上 下
44 / 61

「俺の過去。」

しおりを挟む
 俺は、まんまと奴らの罠に引っかかり、この世で恐ろしいものを見させられた。

 はっきり言う。

 俺が見たのは、この世の者じゃない...。

 それはそれは恐ろしいもの達の姿だったんだ...。

 奴らは、俺にすがるように手を伸ばしてきて...うっ......考えただけでも吐き気がする。

 俺は、リビングに行くと皆の前で、大きく息をつき、俺の企みの全てを話し始めた。

「...俺は、早くに両親を亡くして、兄ちゃんと共におばあちゃんの家で育ったたんだ。そんな幼かった俺に寂しさを感じさせないようにって、兄ちゃんは、小さいときから俺のことを一番に考えて、行動してくれてたんだ。そんな兄ちゃんの姿を見るのは、嬉しくもあったけど、同時に申し訳なさが募っていった。だから俺は、兄ちゃんに少しでも安心して欲しくて、人一倍よい子のフリをしてきた。そんな俺の姿を、知ってか知らないでか兄ちゃんは、俺の事をいい子いい子っていって、いつも優しく接してくれてたんだ。だがある日、大学生になった事を機に、兄ちゃんが一人暮らしをすると言って、おばあちゃんの家を出て行った。俺は兄ちゃんが大好きで、兄ちゃんの後についていったんだ。兄ちゃんは俺の事を、これまで以上に心配してくれて、大学も忙しいだろうに、俺にさみしい思いをさせないためにって、無理をしてバイトを沢山し始めたんだ。俺は、兄ちゃんと一緒にいられれば、例えご飯が満足に食べられなくても、構わなかったんだ。それなのに兄ちゃんは、そんな俺の気持ちはそっちのけでバイトにいそしむようになり、次第に一緒にいる時間が少なくなっていった。だから、俺は兄ちゃんに言ったんだ。『俺の前で、その仮面を取って。』って...。そしたら、兄ちゃんは、『これが、俺の本当の顔だよ。』って言って、俺の気持ちを理解してくれなかった。俺は、まだ子供だったから、兄ちゃんが俺のためにハイドを頑張ってくれていたことなんて、全く知らなかった。だから、兄ちゃんにひどいことを沢山言った。でも、兄ちゃんはひどいことを言った俺に、これまでと何ら変わらない態度で接してくれた。ただ一つ違ったのは、兄ちゃんにオレよりも大切な人が出来たっていうこと。その人は、奎佐木 叶芽(ふみさき かなめ)と言って、兄ちゃんの初めての友達であり...恋人だったんだ。『えっ!!?奎佐木 叶芽って今、大学に留年して残ってるって噂の...叶芽先輩!??』...あぁ、そうだよ。俺が、今一番恨んでて殺してやりたいと思っている奴だよ。そいつが、俺の大切な兄ちゃんの事を裏切ったんだ。俺の兄ちゃんの人生をめちゃくちゃにしたんだ。だから俺は、叶芽の野郎が通ってる大学に来たくもないのに、受験して...わざわざ復讐しに来てやったんだよ。そして俺は、兄ちゃんの人生をめちゃくちゃにした狩人もろともぶっ潰す。...そのためにも、叶芽に近づいて狩人に入ることで、野郎をつぶす隙を伺ってたんだ。そんなある日、叶芽から1年前......秋良と龍の事を聞かされた。そのことから、俺はこのシェアハウスに入ることで、秋良さんと龍さんに近づいたんだ。これが、俺がこのシェアハウスに入った理由だよ。満足した??」

 俺は、こう言うと皆が次に発する言葉が怖くなり、自室に戻ろうとソファを立ち、リビングから出て行こうとしたその瞬間、背後から誰かに抱きしめられた。

 誰かなんて、すぐに分かった。

 ...この温かさ、鈴斗さんだ。

 俺を守ってくれた鈴斗さんの温かさと全く一緒だった。

 俺が動けずにいると、鈴斗さんは、俺を抱きしめたまま、苦しそうにこう言ったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

【R18】奴隷に堕ちた騎士

蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。 ※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。 誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。 ※無事に完結しました!

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

消防士の義兄との秘密

熊次郎
BL
翔は5歳年上の義兄の大輔と急接近する。憧れの気持ちが欲望に塗れていく。たくらみが膨れ上がる。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

処理中です...