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引き勇

チームのボス

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「……晴いいですね?」
『ほどほどにね』
「分かってます」
「かかってきなさい」
「では……お言葉に……甘えて!!」
 激しい攻防戦。あれ? こんな仕事だっけ? ま、いっか。
いいわけがない。なんでこうなったんだっけ……
「あなた、何かやってましたね?」
「柔道をちょっとばっかね!! あんたこそ、何かやってるんじゃないかぁ!?」
「私は勇者です!!」
 腕と腕を交え、言葉も交える。なんだこれ。格闘系? お帰りください。こんなの求めてないです。やめていただいて結構です。むしろやめてください。
「隙ありいいいい!!!」
「甘いんだよおお!!」
 完全にバトルものじゃないですか。怖いです。フィジカル、マジカル、いずれもやっばい。
「格ゲー世界チャンピオンの私をなめないでください!!」
「!?」
 格ゲー世界チャンピオン!?!? いや。今そんなの関係ない。というか、ゲームの感覚で殺し合いしないでください。ゲームで強くても現実じゃそうじゃないでしょう?
「圧倒的格闘センスを見せてあげますよ!!」
「じゃあ、あたしがそいつをコテンパンにしてやんよ!!」
 なんだこれ。罵り合い? あれ? ……※ごらんの小説にバトル要素は含まれておりません。
『って! お姉ちゃん! 違うでしょ!』
「あ、そうでした……ごめんなさい。つい」
「……で、あんた等は何しに来たんだい?」
 や、やっと気づいたか。というか、何の前ふりだったんだ……
「伊東さん……あなたを更生させに来ました」
 説明が雑すぎます。もう少しわかりやすい説明をですね……
「なんでそんなことしなきゃいけないのさ?」
「あなたのせいで何人犠牲になってると思ってるんですか!!」
「知らないねぇ…? だって、それはあたしのせいじゃなくて、あいつらバカ社員の自己責任だろォ!?」
 この女、外道過ぎる。反省の余地すらない
「あなた……とことん外道ですね」
「知らないねぇ」
 外道。まさに彼女にふさわしいだろう。むしろ外道以外でたとえるなら……そうだな。クズである。同じである。
「あんたもあいつらみたいになってみるかい?」
「……お断りですね!!」
『いいぞぉ!! やっちゃえ! お姉ちゃん!』
「任せてください!」
「悪いけど、こっちにも負けれない理由があるんでねぇ!!」
 お互いに全力を出し切る戦い。その姿は、もう人間ではなかった。空中に飛び出し、殴りけり、地上についても殴りけり。そして何より、肉弾戦なのである。
『伊勢谷さん! こっちに至急、来てください!』
『え……?』
『いいから!』
 戦闘中に電話とか自殺行為ですよ! でも、仕方ない。呼ばれたからにはいくしかないな。

―――――

「う、嘘だろ……?」

「はああああああ!!!」
「オラオラオラあああああ!!」
 超 人 対 決。見たことある。有名な漫画で。黒い学ランを羽織ってるやつと金髪の吸血鬼が変な化け物従えているような光景。というかそれそのものである。
「見ちゃいけないものを見た気がする……」
『いえ? むしろ見てください』
「ええ……」
 超人バトル。絶対そうだ。それ以外ありえない。
 このバトルは、僕に何を示すのだろうか……?
「超人バトルやべえ……」
『でしょでしょ? 私はそばから見れないですが……』
「これが勇者か……」
『違います』
 おそらく、電話の向こうで彼女は真顔だろう。
何故わかるか? それは僕にもよくわからない。いわゆる、なんとなくだ。
「伊東さん……なかなかやりますね……!」
「あんたこそ……!」
 なんかが芽生えた。まあ、僕の知る事ではない。友情めっばえてどうすんだ! 構成させに来たんでしょうが!
 ところで、この謎のバトルはいつ終わるのだろうか?
早く終わってくれ。いや、終わってください。正直、突っ込みどころが多すぎるんです。
「さて、疲れました」
「休むかい?」
「そうしましょう」
 ええ!?!? 単純すぎないか!? 争いやめる理由単純すぎないか!?!?
疲れたからやめるって……勇者としてあるまじき行為なのでは……
「はっ! そんな手にはかかりません! あなたを捕まえます!!」
「ちっ!」
 よかった。美雨さんが馬鹿じゃなくてよかった。いや、馬鹿なんだけども。
とりあえず、やっと終われる……捕まえてくれた。ちゃんと。
『あ、逃げました』
「すいません。逃がしちゃいました」
 っておい! ふざけんな! てへぺろ。そんな言葉が聞こえた気がする。そして、叫ばせてほしい……逃がしたのかよ!!!

「大丈夫です。彼女は今疲れています! そこまで遠くに行けないはずです!」
 前 言 撤 回   単純! やっぱ単純! 相手も美雨さんも単純すぎんだろ。なんだよこれ、衝撃じゃなくて笑劇だよ。まぎれもない笑劇の事実だよ。
「単純じゃなきゃ勇者なんて勤まりません!」
「それを言うか……」
「?」
 そして、気づかないのか……単純って簡単そうでうらやましい。まあ、単純=純粋でいい気もしなくもない。その単純さ、分けてくれ。そんな単純な要素さえあれば、僕にだってつとまりそうだ。
「さて、おしゃべりはこの辺でやめましょう。本当に見失ってしまいます」
「そうだね……行こうか」
 走り出す。伊東を捕まえるために走る。まさに、「俺たちの戦いはこれからだ!!」というべき状態だ。まあ、確かに僕たちの戦いはこれからなのだが。
「ぶつぶつ言ってると置いて行きますよ!」
「ま、待って!!」
 とにかく、そんなことより、任務の完遂のほうが優先だ。この任務が終われば、打ち切りENDにでも、なんでもすればいい。
「終わりませんよ! 私たちの戦いは!」
「わ、わかってるよ」
 これ以上打ち切りENDフラグを立てるのやめろください。さっき自分でもそうしてもいいとは言ったけど嫌です。やめてください。

 そのころ――――

「な、なんだったんだ……あいつら……さて、ここまで逃げ切れば平気だろう」
「平気? 何がだい?」
 黒いコート。まるで、返り血でも浴びたかのような左右非対称な髪の色。そして、手に持っている拳銃。彼女は、いかにも怪しい風貌だった。そんな怪しい女の視線は、伊東に向けられていた。なぜ、そんな視線で見ているのか。
「あ、あんたいったい何者だい!?」
「ああ、あたし? あたしはね……」
 女は、拳銃の引き金をを引いた。殺意を向けるように、伊東に。そして、彼女を見て、はっきりと言った。
「勇者だ」

 ―――同時刻―――

「!? 発砲音!? どこから!?」
「こっちの方角からです!」
 その聴覚、色々すごいです。突っ込むのめんどくさいくらいにすごいです。超聴力、心眼(物理)、超力。それって勇者じゃなくて他の何かです。二次元でやってください。(二次元なのは内緒)
「早くしましょう!!」
 僕たちは、発砲音のする方へ急いだ。―――――

「!? な、なんだよこれ……」
 そこに居たのは気絶し、倒れてる伊東だった。
他に人の姿は……あった。黒いコートを着た、明らかな不審者。彼女が手に持っていたのは、拳銃だ。すぐに、察しがついた。暗殺犯という疑問も浮かんだが、それはないだろう。おそらく、僕らと同系統か何かだろう。
「なんだい? あんたら」
「! まさかお前が……」
「ああ、そこに倒れてる女? やったのは確かにあたしだ」
「!?」
「まあ、安心しなよ。殺しはしてないさ」
 こいつ……ふざけてる……! そんな拳銃を向けて、殺してないってなんだよ。向けた殺意に違いはないんだ。
「なんだい? そこに居る花沢だって同じやり方だろ?」
「同じ……?」
 嘘だ。明らかに倒れている伊東はボロボロだ。美雨さんはもっと綺麗に気絶させる……! おっと、突っ込むのはそこじゃない。
「あんたらがちんたらしすぎなのさ」
「なんだと……?」
「ちんたらしすぎ」
 ちんたらしてない……いつものやり方だ。これのどこがちんたらなんだ。その分、的確にやってるだろう……!
「まあ、とりあえず、あんたら。死んでくれ」
「え……?」
「! 伊勢谷さん! 危ない!」
 発砲音と共に目の前に現れた影。美雨さんだ。僕に向けられたはずの銃弾は、彼女の足を貫いた。
「じょ、冗談だろ……?」
「い、伊勢谷さん……ぶ、無事ですか……?」
「あ~あ~外したか~」
「こ、こいつ……!」
 同時に襲い掛かる怒りと災難。僕の頭は混乱していた。今何をやるべきか。明確に判断できていない。
「ま、別に強いほうが自分から潰れてくれたんだし、別にいいか」
「許さない……」
「ん?」
「許さない……!!」
「許さない? あんたにあたしが倒せるって?」
 僕は彼女に殴りかかった。 
 だが、無理だ。戦闘力の差は決定的だ。
「あんた、ちょろすぎ」
「つ……」
「ま、その気迫と勇気だけは認めてやるよ。あたしは帰る。じゃあね」
 勝てなかった。彼女は強かった。この敗北が、僕に何かをくれるのだろうか? 彼女は、別れ際に、「あー。そうそう。あたしも勇者だ。というか、また近いうちに会うだろうさ」と、言っていた。あれが勇者だと……?
 そんなことより、美雨さんを手当てする方が先だ。
「……晴ちゃん」
『……分かってます。もうじき、そちらにうちの協会の医療班がつくはずです』
「分かった……」
 僕は、この後自分の無力さに泣いた。彼女を救えなかった無力さ、任務を完遂できなかった無力さ。
 やはり、僕は勇者に向いてないのだろうか? それはわからない。ただ、今は泣いておくことにした……

 翌日、伊東はつかまり、任務は無事に終わった。
 だが、今回の任務、最後の最後で任務を完遂させた彼女。いったい何者なのだろうか。晴ちゃんも、「分からない」と、言っていた。
 だが、彼女はどうやら美雨さんを知っているような口ぶりだった。まさか、知り合い……? それは、彼女が目覚めてからじゃないとわからない。
「……伊勢谷さん。提案があります」
「……? 何のだい?」
 彼女の提案とはどんなものだろうか。
「彼女について、ボスが何か知っているかもしれません」
「ボス……?」
 ボスなんているのか? 初耳だ。というか、居るなら教えてくれてもよかったじゃない。なんで教えてくれなかったのだ。
「……ついて来てください」
 何故だ? ボスに合わせてくれるらしい。
 だが、彼女の顔はどこか合わせたくない。そんな雰囲気を出していた。
「いいですか? ボスは普段は優しいですが、今はお姉ちゃんの件でかなり苛立ってます。だから、余計に怒らせるようなことはしないでくださいよ?」
「了解」
 ボス……そんなキレやすい人……? いや、普段キレないなら優しい人か……? まあいい。とりあえずあってみればいい。――――
 コンコン。ドアをノックする音だ。ドアをノックしたのは晴ちゃんだ。 
 そして、部屋の方から、「入っていいぞ」と、優しくダンディな声が聞こえてくる。
「入ります!」
 晴ちゃんの足は、少しだけ。震えていた。
 怒らせるとそこまでやばいのか……? 僕は、覚悟を決め、つばを飲み込む。
 ガチャ。ドアを開けた音だ。そこに見えるのは――――
「やあ。初めましてだね? ……伊勢谷慎二君……?」
「は、初めまして!」
 圧倒的な威圧感。僕は、その威圧に負けて、緊張してしまった。
「まあ、そうガチガチしなくてもいいじゃないか。それで、用というのは?」
「は、はい……用というのは、美雨さんの件で……」
「む……」
 ボス(らしい)男が、怒りを抑えているのが、僕にもわかった。それほどに、今回の件は複雑なのだと僕は察した。
「……君たちの用というのは、恐らく。美雨君を襲った彼女の事だね?」
「はい……」
 やはり、何か知っている……?
「彼女は七瀬夢実……『元』勇者だ」
 元……? 一体どういう意味だ……?
「彼女はなぜ、今更になって……」
「……彼女は、ECO社と何か関係が……?」
「……無い。だが、あるとすれば、恐らく……」
 何か心当たりが?
「彼女は2年前、伊東を逃がしているんだ」
「伊東を……?」
 伊東を2年前に……? どういうことだ?
「当時、伊東はECO社とは別の会社の人間だった。その時に、君たちと同じように彼女を捕まえ、ブラック企業から手を引かせようとした……」
 まさか、その時の逆恨み? そんなの、あり得るのだろうか? しかし、そんな私情で行動しているのなら、彼女を止めるのも任務になるのでは?
「だが、逃がした後、彼女は理由を明かさずここを去った、恐らく、伊東を捕まえるためだろう」
「それだけのために……」
「まあ、僕たちからしたらそれだけの理由になるだろうが、それが。彼女にとっては大事な任務だったんだ」
「大事な任務……?」
 彼女にとっての大事な任務って、なんだろうか。例えば、命を奪われかけたとか?
「その時の被害者が、彼女の家族だったんだよ」
 家族が被害者になった。だが、自分は逃がした……だから彼女を捕まえるために色々して、今回みたいになった……そこまではわかる。だが、彼女はなんで美雨さんを恨んでいるんだ?
「家族を救えなかった。それが、彼女自身には、当初のパートナーだった美雨君の責任だと勝手に思い込んでしまった」
「それだけで……」
 あまりにも理不尽だった。自分の失敗した任務をパートナーのせいにする……それが彼女の当時の正しい判断だったとしても、人を殺していい理由にはならない。美雨さんは死んでいないが。
「理不尽だと思うだろう? だが、そうしないと彼女にはつらかったんだろう」
 それはわかった。だが、何故今更美雨さんを?
「今回の動機はおそらく、過去との決別だろう」
「……彼女の件は把握できました。ですが、もう一つお願いがあります」
「……なんだね?」
「僕を……鍛えてください……!!」
 僕は強くならなければいけない。これからは、彼女に守られるのではなく、彼女を守る立場に居なきゃいけない。そう考えたからだ。
「……君の意気込みはわかった。だが、駄目だ」
「ど、どうして……」
 何故だ? 理由が分からない……ダメな理由は何だ?
「彼女たちが今強いのは、確かに私が指導したからだ。だが、それ以前に彼女たちには元からそれだけの力があった。だが、君にはそれが出来ない」
「僕に……勇者としての才能がないからですか?」
「そうだ」
 返事は即答だった。なぜだ? なら、何故僕を勧誘したんだ? 勧誘する意味は何だったんだ?
「君を勧誘したのは私の命令ではない。美雨君の独断だ」
「独断って……」
「私も反対したんだがね。何故か、彼女は言っても聞かなかった」
 言っても聞かない。彼女はそういう性格だ。多分。だけど、どうして独断でも僕を選んだんだ? 彼女は。それこそ、理由がわからない。
「おっと……話が随分長くなったね。私には仕事があるので、これで話は終わりだ。後の事は後で晴君にデータでも何でも、資料を渡しておこう」
「分かり……ました……」
「悔しいかね? 自分には才能がなく、彼女には才能があるのが」
「悔しいですよ……悔しくないわけないじゃないですか。男が女に守られて悔しくない理由なんてないでしょ……!」
 悔しい。その感情だけが今の僕に行動させた。何故僕なんだ? ほかの人じゃ駄目だったのか? なんでだ……なんで僕なんだ……
「……じゃあ、私は行くよ」
「ボス、一体どういうおつもりで……?」
「今はなしたのは、全部本当の話だ。なんだね? 君も悔しかったのかい?」
「い、いえ……」
「では。今後の活躍に期待してるよ」
 そう言い放ち、男はこの場から去った。
「くそっ……くそっ……」
 今は、悔しい気持ちだけでいっぱいだった。後悔と、悔しい気持ちで、僕はどうにでもなる気がした。――
「なあ、晴ちゃん」
「なんです?」
「あのボスって人、どういう人なんだ?」
「ああ、ボスですか。彼は、木山春斗。本人はかつて日本を救ったって言ってます」
「木山……春斗……?」
 何故だろう。どこかで、どこかで聞いたことがある気がした。
 彼の過去についてはよくわからなかった。いや、今は知らないほうがいい気がした。知ってしまったら、何かが変わってしまう気がした。――――
 次の日、ECO社の社長さんから、お礼の手紙が届いたと晴ちゃんが報告してきた。その手紙には、今はお礼が出来ないが、いつか必ず礼をすると書かれていたらしい。
 任務を達成できなかった。今回僕が経験したのは、敗北だった。
 その敗北が何かに役に立つとしたら、それは何処なのだろうか。それにこたえることのできない僕には、今のままじゃ役不足。お荷物なんだろう。
 だけど、ボスに会って分かったことがある。それは、この仕事が時には一生を分ける判断をしなければいけないこと。そして――ボスは最低の人間だ。
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