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LEVELZEROafterSTORY~Venus Tune~

おかえり

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 ポケットの中に入っていたものは、コップだった。それも、少し形の変なものだ。
 ――ビリっ
 触れた瞬間、頭で小さな電流が流れた。これ……は?
 何かが、私の中に戻ってくるようだった。
「なあにしてるんですかあ?www立ち止まってたらあ、あなたの頭をぶ・ち・ぬ・く・ぞ?ってなあwwwwwwww」
 御蔭の挑発は未だに続いていた。
 このコップを……投げろ……?
「……そうしろって言うなら、そうするよ」
 私は、御蔭に向かってそのコップを投げつける。……躊躇ってはいたが。でも、あいつを魔法無しで倒すにはこれしかなかった。チャンスは一度。確実に、あいつの脳天に直撃させる。
 そうしなければ一撃で人一人を殺すなど到底無理だ。
「こいつで、こいつで……死んじゃえええええええ!!!」
 投げられコップは、まっすぐに御蔭の方へ向かう。だが――
 そのコップが当たることはなかった。正確には、御蔭は当たる前によけたのだ。……これじゃあ、駄目だよ……
 投げられたコップは、まっすぐ。まっすぐに飛んで落ちていく。地面にだ。
 そして、コップの底が地面と触れたとき、そのコップは無残に割れた。
「あ……れ……? 私、なんで泣いているんだろう……」
 あのコップに何も思いれがないはずだったのに、割れたのを見たとき、私の目には涙があふれかえっていた。なぜ、どうして。あんなコップひとつで、こんなに泣いているんだろう。わからない……しかし、わかることがあった。アニメ研究会には、私と芽衣以外にも一人、誰かがいる気がした。その子は、とっても元気で、でも、いつも私のそばに居てくれて……

 でも、その子の明確な記憶が私にはなかった。正確には……『消された』だろう。ならば、私のこの力は、その子がくれたものだろう。だったら……答えは一つだ。
「芽衣。魔法を使ってでも、あいつを倒そう」
 私は、覚悟をした。いや、確信したことが一つある。たとえ記憶が戻らないとしても、そのこと過ごした思い出は消えることがない。だから――
「戦おう。これは、『千佳』の為でもあるんだから」
「……そう言うのを、ずっと待ってた。もう、迷いはないみたいだね」
「うん……なんとなくだけど、まだ、何となくだけど、千佳の事は忘れてないって事に気付かされた」
 私たちは、決意をして、御蔭との最終対決に向かおうとしていた。
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