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引きされEXTRA
偽物
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「くっ、ヘレン!」
「まだ終わってねぇぞぉぉぉ!」
「くそっ!」
聖剣を取る資格のない僕に当然扱えるわけはない。ならーー
「心身弾!」
「はっ! 当たらねぇ!」
「何言ってんだーー当てるつもりもない!」
思いっきり笑顔でそう言ってやった。
「なっ!?」
心身弾を通して、世界線をずらす。そうすることにより、『三国さんの能力をコピーした心身弾』という事実に塗り替える。そして、ウリエルに当てると見せかけて、自分に当たるように調整する。
「ちっ!」
「三国流奥義ーー時空断切!!」
「くそっ!」
当たった。それも、大きく。
ウリエルの右半身が吹き飛んだのが見えた。まさかーーここで役に立つとは。思わなかった。
「さて、どうするか……はこの力で治すか?」
「いえ、それより、箱の破壊をーー」
「待ってて」
箱の力でヘレンの怪我をした事実を塗り替える。
「でも、それじゃあ!」
「最後にまた箱を壊せばいいんだ。それが、君と僕が望んだ世界だろ?」
……しかし、箱はーー
「は、はは……その箱は、偽物だよ」
「なっ!?」
「そりゃそうだ。みすみす渡すわけないじゃないか」
それもそうだ。しかしーー
「それでも、箱であることに代わりはない。だろ?」
「ほお、どんな罪も受け入れるか」
「罪……?」
「その箱は、全ての偽善が詰まった箱。人類すべての業を背負った聖者の箱。それでもーー使うか?」
……使う。神にでも何にでもなってやる。
「いいじゃないか。それでこそ僕の見込んだ男だ」
「お前に見こまれても嬉しくない」
とはいえ、早くしないと。
「箱よーーこの世のすべての因果を退けたまえーー」
しかしーー
「え……?」
やけに外が静かだった。
まさか、あの子はこれを見ていたのか? こんな未来を見ていたのか? だとしたら……それは……死よりも辛い……
「今、君の手で人類は粛清された。魂はあるべき場所に帰ったんだよぉ!」
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
やはり、殴り足りなかった。僕は、ウリエルをひたすら斬った。四股を斬った。腹を裂いた。頭を消し飛ばした。それでもーー天使は死ななかった。
不死身。それが、天使に与えられた特性だった。
死ないのなら、殺せない。それは、誰もがわかる。
だが、直接殺せないなら――
「間接的に、存在を消すまでだ!!」
「くそっ! 撤収だっ」
退いた……流石に退き際もうまいな。
「ヘレン、戻るぞ!」
ここはもう持たない。何となくそんな気がした。とにかく急いで脱出を――
ドシャン。
岩が崩れる音。
う、嘘だろ? 出口が―ふさがれた。いや、これは能力の使用を強制してるんだ。ならば――
「心身弾!」
思い描くのは、ハンマー。すべてを打ち壊す、トールのハンマー。雷の神の、怒り。
「よし、あいた!」
『させません』
「ウリエル! もう退けよ!!」
『ならんのだ! 箱の使用者は抹殺する運命なのだから!!!!』
「そんなの――違う!!」
そうだ。自らの願いをかなえることは罪なんかじゃない。ただ――箱に関わってしまった。自分の力で願いを叶えなかった。たったそれだけだ。
「とにかく今は退いてくれ!!!」
「ちっ」
わかったようで、退いてくれた。
「まだ終わってねぇぞぉぉぉ!」
「くそっ!」
聖剣を取る資格のない僕に当然扱えるわけはない。ならーー
「心身弾!」
「はっ! 当たらねぇ!」
「何言ってんだーー当てるつもりもない!」
思いっきり笑顔でそう言ってやった。
「なっ!?」
心身弾を通して、世界線をずらす。そうすることにより、『三国さんの能力をコピーした心身弾』という事実に塗り替える。そして、ウリエルに当てると見せかけて、自分に当たるように調整する。
「ちっ!」
「三国流奥義ーー時空断切!!」
「くそっ!」
当たった。それも、大きく。
ウリエルの右半身が吹き飛んだのが見えた。まさかーーここで役に立つとは。思わなかった。
「さて、どうするか……はこの力で治すか?」
「いえ、それより、箱の破壊をーー」
「待ってて」
箱の力でヘレンの怪我をした事実を塗り替える。
「でも、それじゃあ!」
「最後にまた箱を壊せばいいんだ。それが、君と僕が望んだ世界だろ?」
……しかし、箱はーー
「は、はは……その箱は、偽物だよ」
「なっ!?」
「そりゃそうだ。みすみす渡すわけないじゃないか」
それもそうだ。しかしーー
「それでも、箱であることに代わりはない。だろ?」
「ほお、どんな罪も受け入れるか」
「罪……?」
「その箱は、全ての偽善が詰まった箱。人類すべての業を背負った聖者の箱。それでもーー使うか?」
……使う。神にでも何にでもなってやる。
「いいじゃないか。それでこそ僕の見込んだ男だ」
「お前に見こまれても嬉しくない」
とはいえ、早くしないと。
「箱よーーこの世のすべての因果を退けたまえーー」
しかしーー
「え……?」
やけに外が静かだった。
まさか、あの子はこれを見ていたのか? こんな未来を見ていたのか? だとしたら……それは……死よりも辛い……
「今、君の手で人類は粛清された。魂はあるべき場所に帰ったんだよぉ!」
「貴様ぁぁぁぁぁ!」
やはり、殴り足りなかった。僕は、ウリエルをひたすら斬った。四股を斬った。腹を裂いた。頭を消し飛ばした。それでもーー天使は死ななかった。
不死身。それが、天使に与えられた特性だった。
死ないのなら、殺せない。それは、誰もがわかる。
だが、直接殺せないなら――
「間接的に、存在を消すまでだ!!」
「くそっ! 撤収だっ」
退いた……流石に退き際もうまいな。
「ヘレン、戻るぞ!」
ここはもう持たない。何となくそんな気がした。とにかく急いで脱出を――
ドシャン。
岩が崩れる音。
う、嘘だろ? 出口が―ふさがれた。いや、これは能力の使用を強制してるんだ。ならば――
「心身弾!」
思い描くのは、ハンマー。すべてを打ち壊す、トールのハンマー。雷の神の、怒り。
「よし、あいた!」
『させません』
「ウリエル! もう退けよ!!」
『ならんのだ! 箱の使用者は抹殺する運命なのだから!!!!』
「そんなの――違う!!」
そうだ。自らの願いをかなえることは罪なんかじゃない。ただ――箱に関わってしまった。自分の力で願いを叶えなかった。たったそれだけだ。
「とにかく今は退いてくれ!!!」
「ちっ」
わかったようで、退いてくれた。
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