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木山春斗の勇者録/花沢美雨の勇者録

フレイア・ドミニオン

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 フレイア・ドミニオン…彼女は、一体何者なんだ…? ここが未来だとすれば、彼女は、未来人。それくらいはわかる。だけど、それだけの情報しかないわけだ。むしろ、もっと情報が欲しい。例えば、この時代の根本たる存在ーーそうだな。総理大臣、とかな。

「この時代の総理大臣って?」
「それは言わない約束だよ、おじさん」
「え」
「時代に深く干渉したら帰れなくなるよ。おじさんの時代に」
「……」

 時代に干渉、か。そんなもの考えたこと無かったな。でも、時代に干渉するのが悪いことだってのはよくわかる。それでも、やらなくちゃいけないことがあるんだ。やらなくちゃ……

「焦ったら元も子もないよ」
「うん、そうだね。ありがとう」
「そんな褒められるようなことはしてないよ」

 ふう……だいぶ、落ち着いてきた。この調子で頑張ろう。というか、帰れるのか? 元の時代に。帰れなかったらまずくないか? いや、大ピンチだ。

「大丈夫だよ。ことが終わればしっかり帰れる」
「事って?」
「ジャンヌの箱の奪還。って、いえばわかるかな?」
「まさかーー盗まれたのか?」
「うん。過去におじさん達がちょっとへましてね」
「……そりゃどうも」

 にしてもーーそうか。盗まれたか。一番盗まれちゃ行けないものが。ジャンヌの遺産。それは、パンドラに近い存在。禁断の箱だ。それ故にーー盗まれたらただ事じゃ済まない。いや、大惨事だ。

「大丈夫じゃないってわかってるから協力して欲しいんだ」
「うん、わかった」

 とりあえず今は、箱の奪還をする事が最優先事項らしい。じゃないと、帰れないとか帰れるとか。まあ、大丈夫だろう。帰れる帰れる。
 なんて安直な考えはーーすぐに無くなった。
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