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引き勇
懲りない魂
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伊勢谷の亡き後、俺はあいつの意思を継ぐ……ことなどなかったがな。
あいつが消えた今、この世界は俺の物と言ってもいいだろう。大天使の力さえあれば、世界の闇なぞ簡単だ。
「ふふ……はは……はっはっはああああ!! 伊勢谷ああああああああ! お前は今どんな気持ちだあああ!? 俺はなぁ……最高だよおおおお!! お前って言う障害が消えたんだからなああ!!」
ケビンは、自分の野望に向かって動き始める。これが、彼の本当の姿なのだろう。醜い姿。醜すぎる姿。手に負えず、誰も止める事の出来ない。だからこそ、彼は今になって動き始めたのだろう。彼が支配する世界……それがどんなものなのか。どんな未来が待っているのか。僕にもわからない。ただ一つ。言えることは、彼の謝意する世界に希望などない。しかし、僕は彼の言う通り既に死んでいる。どうするべきか。
箱の力でよみがえってもなぁ……僕の魂、まだここにありますから。いや、マジでどうしよ。ケビン、お前その野望なかったことにできないですかね……
「あー、楽しい。世界支配すんのって楽しい」
なんかもう支配した気になってるよ。全く……あれ? あれって……美雨さん? あれ? 手に持ってるのなに? あれ? ケビンにそれをぶつけるのおおおおおおおおおお!?!?
「ごちゃごちゃうるさいんですよおおおおおお!!!!! 目障りだから黙っててくださいよおおおおおおお!!!」
ガチギレ来たあああああ!! これにはケビンも頭を下げるうううううううう!?
いや、ケビン、怒った! ガチギレかああああ!? おっと、ケビン、手元にあった鉛筆を持ったぞおおおおおおおおおお!!?
って、違う。何実況してるんだ。俺、もとい俺の魂よ。そうじゃないだろう……そうじゃ……
こうして僕の魂だけでさまよう冒険がはじ……はじま……
(始まら)ないです
「いてえな、何するんだ、美雨ちゃん」
「ごちゃごちゃ言わないでください! それに……伊勢谷さんは……」
美雨さんだけが、すごいシリアスな空気だった。いや、なんで美雨さんだけシリアスなの……晴ちゃんたちは、特にシリアスな空気もなく、茶番劇を披露中である。いやいや、もっと僕が死んだことについて触れてくれない……? え? 半蔵って誰だよ(哲学)いや、マジで。泣くよ? 俺、泣いちゃうよ? いいの? ……うわあああああああああああああああん
「なんか、ちょっと寒気が……いや、多分伊勢谷さんが生前キモ過ぎてここまで寒気が……っ!」
いや、扱いひでえな!?!? 僕これでも主人公だよ!? 主役だよ!? おかしい! その扱いはおかしいぞっ!! 魂だけでも僕はまだこの世にとどまっているんだっ……!まあ、気付かれないんだけどな。美雨さんは、いつの間にか茶番劇に加わっていた。
しかし、その姿は――
_人人人人人人人人人人人人_
> 僕の生前より楽しそう <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
なんでや!!! 仮にも美雨さんとはカレカノだったやろ!
僕の思いを踏みにじるように、美雨さんが追い打ちをかける。
「私より先に逝く人なんて知りません」
言いやがったああああああああああああ!?!? この人言いやがったあああああああああああああ!? 僕死ぬよ!? いや、死んでるけどさ!!
僕の死をいいことにツンデレにならないでください。ほんと、お願いします。
「美雨ちゃんよぉ……寂しくねえのかい?」
「黙れよフランスパンが」
怖ええよ。美雨さんこええよ。どうした、なんでそんな機嫌悪い。
「さっきからですねぇ……伊勢谷さんの気配感じるんですよぉ!!! とどまってないで早く成仏しやがれ糞アマがああああああああ!!!」
『口悪いな!?』
あっ。
「キイヤアアアアアアアアアアアア! シャベッタアアアアアアアアアアアアアア!?」
驚いているのは僕の方である。いや、なんだ。やばい。嬉しい。叫べばもしかしてこえとして聞こえるのか? 楽しそう。
もうしばらく、僕は幽霊生活を楽しむことにした。
死んでいるが、ここで一つ。まあ、昔話だが。しておこうかな? もちろん、父さんと出会った時のも含めてだ――
―10年前―
当時七歳だった僕は、戦争によって両親を失った。しかし、僕は孤独を感じて居なかった。感情が、無くなってきそうな気がした。
あたり一面が炎に包まれ、血の海になり、空には爆撃機。
そんな状況の中、僕は動きすらできなかった。動きたくなかった。目の前の家の残骸には、両親が埋まっていたからだ。助けたかった。なんとしても。でも、僕はただただ、死んでいくのを見守ることしかできなかった。
そんな状況が普通となってしまったこの今の世界で、それでもなおもみんなを助けようとしている人がいた。テレビで見たことがあった。
その人は、自分よりも他人を優先するといっていた。でも、それはちょっと違うのではないだろうか。
火に包まれていく中で、僕はふと考えた。人間が死ぬと、どこへ行くのだろうか。天国、地獄。それとも、別の場所。
大人びた思考とよく言われていたが、それは、そのテレビの中の英雄が、世界線を重ねていった結果だと後で知った。
記憶の共有。それは、ごくまれに世界線がつながった時に発生することだ。世界線が交わり、別の世界の自分の記憶と共有されていく
そんな中、僕は彼に拾われた。炎をかいくぐり、僕を見つけた英雄は、やっと、俺の旅は終わるんだ……
そう言って、僕を抱えて炎の外へ飛び出した。
やがて、彼は僕に、両親がいないなら僕の元へ。そう言った。
生きるか死ぬか。その選択を強いられたんだ。
「僕と一緒においでよ」
そう言って――
あいつが消えた今、この世界は俺の物と言ってもいいだろう。大天使の力さえあれば、世界の闇なぞ簡単だ。
「ふふ……はは……はっはっはああああ!! 伊勢谷ああああああああ! お前は今どんな気持ちだあああ!? 俺はなぁ……最高だよおおおお!! お前って言う障害が消えたんだからなああ!!」
ケビンは、自分の野望に向かって動き始める。これが、彼の本当の姿なのだろう。醜い姿。醜すぎる姿。手に負えず、誰も止める事の出来ない。だからこそ、彼は今になって動き始めたのだろう。彼が支配する世界……それがどんなものなのか。どんな未来が待っているのか。僕にもわからない。ただ一つ。言えることは、彼の謝意する世界に希望などない。しかし、僕は彼の言う通り既に死んでいる。どうするべきか。
箱の力でよみがえってもなぁ……僕の魂、まだここにありますから。いや、マジでどうしよ。ケビン、お前その野望なかったことにできないですかね……
「あー、楽しい。世界支配すんのって楽しい」
なんかもう支配した気になってるよ。全く……あれ? あれって……美雨さん? あれ? 手に持ってるのなに? あれ? ケビンにそれをぶつけるのおおおおおおおおおお!?!?
「ごちゃごちゃうるさいんですよおおおおおお!!!!! 目障りだから黙っててくださいよおおおおおおお!!!」
ガチギレ来たあああああ!! これにはケビンも頭を下げるうううううううう!?
いや、ケビン、怒った! ガチギレかああああ!? おっと、ケビン、手元にあった鉛筆を持ったぞおおおおおおおおおお!!?
って、違う。何実況してるんだ。俺、もとい俺の魂よ。そうじゃないだろう……そうじゃ……
こうして僕の魂だけでさまよう冒険がはじ……はじま……
(始まら)ないです
「いてえな、何するんだ、美雨ちゃん」
「ごちゃごちゃ言わないでください! それに……伊勢谷さんは……」
美雨さんだけが、すごいシリアスな空気だった。いや、なんで美雨さんだけシリアスなの……晴ちゃんたちは、特にシリアスな空気もなく、茶番劇を披露中である。いやいや、もっと僕が死んだことについて触れてくれない……? え? 半蔵って誰だよ(哲学)いや、マジで。泣くよ? 俺、泣いちゃうよ? いいの? ……うわあああああああああああああああん
「なんか、ちょっと寒気が……いや、多分伊勢谷さんが生前キモ過ぎてここまで寒気が……っ!」
いや、扱いひでえな!?!? 僕これでも主人公だよ!? 主役だよ!? おかしい! その扱いはおかしいぞっ!! 魂だけでも僕はまだこの世にとどまっているんだっ……!まあ、気付かれないんだけどな。美雨さんは、いつの間にか茶番劇に加わっていた。
しかし、その姿は――
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> 僕の生前より楽しそう <
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なんでや!!! 仮にも美雨さんとはカレカノだったやろ!
僕の思いを踏みにじるように、美雨さんが追い打ちをかける。
「私より先に逝く人なんて知りません」
言いやがったああああああああああああ!?!? この人言いやがったあああああああああああああ!? 僕死ぬよ!? いや、死んでるけどさ!!
僕の死をいいことにツンデレにならないでください。ほんと、お願いします。
「美雨ちゃんよぉ……寂しくねえのかい?」
「黙れよフランスパンが」
怖ええよ。美雨さんこええよ。どうした、なんでそんな機嫌悪い。
「さっきからですねぇ……伊勢谷さんの気配感じるんですよぉ!!! とどまってないで早く成仏しやがれ糞アマがああああああああ!!!」
『口悪いな!?』
あっ。
「キイヤアアアアアアアアアアアア! シャベッタアアアアアアアアアアアアアア!?」
驚いているのは僕の方である。いや、なんだ。やばい。嬉しい。叫べばもしかしてこえとして聞こえるのか? 楽しそう。
もうしばらく、僕は幽霊生活を楽しむことにした。
死んでいるが、ここで一つ。まあ、昔話だが。しておこうかな? もちろん、父さんと出会った時のも含めてだ――
―10年前―
当時七歳だった僕は、戦争によって両親を失った。しかし、僕は孤独を感じて居なかった。感情が、無くなってきそうな気がした。
あたり一面が炎に包まれ、血の海になり、空には爆撃機。
そんな状況の中、僕は動きすらできなかった。動きたくなかった。目の前の家の残骸には、両親が埋まっていたからだ。助けたかった。なんとしても。でも、僕はただただ、死んでいくのを見守ることしかできなかった。
そんな状況が普通となってしまったこの今の世界で、それでもなおもみんなを助けようとしている人がいた。テレビで見たことがあった。
その人は、自分よりも他人を優先するといっていた。でも、それはちょっと違うのではないだろうか。
火に包まれていく中で、僕はふと考えた。人間が死ぬと、どこへ行くのだろうか。天国、地獄。それとも、別の場所。
大人びた思考とよく言われていたが、それは、そのテレビの中の英雄が、世界線を重ねていった結果だと後で知った。
記憶の共有。それは、ごくまれに世界線がつながった時に発生することだ。世界線が交わり、別の世界の自分の記憶と共有されていく
そんな中、僕は彼に拾われた。炎をかいくぐり、僕を見つけた英雄は、やっと、俺の旅は終わるんだ……
そう言って、僕を抱えて炎の外へ飛び出した。
やがて、彼は僕に、両親がいないなら僕の元へ。そう言った。
生きるか死ぬか。その選択を強いられたんだ。
「僕と一緒においでよ」
そう言って――
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