猶予。」
一難去ってまた一難...。
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「はっ...今何時だろう...??ふぁ~ぁ...今まで、撮影に追われることなんて、なかったはずなのに...。これが世でいう絶不調ってやつなのか...???」
眠い目を擦りながら、大きく伸びをした亜衣希は、一人でこうつぶやいていた。
仮眠スペースから出ると、資料に目を通しながら、慌ただしく作業をしている大樹の姿が目に入った。
「兄さんって...琉架が居なくなってから、妙にせかせかと働くようになったよな~...。」
特に何も言うつもりもなかったが、勝手に口が動いて、亜衣希は気がつけばこんなことを口走っていた。
そんな亜衣希の言葉に、一瞬肩を揺らした大樹だったが、次の瞬間には、眉間に皺を寄せあからさまに嫌な態度をとっていた。
「それを言うなら...お前のせいでもあるんだぞ??...お前の写真の質が落ちたことで、編集者に出す分の写真が、期限ギリギリまで出来上がらないから、私もせかせかと仕事をするしかないのだろう...。」
「って...俺のせい...なのか...。それは、しつれーしました~。やっぱり俺って...絶不調ってやつなのかな...?はぁ...。悪いけど...少し外に出てくるから...『あっ!まだ雑誌のページ、半分以上も残ってるんだぞ!!お前...しかもそれ...締切明日までなんだぞ...!?って...おい!ちょっと待て!!こらっ、亜衣希!!!』...悪いけど...この用事はほんとに外せないから...。...戻ってきたら、徹夜一週間でも二週間でもしてやるから。見逃して...。」
亜衣希は焦った顔をして、自分のことを止めに来る、大樹を振り返らずに小さくこうをつぶやくと、事務所から小走りで出ていってしまった。
残された大樹は、疲れた顔に皺を寄せて
「...全く...帰ってきたら、終わるまでご飯食べさせてやらないからな...。亜衣希ってやつは...。あぁ...そんな事よりも、仕事仕事...。」
こう呟くと、さっさと手を動かして、作業を続行させる大樹なのであった。
一方その頃、外に出た亜衣希はというと...
「うっ...寒ぃ...。俺、見た目どおり寒がりだから...この時期は、極力外に出たくねぇわ...。...さむい...。こたつみかんしたいな...琉架を抱き枕にして...。」
亜衣希は、上着のポケットに手を突っ込むと、ガタガタと身体を震わせながら、大樹との喧嘩の場所に向かっていた。
赤信号に引っかかり、寒さのせいで少し顔を歪めながら、信号が青になるのを待っていた亜衣希は、次の瞬間、目の前を野良猫が横切って、赤信号に飛び出したのを目にしてしまう。
亜衣希は、咄嗟に猫にこう叫んでいた。
「...!?おい、ミケ!!危ない!!!早くそこをどくんだ!!!!ミケ...!!!」
ミケと呼ばれた野良猫は、亜衣希の言葉に聞く耳を持たず、そのまま赤信号の交差点へと進入していった。
そんな呑気な猫に神様のいたずらか...スピードがこれでもかという程に出ている大型トラックが迫ってきたのである。
亜衣希は、気がつけばその野良猫の元へと危険も省みずに駆け出していた。
「クソっ...ミケ!!!!」
亜衣希が走っていったのと同時に、ミケと呼ばれた野良猫は、亜衣希の姿に気づき、慌てて歩道へと逃げていった。
その瞬間...赤信号を待っていた通行人のひとりが大声で「危ない!!!」
と言ったのと同時に、大型トラックに跳ねられて、身体が中に浮かんだ亜衣希は、地面に落ちる嫌な音と...同じタイミングで無残にも倒れ込んだ...。
「おい!!!!人が跳ねられたぞ!!!!...大丈夫か!??......誰か...誰か救急車を...!」
交差点は騒然としていて、誰もが予期せぬ事のように、一瞬時が止まったようだった...そんな雑踏と騒音が薄れていく中、亜衣希は意識を失ったのだった...。
眠い目を擦りながら、大きく伸びをした亜衣希は、一人でこうつぶやいていた。
仮眠スペースから出ると、資料に目を通しながら、慌ただしく作業をしている大樹の姿が目に入った。
「兄さんって...琉架が居なくなってから、妙にせかせかと働くようになったよな~...。」
特に何も言うつもりもなかったが、勝手に口が動いて、亜衣希は気がつけばこんなことを口走っていた。
そんな亜衣希の言葉に、一瞬肩を揺らした大樹だったが、次の瞬間には、眉間に皺を寄せあからさまに嫌な態度をとっていた。
「それを言うなら...お前のせいでもあるんだぞ??...お前の写真の質が落ちたことで、編集者に出す分の写真が、期限ギリギリまで出来上がらないから、私もせかせかと仕事をするしかないのだろう...。」
「って...俺のせい...なのか...。それは、しつれーしました~。やっぱり俺って...絶不調ってやつなのかな...?はぁ...。悪いけど...少し外に出てくるから...『あっ!まだ雑誌のページ、半分以上も残ってるんだぞ!!お前...しかもそれ...締切明日までなんだぞ...!?って...おい!ちょっと待て!!こらっ、亜衣希!!!』...悪いけど...この用事はほんとに外せないから...。...戻ってきたら、徹夜一週間でも二週間でもしてやるから。見逃して...。」
亜衣希は焦った顔をして、自分のことを止めに来る、大樹を振り返らずに小さくこうをつぶやくと、事務所から小走りで出ていってしまった。
残された大樹は、疲れた顔に皺を寄せて
「...全く...帰ってきたら、終わるまでご飯食べさせてやらないからな...。亜衣希ってやつは...。あぁ...そんな事よりも、仕事仕事...。」
こう呟くと、さっさと手を動かして、作業を続行させる大樹なのであった。
一方その頃、外に出た亜衣希はというと...
「うっ...寒ぃ...。俺、見た目どおり寒がりだから...この時期は、極力外に出たくねぇわ...。...さむい...。こたつみかんしたいな...琉架を抱き枕にして...。」
亜衣希は、上着のポケットに手を突っ込むと、ガタガタと身体を震わせながら、大樹との喧嘩の場所に向かっていた。
赤信号に引っかかり、寒さのせいで少し顔を歪めながら、信号が青になるのを待っていた亜衣希は、次の瞬間、目の前を野良猫が横切って、赤信号に飛び出したのを目にしてしまう。
亜衣希は、咄嗟に猫にこう叫んでいた。
「...!?おい、ミケ!!危ない!!!早くそこをどくんだ!!!!ミケ...!!!」
ミケと呼ばれた野良猫は、亜衣希の言葉に聞く耳を持たず、そのまま赤信号の交差点へと進入していった。
そんな呑気な猫に神様のいたずらか...スピードがこれでもかという程に出ている大型トラックが迫ってきたのである。
亜衣希は、気がつけばその野良猫の元へと危険も省みずに駆け出していた。
「クソっ...ミケ!!!!」
亜衣希が走っていったのと同時に、ミケと呼ばれた野良猫は、亜衣希の姿に気づき、慌てて歩道へと逃げていった。
その瞬間...赤信号を待っていた通行人のひとりが大声で「危ない!!!」
と言ったのと同時に、大型トラックに跳ねられて、身体が中に浮かんだ亜衣希は、地面に落ちる嫌な音と...同じタイミングで無残にも倒れ込んだ...。
「おい!!!!人が跳ねられたぞ!!!!...大丈夫か!??......誰か...誰か救急車を...!」
交差点は騒然としていて、誰もが予期せぬ事のように、一瞬時が止まったようだった...そんな雑踏と騒音が薄れていく中、亜衣希は意識を失ったのだった...。
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