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「俺が、君を助ける理由。」
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俺は、秋良のことも心配だったが、それ以上に目の前で怯えた顔をしている䴇のほうが、一大事だと思い、頭から味噌汁のしずくをこぼす、䴇を怖がらせないようにっこりと微笑むと、䴇にこう話しかけた。
「䴇...大丈夫??ごめんね、うちの子たち荒っぽいから。それよりも、龍と何かあった??もし良かったら、相談に乗るからね?あっ...それか、大学であったことでも、何でもいいからね。」
俺が、こう言うと䴇は驚いた顔をして、俺をじっと見つめてきた。
そして、口を開いたと思ったら俺にこんなことを聞いてきたのだった。
「ねぇ、なんで...鈴斗さんは、こんな入ってきて間もない信用ならない僕の事を、こんなに気にしてくれるんですか??居酒屋の時だって...それに今だって...。」
俺は、この質問に少しびっくりしたが、台所からタオルを取ってくると、一枚は䴇に、一枚は、床の後片付けのために...俺は、ぐちゃぐちゃになった机の上の料理を見ながら、床にこぼれた料理のあと始末をしながら、䴇に話し始めた。
「実はね、俺...1年前に、ある女の人と結婚してて、でも訳があって...別居していたんだ。その別居の理由は、彼女からの酷いDVだったんだ。でもね...彼女は、初めから俺にDVをする人じゃなかったんだ。DVをする前は、いつも優しくて、笑顔がすてきで、それでなによりも、他人を第一に考える事の出来る、すごく心の優しい人だったんだ。だけど彼女は、人よりも執着心が強くて、俺が会社の飲み会に行ったときに、同じ部署の女の先輩が俺に悪ノリで抱きついてきたときがあって、その時に俺は、酔った勢いで彼女にそのことを話してしまったんだ。そして、その日を境に彼女は、俺をひどく束縛するようになった。その時...俺は、怖くなって...変わっていく彼女を見続けているのが辛くて...気付いたら、彼女から逃げるように、このシェアハウスにたどり着いていたってわけ。そんな弱くてどうしようもない俺に、人に甘える事の大切さ、人に頼ることで解決できることがあるということを、教えてくれた子がいてね。大人の俺が、大学生から人をなんて、夢にも思わなかった。でも、彼に会えたお陰で俺は、今こんなにも強くなることが出来て、こんなにも人生を楽しむことが出来ているんだ。...なんとなく分かったかもしれないけど、それを教えてくれたのは、秋良なんだ。秋良は、このシェアハウスの仲間が抱える様々な闇を、ぬぐってくれた...太陽のような存在なんだ。だからシェアハウスの皆は、秋良のことをいつだって思っているし、欠点だらけの俺たちなりに、精一杯のお返しをしてきていたつもりだったんだ。でも秋良は、このシェアハウスを出て行ってしまった。俺たちになんの相談もしないで。っと...ごめんね、話がずれちゃったね。つまり俺が、今こうやって誰かを助けるのは、秋良のような太陽みたいに光り輝く存在になりたいと思ったからなんだ。それに人間誰しも、人には言えないような辛い過去を一つや二つは持っているものだから。きっと君にも、人に言えないほど、大きな悩みを抱えているんだろうなって思ってね。...だからだよ!」
俺の話を聞き終わった䴇は、ぐっと下を向いていて、表情は読み取れなかったけど、でもきっと、泣いていたんだと思う。
だって、手が小刻みに震えていたから。
だから俺は、それ以上なにも言わずに、䴇の頭にかかったタオルの上から䴇の頭をくしゃっとすると、小さく「䴇...お風呂に行って、あったまっておいで。」と言って、キッチンに向かった。
この時、䴇が戸惑っているなんてこと、内心...䴇と同じぐらい秋良のことを心配していた俺が、気付くことはなかった。
「䴇...大丈夫??ごめんね、うちの子たち荒っぽいから。それよりも、龍と何かあった??もし良かったら、相談に乗るからね?あっ...それか、大学であったことでも、何でもいいからね。」
俺が、こう言うと䴇は驚いた顔をして、俺をじっと見つめてきた。
そして、口を開いたと思ったら俺にこんなことを聞いてきたのだった。
「ねぇ、なんで...鈴斗さんは、こんな入ってきて間もない信用ならない僕の事を、こんなに気にしてくれるんですか??居酒屋の時だって...それに今だって...。」
俺は、この質問に少しびっくりしたが、台所からタオルを取ってくると、一枚は䴇に、一枚は、床の後片付けのために...俺は、ぐちゃぐちゃになった机の上の料理を見ながら、床にこぼれた料理のあと始末をしながら、䴇に話し始めた。
「実はね、俺...1年前に、ある女の人と結婚してて、でも訳があって...別居していたんだ。その別居の理由は、彼女からの酷いDVだったんだ。でもね...彼女は、初めから俺にDVをする人じゃなかったんだ。DVをする前は、いつも優しくて、笑顔がすてきで、それでなによりも、他人を第一に考える事の出来る、すごく心の優しい人だったんだ。だけど彼女は、人よりも執着心が強くて、俺が会社の飲み会に行ったときに、同じ部署の女の先輩が俺に悪ノリで抱きついてきたときがあって、その時に俺は、酔った勢いで彼女にそのことを話してしまったんだ。そして、その日を境に彼女は、俺をひどく束縛するようになった。その時...俺は、怖くなって...変わっていく彼女を見続けているのが辛くて...気付いたら、彼女から逃げるように、このシェアハウスにたどり着いていたってわけ。そんな弱くてどうしようもない俺に、人に甘える事の大切さ、人に頼ることで解決できることがあるということを、教えてくれた子がいてね。大人の俺が、大学生から人をなんて、夢にも思わなかった。でも、彼に会えたお陰で俺は、今こんなにも強くなることが出来て、こんなにも人生を楽しむことが出来ているんだ。...なんとなく分かったかもしれないけど、それを教えてくれたのは、秋良なんだ。秋良は、このシェアハウスの仲間が抱える様々な闇を、ぬぐってくれた...太陽のような存在なんだ。だからシェアハウスの皆は、秋良のことをいつだって思っているし、欠点だらけの俺たちなりに、精一杯のお返しをしてきていたつもりだったんだ。でも秋良は、このシェアハウスを出て行ってしまった。俺たちになんの相談もしないで。っと...ごめんね、話がずれちゃったね。つまり俺が、今こうやって誰かを助けるのは、秋良のような太陽みたいに光り輝く存在になりたいと思ったからなんだ。それに人間誰しも、人には言えないような辛い過去を一つや二つは持っているものだから。きっと君にも、人に言えないほど、大きな悩みを抱えているんだろうなって思ってね。...だからだよ!」
俺の話を聞き終わった䴇は、ぐっと下を向いていて、表情は読み取れなかったけど、でもきっと、泣いていたんだと思う。
だって、手が小刻みに震えていたから。
だから俺は、それ以上なにも言わずに、䴇の頭にかかったタオルの上から䴇の頭をくしゃっとすると、小さく「䴇...お風呂に行って、あったまっておいで。」と言って、キッチンに向かった。
この時、䴇が戸惑っているなんてこと、内心...䴇と同じぐらい秋良のことを心配していた俺が、気付くことはなかった。
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