俺の兄貴、俺の弟...

日向 ずい

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「阿澄 璃織 サイドストーリー」

「私の過去」

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 「や~い、ブスブス!!!こっちに来るなよ!!!!ブスがうつるだろ????」

 「ちょっと、言い過ぎじゃ無い???」

 「でも本当の事だろ???だってこいつの親....再婚繰り返してお金巻き上げてるって噂だぞ???」

 「え~、そうなの!???阿澄さんの親って....やばい人じゃん!私もう関わらないでおこうかな???」

 「うん、それがいいよ。そうしなよ!じゃないとブスと不潔がうつるよ???」

 『いやだ~!!!!きゃははははは!!!!「ねぇ、暇だしあっち行こ???」....うん、いこいこ!!!』

 「....っ。もういやだ。私が一体何をしたっていうの???」

 これは私が中学生の時の苦い思い出....ううん、思い出なんて生易しい。これは、私にとって思い出したくない過去だわ。こんな酷いいじめに遭っていたのも、両親の再婚のせい...。

 でもそんな私にも、唯一心を許せる人がいた。....そう、血は繋がっていないけど私の大切なたった一人のお姉ちゃん。....小春ねぇちゃん。

 私はいじめられて、薄汚れた制服もそのままに家に帰り着いた。すると、玄関に駆け寄ってきて、私の制服をはたいてくれる小春ねぇちゃんの心配そうな瞳と目が合った。

 私は小春ねぇちゃんに迷惑をかけたくなくて、必死に作り笑いを浮かべて「小春ねぇちゃん、ただいま!!!ねぇ、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの???ほら、小春ねぇちゃんは美人なんだから笑っていないと.....折角の綺麗なお顔が台無しだよ???」とこう言った。

 すると小春ねぇちゃんは目から涙を流し、「りお....。あなたは強い子だね。よしよし、璃織~、辛かったら泣いて良いんだからね~。いつまでも抱え込んでいると、しんどいでしょ???」と言って、私の頭を優しく撫でてくれた。

 その瞬間、私の抑えていた涙はあふれ出してしまい、小春ねぇちゃんにぎゅっと抱きついて、嗚咽混じりの鳴き声をあげた。

 小春ねぇちゃん、小春ねぇちゃんのためなら、私はなんでもしてあげる。....そう、この時、私のことを支えてくれていた小春ねぇちゃんに一生尽くそうって、中学生ながらもそう心を決めたのだった。

 そうして暫く時が経ち、私は小春ねぇちゃんに教えてもらった美容法を沢山試して、綺麗になる努力をした。これは、私のためじゃない。小春ねぇちゃんの隣を歩くのに、ふさわしい姉妹...妹になるためだ。

 小春ねぇちゃんは、私がこんなことを考えているなんて知らない。当たり前だ。だって、わざわざ言う必要が無いのだから。小春ねぇちゃんも、私が綺麗になったことをまるで自分の事のように喜んでくれた。

 だから私はそれで良かった。

 でもある日、小春ねぇちゃんが悲しそうな顔をして会社から家へと帰ってきた。

 私がねぇちゃんにどうしたの???って声を掛けると、小春ねぇちゃんは急に乙女の顔をして私に「ねぇ、璃織???好きな人に彼女がいるときって、どうしたら良いと思う???私は彼のことが.....成瀬 都和さんのことが....どうしても諦めきれないの。」と言って、必死に答えを求めてきた。

 私はこんな小春ねぇちゃんの顔を見たことが無くて、どうしようもない恐怖に襲われた。だって、小春ねぇちゃんはいつでも私が一番だって....大切だって言ってくれた。なのに、今の小春ねぇちゃんが大切にしているのは、会社にいる成瀬 都和という男だ。

 そんな事実を突きつけられて、私はおかしくなりそうだった。でも同時に、私はこうも考えていた。...もしも、私が小春ねぇちゃんの恋の手助けをして、小春ねぇちゃんの恋が実ったら???と...。

 こう考えた私は居ても立っても居られず、小春ねぇちゃんに成瀬 都和についての詳細情報を聞いたのだった。

 そうして分かった情報に、私はにやりと気味の悪い笑みを浮かべて、小春ねぇちゃんを振り返ると「小春ねぇちゃん。大丈夫だよ!!!その恋、絶対に上手くいくよ!!!」と言って、頬を赤らめている小春ねぇちゃんにガッツポーズをした。

 私は不安そうな小春ねぇちゃんの部屋を出ると、クスッと微笑み「大丈夫だよ???小春ねぇちゃん。だって、忌々しいあの男の彼女って.....私の学校にいる成瀬 尊くんなんだもの。こんなに運の良いことは無いわ。きっと神様も私たちのことを応援してくれているに決まってる。」と独り言を零すと、愛情のない両親がいるリビングへと足を向けたのだった。
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