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第15号 「お別れしないか...??」

決断の時。

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  いつの間にか眠りについていた琉架と坂沢は、床に倒れて眠っていた。
「...ん???(眠)亜衣希さん??...ここどこ??」
 こう言って琉架が目を覚ましたのは、薄暗い坂沢の部屋だった。
 床で眠っていたせいか、背骨がとても痛かったが、琉架は朝から騒がしく鳴り響く、自らの携帯の着信音で目を覚ました。
「...うわぁ、でんわ...ねみぃよ...。(寝)...って鳴り止まないし......。うーん、だ~ぁれぇ...。」
 琉架は、まだぼんやりとする頭をフル回転させ、画面もよく見ずに、通話ボタンを押して、電話に出た。
「はい...もしもし...『あっ!琉架くん!??私だ...大樹だが...!(汗)』...あっ...大樹さん...。どうしたんですか...。こんな朝早くに...『実は...今、病院にいるんだが......亜衣希が目を覚ましたんだ!!!(汗)急いで病室に来てくれ!!!(汗)亜衣希が、琉架は何処だと言って、今にも点滴を自らの腕から外して、琉架くんのことを、捜しに行こうとしているんだ!!!(汗)』って...えっ!??...俺を!???...分かりました!(汗)すぐに向かいます!!(汗)」
 こう言うと、琉架は慌ただしく電話を切り、床にヨダレを付けて、未だに熟睡している坂沢に、置き手紙を机の上に残すと、軽く荷物をまとめて、急いで亜衣希の入院する病院へと向かった。
 病院に着くと琉架は、亜衣希の病室へと駆け込んだ。
 病室のドアを、ガラッと勢いよく開くと中には、看護師さんに取り押さえられて、バタバタと暴れている亜衣希の姿が...。
 琉架は、亜衣希の起きている姿にビックリして、その場に自らの持っていた荷物をストンっと落としてしまった。
 その瞬間、亜衣希の動きが止まり、病室の入口前にいる琉架と目が合った。
「(なにか...なにか喋らないと......!!(汗))...あっ...亜衣希さん...。その...目が覚めたんだね...。(汗)良かった...。(笑)俺...もう起きないんじゃないのかって心配して...『...だ...よ...め...ぇ...。』...えっ??...なんて言ったの??ごめん亜衣希さん、よく聞こえなかっ『...誰だよてめぇ!!!おい!!琉架を何処にやった???琉架...琉架は、何処だよ!!!お前が琉架を攫ったんだろ!!!なぁ!!答えろ!!!(怒)』...えっ...亜衣希...さん...??(汗)」
 亜衣希は、琉架を目に留めると、じっと見つめていたが、いきなり琉架を鋭く睨みつけると、次の瞬間、大声で琉架に対して暴言を吐き出した。
 その様子に、亜衣希の横で困った顔をしていた大樹が、眉間に濃い皺を寄せて、慌てて亜衣希の動きを止めた。
「...おい、やめないか!!!亜衣希!!!しっかりしろ...!!!今来てくれてるのが琉架くんだろう!!!何を...そんなに、怒鳴る必要があるんだ...!!!(怒)」
 大樹の言葉には、まるで聞く耳を持たず、亜衣希は、暴言を嵐のように続けた。
「...早く出ていけよ!!!琉架を何処にやったんだ!!!おい、お前聞いているのか!!!てめぇに言ってんだよ!!!琉架を早く連れてこい!!!!(怒)『...っ......亜衣希!!!いい加減にしないか!!!!(怒)』...っ!??いってーなー!!!!何すんだよ!!!!(怒)おい、お前らもいい加減離せ!!!この阿呆が!!!!」
 亜衣希の、あまりの暴言の酷さに、入口で石像のように固まったまま、微動だにしない琉架を目に留めた大樹は、咄嗟に亜衣希の頬を力いっぱい殴った。
 亜衣希は痛みに顔を歪め、キッと大樹を睨みつけたが、再び琉架へと目線を戻すと、自らの体を必死に押さえつけている看護師に対して、激しく抵抗を示した。
 琉架は、そんな亜衣希をしばらく見つめていたが、やがて我に返ると床に落としたカバンをバッと拾い上げ、亜衣希の病室から足早に走り去った。
 琉架が部屋を出ていったのを目に留めた大樹は、慌てて琉架の後を追って、病室を出た。
 一人病室に残った亜衣希は、琉架と大樹が出て行った途端、急に大人しくなり、さっきまで暴れて暴言を吐いていたのは、まるで嘘のように静まりかえった。
「...八神さん??...大丈夫ですか...??...とにかく早くお医者様を...『...いいです...必要ないです...。』えっ!?でも...『本当に大丈夫です...。ただ気が動転していただけで...。』...でもね、心配だから念のために...見てもらいましょう...??...さぁ、横になって...今、お医者さん呼んできますからね...。(汗)」
 こう言うと、さっきまで亜衣希を必死に押さえつけていた看護師は、困った顔をして慌ただしく病室から出ていった。
 本当にひとりになってしまった病室で、亜衣希は誰に伝えるでもなく...静かにこう呟いたのだった。
「琉架...ごめん...。俺は、夢の中で何度も何度も、どうしたら琉架をもう二度と悲しませないで...もう二度と...危険な目に遭わせなくて済むのか...方法を考えていたんだ...。でも...何十回何百回何千回何万回と考えても...。どんなに考えても...どんな方法をとっても...何を犠牲にしても...。結局最後には、琉架に危害が加わっているんだ...。それでね...。やっと琉架が、満面の笑みで笑っている姿を見ることが出来たのは...俺のいない世界だったんだよ...。...本当は...さっき...琉架が血相変えて、病室に駆け込んできてくれたこと...。...俺の顔を見た瞬間、涙を目の中いっぱいに溜めて、安心した表情をしていてくれたこと...。(泣)本当に心配しててくれたんだなって...。全部わかってた...。嬉しかったし、今すぐにでも抱きしめたいと思った...。でも...それは同時に、君を不幸にさせる始まりだとも思えた...。だから俺は...琉架に暴言を吐いて...嫌われようと......。もう会う資格なんてない...。でも、それでいいんだ...。琉架に笑っていてもらえるのなら...。たとえ隣が俺じゃなくても...笑ってくれさえすれば...構わない...。(泣)こんな終わり方で礼儀もクソもないよな...。さよなら...俺を救ってくれた...俺の歩む道を作ってくれていた人...。(泣)」
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