32 / 102
第4章「乙四の開幕と奏也の危機。」
「運命の賭け。」
しおりを挟む
父親の言葉に対して、母親は苦い表情をしたが、周りの視線に気がついたことで渋々了承してくれた。
俺は、父親の顔を一瞬だけ見て微笑むと、月並みの皆にこう声を掛けた。
「みんな...その、お願いがあるんだ。俺と...月並みとして、最初で最後になるかもしれない演奏会をやってくれないか???」
俺の言葉に、虎雅さんが黙ったまま俺に近づいてきて、俺の前まで来ると静かにこう言った。
「何馬鹿なこと言ってるんだよ。『えっ...ごめん。そうだよな...みんな『お前は...正真正銘の馬鹿なのか!!?お前は、月並みのメンバーなんだから、お願いしなくてもいいだろうが...それともなんだ???お前は、月並みのメンバーにはやっぱり成りたくないって事なのか???」
この瞬間、虎雅さんの言っていることが理解でき、俺は虎雅さんの優しさに涙が自然と出てきて、勢いよく月並みのみんなに頭下げた。
「やっぱり俺は、一生月並みのメンバーとして音楽をやっていきたいです。これからもよろしくお願いします。」
俺はこう言うと、皆が楽器を抱えて準備をしている中央に立ち、勢いよく息を吸うと、皆がさっき弾いていた曲を歌い出した。
俺の様子に、母親は初めこそ納得のいかない顔をしていたが、曲のサビに入る頃には、じっと俺たちの様子を見つめてくれていた。
そうして俺たちの演奏会は無事終わった。
でも、ただひとつ、俺が納得いかなかったのは.........俺のことをいつも守ってくれていた七緒が...この場にはいなかった事であった。
俺は、七緒がなぜ居ないのか気になっていたが、そんな俺の疑問を吹き飛ばすように、俺たちの歌を聴いた男が、俺たちに向かって罵声を浴びせてきた。
「うるせーな!!!下手な演奏をこんな公共の場所でやるんじゃねぇよ!!!常識わきまえてから来いよな!!!この下手くそ!!」
この男の言葉を開始の合図ととった周りの大人達も、次々と非難の声を俺たちに向けてきた。
「ほんとに...どうせ誰にも許可取ってないんだろ???お前らの事を訴えることだって出来るんだぞ???」
「あー、お前らのせいで俺の鼓膜が破れたんだけど、どう責任取ってくれるんだよ???慰謝料払えよ!!」
俺は目の前で声を荒げている人たちに、何も言えず、どう対処しようかと慌てていたとき、空港の案内放送が聞こえてきた。
「只今、とう空港で音楽を披露されていた月並みの皆さんは、至急案内カウンターまでお越し下さい。お話ししたいことがございます。」
この放送と同時に、周りにいた難癖をつけてきた人たちは、喧嘩を売るような表情を俺たちに向けて、去り際に一言『ほら見ろよ、警察沙汰だな。(笑)』と言って、俺の顔につばを吐きかけたのだった。
俺は、怒りもフツフツと湧いていたのだが、何よりも月並みが馬鹿にされたのが悲しくて、マイクをぐっと握りしめていた。
言われた通り、案内カウンターに向かうとそこにいたのは、さっきまで探していた七緒だった。
七緒は、俺たちの顔を見ると一言『遅くなってごめん、少しやらないといけないことがあって。』と言って、その後は何も言わずに、顔を地面に向けていた。
そんな七緒の様子に月並みは何も声を掛けることが出来ず、じっとうなだれる七緒をただ見つめていた。
すると、目の前にあるstaff onlyの扉が開き、中から何か書類の束を抱えた男の人が姿を現した。
「お待たせ致しました鶴来七緒様。...あー、この方達が例の...。」
「あっ、ありがとうございます。はい、出来れば月並みのメンバー全員分...『分かりました。ではそのように。』...お願いします。」
七緒が男にこう告げると、男は納得したように、また奥の部屋へと戻っていった。
七緒の行動の真意が分からず、俺は目の前で普通の顔をしている七緒に、声を掛けようとしたが、そのタイミングは虎雅さんによって奪われてしまうこととなった。
「...おい、七緒。お前なんで空港の演奏会に来なかったくせに、こっちの案内所でそんな余裕そうな顔で、座ってられるんだよ!!!!お前とずっと一緒にいた奏也が、両親のせいで海外に飛ばされるかもしれないっていう時に、どうしてそんなに平常心を保っていられるんだよ!!!!お前は、奏也と別れてもいいって言うのか??月並みとしてこれから頑張っていこうって言っていたのだって、お前にとっては何の決意でもなかったってことなのか???おい、なんか答えたらどうなんだ!!」
「ちょっと虎雅っ!!!ここで殴り合いは駄目だよ!!!!ほら、分かったら七緒の首から手を放せ!」
虎雅さんは、目の前で余裕そうな顔をしていた七緒の腕を引き、椅子から立ち上がらせると、洋服の襟を勢いよく掴み、次の瞬間空いた方の手で七緒の頬めがけてビンタをかまそうとした。
だが、その状況にまずいと思った翔真さんは、虎雅さんの振り上げていた手首を掴むとその動きを制した。
そんな絶命のタイミングに、さっき書類を抱えて俺らの前に現れた男の人が、再度staff onlyから現れた。
その人は、俺たちの様子を目に留めた瞬間、焦った顔でこう言ってきた。
「大変お待たせ致しました。鶴来七緒様...さきほどのお手続き...って、一体何をやっているんですか!???...いや、理由は何でもいい。とりあえず一旦落ち着いて!!何があったのかは後で聞きますから!!!あー、この際なんで言っておくけど...七緒!お前は一体何をしでかしたんだ!!!他人様を怒らせたらいけないだろう???『はぁ!??なに???俺が悪いわけ???兄さんって、何でも俺のせいにするよね???ほんと、そういう所昔から変わってない...。あー!腹立つ!!』...お前に言われたくねぇーよ!!」
目の前にいる男の人の言葉に、頭が追いつかず、その場にいた全員が七緒と男の関係に対して、頭上に?マークが浮かんでいた。
そんな俺たちの沈黙を破ったのは、七緒だった。
「...悪い。みんなには言ってなかったけど、この人は...俺の母親のお姉ちゃんの息子なんだ...。つまり、俺のいとこってわけで、一応親戚でもある...。『おい、その一応って何だよ。俺と親戚じゃ不満なのかよ!?』...あぁ??んな事言ってないだろ!??...大人のくせして喧嘩ふっかけんなよな!!!」
この言葉に、周囲にいた仲間全員が目を点にしていた。
俺は、父親の顔を一瞬だけ見て微笑むと、月並みの皆にこう声を掛けた。
「みんな...その、お願いがあるんだ。俺と...月並みとして、最初で最後になるかもしれない演奏会をやってくれないか???」
俺の言葉に、虎雅さんが黙ったまま俺に近づいてきて、俺の前まで来ると静かにこう言った。
「何馬鹿なこと言ってるんだよ。『えっ...ごめん。そうだよな...みんな『お前は...正真正銘の馬鹿なのか!!?お前は、月並みのメンバーなんだから、お願いしなくてもいいだろうが...それともなんだ???お前は、月並みのメンバーにはやっぱり成りたくないって事なのか???」
この瞬間、虎雅さんの言っていることが理解でき、俺は虎雅さんの優しさに涙が自然と出てきて、勢いよく月並みのみんなに頭下げた。
「やっぱり俺は、一生月並みのメンバーとして音楽をやっていきたいです。これからもよろしくお願いします。」
俺はこう言うと、皆が楽器を抱えて準備をしている中央に立ち、勢いよく息を吸うと、皆がさっき弾いていた曲を歌い出した。
俺の様子に、母親は初めこそ納得のいかない顔をしていたが、曲のサビに入る頃には、じっと俺たちの様子を見つめてくれていた。
そうして俺たちの演奏会は無事終わった。
でも、ただひとつ、俺が納得いかなかったのは.........俺のことをいつも守ってくれていた七緒が...この場にはいなかった事であった。
俺は、七緒がなぜ居ないのか気になっていたが、そんな俺の疑問を吹き飛ばすように、俺たちの歌を聴いた男が、俺たちに向かって罵声を浴びせてきた。
「うるせーな!!!下手な演奏をこんな公共の場所でやるんじゃねぇよ!!!常識わきまえてから来いよな!!!この下手くそ!!」
この男の言葉を開始の合図ととった周りの大人達も、次々と非難の声を俺たちに向けてきた。
「ほんとに...どうせ誰にも許可取ってないんだろ???お前らの事を訴えることだって出来るんだぞ???」
「あー、お前らのせいで俺の鼓膜が破れたんだけど、どう責任取ってくれるんだよ???慰謝料払えよ!!」
俺は目の前で声を荒げている人たちに、何も言えず、どう対処しようかと慌てていたとき、空港の案内放送が聞こえてきた。
「只今、とう空港で音楽を披露されていた月並みの皆さんは、至急案内カウンターまでお越し下さい。お話ししたいことがございます。」
この放送と同時に、周りにいた難癖をつけてきた人たちは、喧嘩を売るような表情を俺たちに向けて、去り際に一言『ほら見ろよ、警察沙汰だな。(笑)』と言って、俺の顔につばを吐きかけたのだった。
俺は、怒りもフツフツと湧いていたのだが、何よりも月並みが馬鹿にされたのが悲しくて、マイクをぐっと握りしめていた。
言われた通り、案内カウンターに向かうとそこにいたのは、さっきまで探していた七緒だった。
七緒は、俺たちの顔を見ると一言『遅くなってごめん、少しやらないといけないことがあって。』と言って、その後は何も言わずに、顔を地面に向けていた。
そんな七緒の様子に月並みは何も声を掛けることが出来ず、じっとうなだれる七緒をただ見つめていた。
すると、目の前にあるstaff onlyの扉が開き、中から何か書類の束を抱えた男の人が姿を現した。
「お待たせ致しました鶴来七緒様。...あー、この方達が例の...。」
「あっ、ありがとうございます。はい、出来れば月並みのメンバー全員分...『分かりました。ではそのように。』...お願いします。」
七緒が男にこう告げると、男は納得したように、また奥の部屋へと戻っていった。
七緒の行動の真意が分からず、俺は目の前で普通の顔をしている七緒に、声を掛けようとしたが、そのタイミングは虎雅さんによって奪われてしまうこととなった。
「...おい、七緒。お前なんで空港の演奏会に来なかったくせに、こっちの案内所でそんな余裕そうな顔で、座ってられるんだよ!!!!お前とずっと一緒にいた奏也が、両親のせいで海外に飛ばされるかもしれないっていう時に、どうしてそんなに平常心を保っていられるんだよ!!!!お前は、奏也と別れてもいいって言うのか??月並みとしてこれから頑張っていこうって言っていたのだって、お前にとっては何の決意でもなかったってことなのか???おい、なんか答えたらどうなんだ!!」
「ちょっと虎雅っ!!!ここで殴り合いは駄目だよ!!!!ほら、分かったら七緒の首から手を放せ!」
虎雅さんは、目の前で余裕そうな顔をしていた七緒の腕を引き、椅子から立ち上がらせると、洋服の襟を勢いよく掴み、次の瞬間空いた方の手で七緒の頬めがけてビンタをかまそうとした。
だが、その状況にまずいと思った翔真さんは、虎雅さんの振り上げていた手首を掴むとその動きを制した。
そんな絶命のタイミングに、さっき書類を抱えて俺らの前に現れた男の人が、再度staff onlyから現れた。
その人は、俺たちの様子を目に留めた瞬間、焦った顔でこう言ってきた。
「大変お待たせ致しました。鶴来七緒様...さきほどのお手続き...って、一体何をやっているんですか!???...いや、理由は何でもいい。とりあえず一旦落ち着いて!!何があったのかは後で聞きますから!!!あー、この際なんで言っておくけど...七緒!お前は一体何をしでかしたんだ!!!他人様を怒らせたらいけないだろう???『はぁ!??なに???俺が悪いわけ???兄さんって、何でも俺のせいにするよね???ほんと、そういう所昔から変わってない...。あー!腹立つ!!』...お前に言われたくねぇーよ!!」
目の前にいる男の人の言葉に、頭が追いつかず、その場にいた全員が七緒と男の関係に対して、頭上に?マークが浮かんでいた。
そんな俺たちの沈黙を破ったのは、七緒だった。
「...悪い。みんなには言ってなかったけど、この人は...俺の母親のお姉ちゃんの息子なんだ...。つまり、俺のいとこってわけで、一応親戚でもある...。『おい、その一応って何だよ。俺と親戚じゃ不満なのかよ!?』...あぁ??んな事言ってないだろ!??...大人のくせして喧嘩ふっかけんなよな!!!」
この言葉に、周囲にいた仲間全員が目を点にしていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
玉縛り玩具ランブル!?~中イキしないと解けない紐~
猫丸
BL
目覚めたら真っ白な部屋で拘束されていた。
こ、これはもしや『セックスしないと出られない部屋』!?
……は?違うの?『中イキしないと解けない紐』!?
はぁぁぁぁぁ!?だから、俺のちんこ、しらない男とまとめて縛られてるの!?
どちらが先に中イキできるのか『玉ちゃん(主人公)・丸ちゃん(彼氏)vs対馬くん・その彼氏』の熱い戦いの火蓋が切って落とされた!!!!
えー、司会進行は『ウサギマスク』がお送りいたします。
=====
ワンライならぬ1.5hライで、お題が「玉縛り」だった時に書いた作品を加筆修正しました。
ゴリッゴリの特殊性癖な上に、ふざけているので「なんでもこーい」な方のみ、自己責任でお願いいたします。
一応ハッピーエンド。10,000字くらいの中に登場人物5人もいるので、「二人のちんこがまとめて縛られてるんだなー」位で、体勢とかもなんとなくふわっとイメージしてお楽しみいただけると嬉しいです。
娘の競泳コーチを相手にメス堕ちしたイクメンパパ
藤咲レン
BL
【毎日朝7:00に更新します】
既婚ゲイの佐藤ダイゴは娘をスイミングスクールに通わせた。そこにいたインストラクターの山田ケンタに心を奪われ、妻との結婚で封印していたゲイとしての感覚を徐々に思い出し・・・。
キャラ設定
・佐藤ダイゴ。28歳。既婚ゲイ。妻と娘の3人暮らしで愛妻家のイクメンパパ。過去はドMのウケだった。
・山田ケンタ。24歳。体育大学出身で水泳教室インストラクター。子供たちの前では可愛さを出しているが、本当は体育会系キャラでドS。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる